国内MBA過去問レビュー 「組織化理論」

今回はある国内MBAの過去問を取り上げて考えていきたい。問題は以下のとおり。

組織研究で議論されている組織化理論および
センスメイキング理論について、
下記の問いに答えなさい。

1)多義性とは何か、不確実性との違いを含めて説明せよ。

2)イナクトメントは、客観的な状況を解釈することと
  対比して語られる。この概念を具体例を挙げて説明せよ。

3)組織化理論およびセンスメイキング理論は、名詞としての
  「組織」ではなく、動詞としての「組織化」を重視すると
  される。なぜこのような理論的視座が必要となるのか、
  議論せよ。

さて、いかがでしょうか。
問題文を読んで、「何の話?!」と思われた方は、私の過去記事である
・ウェイクの組織化理論①
・ウェイクの組織化理論②
・ウェイクの組織化理論③
を一度読んでから、解いていただくことをオススメします。

1-1)多義性とは何か?

多義性とは、組織に働きかける基本的素材として挙げられる情報インプットのうちの一つであり、問題や解に対する理解や解釈がいくつか考えられる状態を指す。社会の出来事や情報は受け手によって様々な理解、解釈をされることがあるが、これは多義性を有していると言われる。

1-2)不確実性との違いは?

一方、不確実性は、情報インプットのうちの一つであり、一義的な問題に対して解が定まっていない状態を指す。

多義性に関する議論では「何が問題か?」を定めることに焦点が当てられており、不確実性に関する議論では「いかにして答えを導き出すか?」ということに注目が集まる点が異なる。

組織化は、人によって異なる「問題」に対する解釈の仕方を収斂させていくプロセスであるから、「多義性」が重視される。

2-1)イナクトメントとは何か?

イナクトメントとは、何らかの事象の変化を認識して組織の新たな環境を創り出す行為を指す。

2-2)イナクトメントの具体例

パーティーに見知らぬ女性が入ってきたとする。この場合、その女性の存在に気付くことがイナクトメントである。パーティー会場に女性が現れたという変化を認識することは、見知らぬ女性を交えたパーティー(その女性に話しかけたり、ワインを注いだりする)という新たな環境を創り出す。

客観的な状況の解釈であれば、女性がパーティー会場に足を踏み入れた時点で環境は変化していると捉えられるであろう。つまり、パーティー会場にいる人間は、環境の変化に対して受動的に反応していると言えるだろう。一方、イナクトメントにおいて重視されるのは、女性の存在に「気付くこと」・「認識によって新たな環境が創られること」である。人々の能動的なアプローチによって、新たな環境が創られるのである。

3-1)名詞的に捉える視座

名詞としての「組織」を捉える際には、組織は静態的な存在である。固定的、静態的な組織を観察、分析することはらある瞬間だけを切り取った組織を分析しようとすることであり、本質的なことを見過ごしてしまう可能性があると指摘されている。

3-2)動詞的に捉える視座

一方、組織は「組織化」というプロセスを連続的に続けている存在であるという考え方に基づけば、組織は過程、変化するものとして捉えられる。

3-3)なぜ後者が必要か?

この考え(動詞的アプローチを重視する)の下では、組織に対してある瞬間だけを切り取って捉えているのではなく、動的に組織を認識している。それによって、組織本来の姿を観察することができるため、組織化論およびセンスメイキング理論ではこのような理論的視座が求められている。


こんな感じでしょうか。
ご指摘やご質問等あれば、ぜひコメント下さい。

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