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大福

『ごほうびのコンビニ大福 頬張りて 口に広がる懐かしの味』


疲れた日、「こんなに頑張ったから【ごほうび】食べなきゃ。」と言い訳するように和菓子を買う。

いつも行く和菓子屋さんがお休みだったので、近くのコンビニで大福を買う。

私は大福が大好き。味にもこだわりがある。

出来れば、塩味のあまりしない方が好き。

豆大福より豆のない大福が良い。

生クリーム入り⁉︎ それは大福ではない!

けれどコンビニにはあまり選択肢がない。

仕方なく豆大福を買う。


帰宅して、父と二人お茶を入れ、お皿に乗せると立派な大福になった。

口に入れると、甘さ控えめで、餡がしっかりとしていて、コンビニの進化に父と驚く。


幼い頃、実家の近くに和菓子屋さんがあった。同級生の家だった。

登校するとき、友達を待ちながら、お店の換気扇から出てくる小豆の香りを全身に浴びて、幸せな時を過ごしたものだ。

遊びに行く度に、おじちゃん(同級生のお父さん)が白い帽子を被り、白衣に粉をつけていて、

「敬子ちゃん、手を出して。」

と、私の手に、ぽってりとした大きな大福を一つのせてくれた。

「おじちゃん、ありがとう!」

と喜び頬張り、口の周りに白い粉をつけて食べ、おばちゃんが割烹着の裾で拭いてくれた。

そのお店は、私が就職しても変わらずにあって、3日に一度は会社の帰りに買っていた。

お金を払って買えるようになっても、おじちゃんはおまけにいつも大福を一つ入れてくれた。

おじちゃんが急死して、おばちゃんは店を畳んだ。

私の大福は、あのおじちゃんの味。

有名店の大福食べても、あの味はない。

けれど、近くのコンビニで買った大福が、その記憶を引き出してくれた。

頑張る人の味は、心に染みるものなのだろう。

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今日も皆さんが心穏やかに過ごせますよう、大福食べて願います。

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