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【完】公務員をやめて、スウェーデンまでサステナビリティを学びにいったのに、最初の授業が哲学だった話

前回【2】の復習


・還元主義のトラップ:還元主義の本質は、予測できる、世界はわけてわかる。その特性から、木を見て森をみず状態トラップにおちいることがある。


・カナビンフレームワーク:問題はを4つに類型する。カオスな問題、コンプリケイティドな問題、シンプルな問題、カオスな問題。問題によって、アプローチや取り組む姿勢を見直す良いフレーム。

全体論の本質は、世界は予測できない。わけてもわからない。


全体主義というかと思いきや、全体論らしい。


さて、ちゃんといっておきたいのが、還元主義と全体論って対立的なポジションで語られることがある。実際、生物学の世界でも、生命は機械だっていう還元主義的ポジションの人と、生命は有機的なモノだっていう全体論的ポジションをとっている人で相入れないぜっていうこともあるみたい。


本当は、お互い補完的な立ち位置にあって、問題ごとや何かを解決したいときにどちらの視点も使いながら進めていくことが大事なんじゃないかなっていうのが自分の見方。以上もふまえて、いきます!


全体性をみることの謎一覧

・全体性を語る文脈

・なんで予測できないの?わけてもわからないの?

・全体性を扱うってサステナ界との関係をもうちょっと教えて!


ブリタニカの国際第百科辞典によると「全体論」自体は造語らしい。意味はわかるけど、全体性をかたるのって難しい。部分を切り取った範囲がないために、範囲がない感じがするし、全体性ってそもそも全体でつながっているのか、っていうことを語らないといけないかも。。。むずいけど、版画で例えるなら、線をほるんじゃなくて、線以外を掘ることで輪郭が浮き彫りにするように試みてみる。


ナゾ1 全体性を語る文脈:システム思考から

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そもそも科学の世界で圧倒的つよつよポジションにいた還元主義だけでは説明できない事象ってあるよね、限界あるよねっていうのが1940年ごろ。始まりは生物学。還元主義、論理の行き詰まりを全体性、世界は繋がりあってるよね、機械じゃないよね、有機的な「システム」だよね、という視点で捉えなおす道筋が始まった。


システム思考の歴史。
まず生物学で、ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ一般システム論という論文で初めてシステムという言葉を出した。同時期、数学者ウィーナーが生み出した、生命を模したフィードバックシステムをレーダーに搭載「サイバネティクス」と呼ぶ。その文脈も応用し、MITのジェイフォレスターが「成長の限界」などにも組み込んだ、全体性を把握する(変数などを計算にいれる)複雑な計算システムを考案。この計算がめちゃくそむずかしいからシンプルにした「ループ図」を作ったピーター・センゲ。(おそらく日本に入ってきてるのはピーター・センゲ考案のもの。システム思考の歴史は後でちゃんと書きます。)還元主義の限界を「システム」として説明する人たちが出てきた。


ナゾ2 なんで予測できないの?わけてもわからないの?



全体をシステムとして捉える人たちがいうのは、1+1=2じゃない世界、例えば手元にあるIphoneを分解したら、ネジが増えてる世界観。1+1=2+変数が出てくる。変数があるからこそ、予測できない。そしてめちゃんこ複雑=コンプレックスなもの。この領域は、complexなものが範囲・対象なので、複雑系科学とよばれている。還元主義のサイエンスとの対比かわからんけども、ニューサイエンスとも呼ばれることもある。


さて、この変数がある世界観を生物学の事例で説明します。

世界はわけてもわからない!
生物学の全体性を捉える事例:ノックアウトマウスの実験



生物学においても、生物は還元主義にもとづいて機械であるっていう考え方と、生物は有機的なものであるって全体性を持つ考え方がある。自分が好きな事例として、福岡伸一さんの著書「動的平衡」の一説を紹介したい。


ノックアウトマウス実験。

マウスの脾臓の一部のDNAをとって、脾臓の機能のパーツをなくしたマウスを人工的に作り出した。マウスの脾臓は、消化酵素をうまく分泌できなくなって、栄養失調になるに違いない。

結果、、、、何事もなく、成長した。

生命とは機械ではない。そこには機械とは全く違うダイナミズがある。
生物はそれぞれのパーツが機械のように組み重なって、生命活動をしているのではない。
                   2009年 動的平衡 福岡伸一著


機械論的立場(還元主義)に立って考えると、DNAという細かいパーツが持つ機能をなくしたら、生命は機能しなくなる、と考える。


が、実際はマウスはいたって正常だった。他の細胞が脾臓の機能をカバーすることが起こったらしい。世界は細かくわけていっても、わからない事象もある。還元主義だけでは説明できないこともあるということ。(ちなみに福岡さんはどっちの立場なのかはよくわからない。本を読んでると、マウスは機能不全の個体が生まれると思っていたと書いてあったので。)

あらためていうけど、全体性を捉える世界って1+1=2にならない。1+1=2+変数。予測はできないけど、変数にパターンは見られる。


還元主義が世界は「静」と捉えていたら、全体論は「動」と捉える。


ちょっと外れるけど、
そもそも世界は繋がりあっているのか



ノックアウトマウスの実験のように小さい事象だと全体性が把握できるくらいだからいいけど、んじゃ、全体ってどこまで有機的なネットワークなんだいっていう考え方もあると思う。気候変動だって、地球規模の大きさでシステムが繋がっているって考えるし、ちょっと大きすぎない?とか本当にこことここが関係してんか?っていう視点もあると思う。
風が吹くと桶屋が儲かる世界観について、少しだけ言及したい。


結論からいうと、世界は全て繋がりあってる。(っていう説もある。)


ここらへん掘り出すと深すぎるから、もどれるかな。
例えば、量子論の世界では、アメリカ西海岸だした波動が東海岸でもに届くことがわかっていたり(デヴィトボームのダイアローグに書いてなかった?)。仏教の世界では、意識下のさらに下のほうに行くと阿頼耶識(あらやしき)という領域があって、阿頼耶識では全てが繋がっていると考えたり。ダライ・ラマが量子論と仏教の近似値にめちゃくちゃ感動したという話もある。


さらには、東大寺に行ったときに知ったのだけれど、華厳経の存在。
仏教の中でも理解がひときわ難しいらしい。ひとことで無理やりいうと世界ではじめて「世界は繋がりあっている」と体系だてて説明しているということ。なので、「システム」の領域で研究する人たちが、にわかに注目しているみたい。

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日本でも、実は中沢新一さんがレンマ学という本で、このあたりを研究していて。アマゾンの書評にもあるけど、ちょっと引用。


 哲学者山内得立が著書『ロゴスとレンマ』で提出した概念によっています。「ロゴス」は「自分の前に集められた事物を並べて整理する」ことを意味しています。その本質は時間軸にしたがう線形性にあります。それに対し、「レンマ」は「直観によって事物をまるごと把握する」という意味です。


まさに、還元主義と全体論の話なんだけど、ちょっとここらへんを掘り出したら深すぎて、、、そろそろ戻っていいですか?笑 戻ってこれなくなる。


ナゾ3 :全体性を扱うことってサステナ界との関係をもうちょっと教えて!



最後、全体性とサステナ界の関係性ね。これまでの説明で全体性を扱うってことは、複雑性をあつかう(コンプレックスな問題を扱う)たり、世界をシステムとして捉えるということはわかったと思う。その上で、コンプレックスな問題を扱うリーダーってマネジメントを扱うリーダーとは違うよねっていうのがサステナ界の考え。


コンプレックスな課題を扱うサステナビリティのリーダーシップは、

・システム的にアプローチをせい。(全体をもっとみよう。分解するな。)

・参加型のプロセスをくめい。

・イノベーション、これまでの世界線と違う世界線のアイデアでいけぃ!

・内面を磨けい

4つがサステナビリティのリーダーシップの資質だと教わった。


(内面以外の3つの資質ってU理論でいわれてることなんですけどね。)

そして、手法としては「対話」をするんだよ、と学びました。

まず世界は複雑であるっていうことは、システム的な見方で全体性を捉えることが重要。

そのためにはシステムを形づくる人たち(ステークホルダー、関係者)を課題発見のプロセスに組み込み、多様な視点で全体を掴むこと。

そしたら、これまでの世界線とは違う解決策を持つイノベーティブなアイデアが出てくるんじゃないかっていう見方。

そんで何で内面が必要になってくるかっていうと、内面を整えないと本当の課題が出てこない、言葉に出せない。
(※このへんのことも後でブログで書きます。簡単にいうと、心理的な安全を作れない、感じれないと「見えてる世界」すら表に出てこない問題。)


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なんで対話なのか。
コンプレックスな課題を俯瞰してみるためなんですよ。みんなが見てる世界を持ちよることで、全体をみる。

世界って3つに分けれる(あ、ここにも還元主義w)んです。
「知ってる」「知らない」「知らないことを知らない」


この「知らないことを知らない」領域をみんなで話すことで全体が見えてくる。全体が見えたら、適切な課題発見ができるというわけなんだな。決して議論ではないですよ。対話ですよ。
(※ここらへんの全体像をつかむことからスタートした事例をあらためて紹介します。)

全体をみようとしたときにでてくるもう一つの要素


友人の一人が面白いことをいっていて。

還元主義の対立軸が、やっぱり宗教(見えないものから見えるものを見る)なのか、コンプレックスを俯瞰する視点(今見えてないだけのものを見る)ということなのか。


気になることへのアンサーはもちろん俯瞰する視点!
なんだけれども、見えないものから見えるものを見るっていう世界観って直感だなって直感で思って笑 複雑性を扱うときって論理で捉えることができないから、こんな感じなんじゃないかっていう「勘」が必要。


実際、中沢新一さんのレンマ学でも、全体性を扱う領域での直感についての言及があるんじゃないかな(未確認です笑 あくまで想像)
さらには、大学院でも内面をみがくことの中に直感や五感を大事にするっていうことも出てきた、コンスタレーションとかもやったなぁ。
学校のプログラムでも、直感で感じたことや、違和感や、なんかモヤモヤするっていうわからない感覚のことがめちゃくちゃ大事にされていて、そのことを言葉に出すっていうことがみんなにものすごい歓迎されていた。


あらためて、「直感」が見えないものを見るときのとっかかりになるんじゃないかな。あとは人間的にも感じたことを発せる、受けとめるっていう関係性って健全。
ちなみに、みんなが気づかないフリをしてるけど、感じてるものを英語でelephant!(象!)っていうんだけど、誰かが直感的に「ぜんぜん、わからないんだけど、、、もしや、象いる?」をいいはじめないと、全体を捉える「知らないことを知らない」を知る作業にうつれないと思った。


ただ、現実世界で全体をつかむことから関われることは多くないし、むしろ部分での課題解決してほしいっていうことが多いんじゃないかなっておもう。それでうまくいくこともいくだろうし、いかないこともある。
だから、なんかうまくいかないなとか、もっと違うアプローチしてみたいって思ったらぜひ、全体論やサステナビリティのリーダーシップに基づいた世界から出発してみてもいいんじゃないかなって思う。


まとめ


・サステナビリティ、全体性、複雑性を扱う領域では、世界は予測できない、わけてもわからないっていう立ち位置をとる。


・リーダーシップでは、全体をつかむアプローチ、課題解決より全体をつかむ、課題発見。対話が大事。


実際、世界のほとんどってわからないと思うんですよね。だから、もっとわからないをホールドしていく方向もあってもいいと思うな。


ふ〜う。
これでひとまずおしまいです。ちなみにここまでの理解は、やっとできたって感じです。最初のデカルトから、この文章にするまでだいぶ時間がかかりました笑


次は、このnoteでも言及した対話や心理的安全のこと、システム思考の歴史やスウェーデンのサステナビリティ、サステナビリティの歴史なんかを書いていこうと思います。


それでは!

※次回、おまけで還元主義と全体論の世界観をまとめますね。表にします。






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