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音楽ストリーミングサービスにたりないもの

 Google Play Musicのサービスがスタートしたときから、音楽ストリーミングサービスを使っている。最初に加入することで、月額が少し安くなるという優遇措置のおかげもあって、ずっと続けている。

 もっとも、最初は本当にお試し気分で始めた音楽ストリーミングサービスが、思ったより内容が充実してきて、完全にCDを買う生活とおさらばできてしまったからだ。

 ちなみに、現在の月額は780円。今から30年ほど前、学生だった頃には、バイト代をCDにつぎ込み、新譜旧譜をあわせて毎月10枚以上買っていた生活で、社会人になったばかりの頃はもう少し買っていたから、毎月780円で聴き放題は全然安いという感覚だ。

 新譜がラインナップに加わるスピードも、世の中に音楽ストリーミングサービスが普及するにつれ、早くなっている気がする。逆に、ストリーミングで提供されないアルバムは、あまり聴かなくなってしまった。近所に熱心にCDを扱っている店がなくなってしまっていることもあり、今ではCD音源は年に1枚買うか買わないかぐらいだ。

 安いターンテーブルも家にあって、レコードも何枚か持っているが、こちらも今やそれほど聞いていない。アナログ的な暖かさとやらも、大きなジャケットの美しいアートワークも、僕にはそれほど必要ないもののようだ。

 しかし、ときどき演奏しているバンドの情報が欲しくなるときがある。メンバーチェンジの激しいバンドの、この今聴いているアルバムを演奏しているのは誰なんだ。そして、突然音作りが変化したこのアルバムの、プロデューサーは誰なんだ。それは気になる。

 バンドのメンバー構成や、プロデューサーが誰かということは、CDで音源を聞いていた頃からの必須情報だ。気に入ったサウンドの作り手を知ることは、次のアルバムを探すための手がかりになる。それを知るためには、やはりジャケットや中のライナーが必要だ。

 一応、Google Play Musicでは、一部のアルバムでWikipediaなどにリンクが張られることがある。張られないこともある。ほとんどはリンクはない。そうすると、自分でバンド名やアルバム名を入力して検索。調査活動をすることになる。

 別にCDで買っていた時代から、本やネットを頼りに、誰のサウンドかということは調べてきたから同じなのだが、それでもジャケットがないことで、音楽の聞き方が、そういう作り手が誰か? という聞き方からは少し離れたスタンスになることは間違いない。

 少し前に、今の音楽ストリーミングサービスを聞く若者は、アルバム通して名盤という概念がないという話を耳にした。少なくとも、僕自身はそういうことはなさそうだ。気に入った曲は、アルバム1枚を通して聞く習慣はある。

 しかし、プロデューサー名はすっかり見なくなった。気になったときしか調べない。音楽ストリーミングサービスがもう一歩便利になるためには、やはりジャケットをデータに同梱する必要があるんじゃないか。いや、そんなことを求めているのは我々のように、ジャケット当たり前の音楽から入ったリスナーだけか。これからますますアルバムの分断、分解が進むのだろう。


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