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台湾新竹市に来て35日目の朝

おはようございます!前回の投稿から約2週間、15日も経ってしまいました。リサーチトリップやプロジェクトのために、じっくりデスクに座ってnoteを書く時間が取れませんでした。今日はようやく少しゆっくりしているので、書いてみます。

この頃は、多少暑さも和らいできたのか、台湾の暑さに体が慣れてきたのかで、比較的過ごしやすくなってきた気がします。中秋の名月も近づき、こちらではMooncakeをいただく機会が時よりあります。

さて、前回同様、この15日間をリストアップしてみます。

8月20日(火)
・オルタナティヴでクリエイティヴなプログラムを運営する認可を受けた教育機関Shininig Lifeへワークショップの相談のため訪問
・ドーナツサンド・ステーションラヂオ(金子未弥&山口正樹)に出演

8月21日(水)
・ガラス産業の歴史を探訪するためITRI(工業技術研究院)内にある日本統治下で建てられた研究所のことを伺いに行く
・六燃という日本統治下の燃料工場を見学
・近隣にある将軍村を見学
・床屋へ行く

8月22日(木)
・1年だけ日本語教育を受けた曽文岑さんからガラスや燃料産業の歴史のお話を伺う
・子ども向けワークショップのためのデザイン下書きや提案書の作成

8月23日(金)
・新竹地域リサーチトリップ(Grand View Art & Culture Foundation、竹南蛇窯)

8月24日(土)
・台南地域リサーチトリップ(Peng Yi-Hsunの運営するZit-Dim Art Space、Tu Xing Studio、 Soil Space、182artspace)

8月25日(日)
・新竹市鐵道藝術村にてアーティスト・トーク
・金子未弥クロージング・パーティー

8月26日(月)
・Spring Pool Glass (ガラス・リサイクル業者)の工場見学と体験工作
・Res Artis オンライン・ミーティング

8月27日(火)
・ジム(Bodycombat & Group Power)

8月28日(水)
・国立精華大学藝術與設計學系の蕭銘芚教授を伺い、ワークショップのためにガラスの取り扱いに関する指導を受ける

8月29日(木)
・台北リサーチトリップ(板橋435藝文特區、Guling Street Avant-Garde Theatre、Open Contemporary Art Center)

8月30日(金)
・台中リサーチトリップ(YU-HSIU MUSEUM of ART X SOYEE、Blank plan、National Taichung Theatre(NTT)、NTTArtist-in-Residence YEH Ting-hao's Reverberation of Illusions)

8月31日(土)
・阿里山ツアー
・嘉義市にて陳澄波ゆかりの場所を尋ねる

9月1日(日)
・嘉義市にて陳澄波ゆかりの場所を尋ねる
・台北にてCloud Gate劇場で、パフォーマンス見学
・ss space space見学

9月2日(月)
・内湾老街、小錦屏野渓温泉、北埔冷泉

9月3日(火)
・国立精華大学藝術與設計學系にて、ガラスを活用したワークショップ準備
・Shining Lifeにて小学6年生21名とワークショップ

ということで、上述したリストを書き起こしながら、あっという間にこの2週間が過ぎ去ってしまった印象です。毎日、出かけて、見聞を広めることができていてとても充実しています。アーティストはスタジオにこもって制作していると思われがちですが、私はもともと文化人類学とか旅が好きなので、リサーチをしながら場所に限らずに制作したり、コラボレーションの機会を得られるように心がけています。

さて、このリストを書きながら、自分なりに特筆すべきところを少しだけ思い起こしながら書いていくと、キーワードとしては、ガラス、教育、自然、となります。今回のレジデンスで自分の興味がそこにあるので、当然ですが、ガラスとしては新竹市のガラス産業の歴史やリサイクル率の高さを前回お話ししましたが、国立精華大学藝術與設計學系の蕭銘芚教授からは、熱を加えたり冷めてくる時のガラスの膨張率のお話を伺いました。とてもご親切に私の実施しようとしているワークショップの意図や手法を先回りしてご理解いただき、工具や材料など全てご用意いただきとても助かりました。短時間で子供達と一緒にできる手法として、サンドブラスをしたすりガラス上の表面に色鉛筆やカラーペンで絵を描く手法を教えてくださいました。カット、サンドブラス、研磨、仕上げなど、手際良く教えてくださり、また、ガラスの溶解接着(Glass Fusion)の素材の相性のことや手法を教えてくださり、端材でサンプルまで作らせていただけました。初対面で短時間のやり取りでしたが、お互い日本語で会話をすることができ、教育熱心な蕭銘芚教授の人柄がよく伝わってきました。

教育に関しては大学だけでなく、従来の教育とは異なるクリエイティヴでオルタナティヴな教育を提供しているShining Lifeのプログラムもとても印象的でした。台湾も日本と同じように、さまざまな理由で従来の学校へ通わないという選択肢ができているようでした。Shining Lifeの教育プログラムで画期的だと思ったものは、運営している彭瑜亮さんや陳品諠さんが心を踊らせるように話してくださった言葉を活用した子どもと事業者のコラボ・プロジェクトでした!たとえば、子どもたちのクリエイティヴな視線で提案された詩的で魅力的な名前を採用したレストランのメニュー表とか、年度毎に設定されたテーマに対して書き下ろした詩集の出版、また、無人の本屋さんの運営など、小学生のうちから実社会と繋がったプロジェクトを展開しているのです!しかも子どもたちはすでに英語も日本語もかなり話したり、理解できる子たちも多く、実社会と繋がった枠に囚われない学びが行われているようでした。見学した際も、言葉に重点を置いているとのことでしたが、自分たちで問いを設定し、その回答を視覚的にもまとめている様子でした。みんな楽しそうに過ごしているのがとても印象的で、短時間訪問しただけですが、私の方が学びの多い良き経験になりました。

そして、自然に関しては、陳澄波文化基金会の陳澄波さんのお孫さんである陳立栢さんから伺った阿里山への訪問で何か実感することができた気がします。陳澄波は多くの風景画を描いていましたが、自然や森を大切にするし背が常にあり、阿里山をとても大事に考えていたとのことでした。時代とともに国籍は変わってしまいましたが、台湾という島で生きていくための生命の源、心の拠り所。阿里山へは台中からツアーに参加しました。道中ツアーガイドさんは阿里山にまつわるお話をしてくださっていましたが、残念ながら台湾の一般的な言語でお話しされていたので、私にはわかりませんでした。ただ、実際に雨の中、少し霧が立ち込めた阿里山の檜の森に入り、ところどころで樹齢が数百年とか数千年の巨木と出会い、人間の一生をはるかに超えた樹木の存在から確かに自分の自然に対する精神性を内省する時間が多々ありました。この阿里山の地域は台湾の代表的な林業の拠点の一つで切り出された檜は明治神宮の鳥居にも使われたとのお話があります。巨木を前にして「これは切ってはいけない」という感覚が沸き起こったのですが、ここには神木という考え方もあり、切り出しなどの作業で多くの方々が犠牲になった事実もあるようで、供養等も建てられていました。樹木や森の命に満ちた場でした。陳澄波もこういった感覚を実感したり、大事に伝えていきたかったのかなと思いました。

今回の台湾滞在はアート関係の施設ではあるのですが、それに関しては別で書く機会がありますので、後日そちらを拝読いただけたら幸いです。アート関係の視察と同時に、滞在制作を通してアートプロジェクトを手がける私の興味に応じたリサーチの動向を垣間見ていただけたら幸いです。

今回はこれくらいで終わります〜!今日を含め、残り20日!!



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