国内MBA過去問レビュー 「イノベーションのジレンマ」

今回扱う過去問は、「イノベーション」についてである。

ある産業においてイノベーションが起こる際に
存企業の競争力が温存される場合と失われる場合がある。
既存企業の競争力が失われる場合について、
例を挙げながらそのメカニズムを説明しなさい。

イノベーション

創造的なアイデアを実行に移すことで企業に新たな利益をもたらす全ての変革のこと

イノベーションの主な類型として、以下の4つが挙げられる。

①プロダクト・イノベーション
 従来存在しなかった新製品を開発するための技術革新
②プロセス・イノベーション
 既存製品の生産工程や技術を改良すること
③持続的イノベーション
 既存製品の細かな部分改良を積み重ねる技術革新
④破壊的イノベーション
 
従来とは全く異なる価値基準を市場にもたらす技術革新

技術革新の非連続性

技術の進歩はS字型のカーブを描くことが多いが、このようなイノベーション・ライフサイクルにおいて技術の交代(つまり曲線自体が置き換わること)はどのように進むのか。

後発の技術体系が成熟した既存の技術体系より高水準の性能を実現することによって取って代わるとき、それぞれのS字曲線は非連続であることが多い。

この理由としては、既存の技術体系においてマーケット・リーダー的ポジションを占める企業は、その技術に固執し、技術の老化や新技術の存在に気づかず、他の企業が開発した後発の技術に追い抜かれてしまうといったことや、イノベーションのジレンマが考えられる。

イノベーションのジレンマ

過去にイノベーションを達成して市場を席巻した企業が、やがて主要顧客からの要望に応えるために持続的イノベーションに邁進し、後発企業が起こす破壊的イノベーションに対抗できなくなる状態のこと

先発のリーダー企業は顧客に支持されている以上、それを否定するようなイノベーションを自ら起こすことはできないし、そもそも最初のうちは主要顧客の要望に応えた商品を提供した方が利益率が高くなる。このような理由で、主要顧客の要望を無視して、リスクの高い新製品の開発を推進する、というのは非合理的であると判断される場合が多い。

さて、ここでもう一度問題を見てみよう

ある産業においてイノベーションが起こる際に
存企業の競争力が温存される場合と失われる場合がある。
既存企業の競争力が失われる場合について、
例を挙げながらそのメカニズムを説明しなさい。

解答例)

イノベーションが起こる際に既存企業の競争力が失われる場合について、従来の携帯電話市場と新たに出現したスマートフォン市場を例に考えてみる。

既存の携帯電話(2つ折りケータイ)が登場した当時は、固定電話に変わる革新的な製品であり、抱える顧客も多かった。国内の携帯電話会社は主要顧客の要望に応えるため、既存の製品に対して新たな機能を生み出し続ける「持続的イノベーション」を推進した。

ある時、Apple社が「iPhone」を発表し、従来と全く異なる価値基準を提供した。言い換えれば、「破壊的イノベーション」を起こしたのである。持続的イノベーションに邁進していた国内携帯電話事業は、主要顧客の要望に応えなければならないため、新製品(スマートフォン)への切り替えがなかなか進まないといった「ジレンマ」の状態に陥った。新製品へ完全に移行するより、主要顧客と既存製品を守ることの方が最初のうちは利益率が高かったのである。

しかし、新製品が世の中を席巻した際には時すでに遅買った。結果的に圧倒的なシェアをApple社に奪われる形になった。このようにして、既存企業の端末製品開発における大部分の競争力は失われたのである。

以上のようなメカニズムで、破壊的イノベーションが既存企業の競争力を奪うことがある。

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