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1週間の中で持久力向上のための反復スプリントトレーニングとスピード向上のためのスプリントトレーニングを両立させるために考えること

サッカー選手にとってスプリント能力が重要であることは周知の事実ですが、スプリントスピード(速度)が速いことと連続して何度もスプリントできることは区別して考えられる必要があります。

前者は「スピード」であり、後者は「持久力」です。

とはいえサッカーの試合ではどちらのスプリント能力も相互作用的に影響するため、サッカー選手はスプリントの「スピード」と「持久力」のどちらの能力も向上させ、試合へ向けて準備することが必要です。


それぞれの能力を向上させるためのトレーニング方法は異なるものの、1週間の中で何度も高強度のスプリントトレーニングを行うことは過負荷やトレーニングの単調さによる怪我のリスクから慎重にならざるを得ません。

そのため数週間のサイクルにより、2週間は持久力向上のためのスプリントトレーニング、次の2週間はスピード向上のためのスプリントトレーニング、とする方法もありますが、特にシーズン中は週末の試合へのコンディショニングという視点からどちらのトレーニング刺激も加えたい!と考えることもあるかと思います。


そこで今回は
サッカー選手の持久力向上のためのスプリントトレーニング(反復スプリントトレーニング)とスピード向上のためのスプリントトレーニング(スピードスプリントトレーニング)を1週間の中でどのように組み込んでいくか
に関して書いていきます。



■反復スプリントトレーニング(RST)とスピードスプリントトレーニング(SST)

反復スプリントトレーニング(RST: Repeated sprint training)はサッカー選手の持久力を向上させるために有効なトレーニング方法の1つです。
2~6秒程度のスプリントを短い休息時間(運動時間の3倍ほどの時間)を挟んで反復することが特徴で、これにより反復スプリント能力(RSA: Repeated sprint ability)を向上させることを狙います。また同時に有酸素性の能力も向上させることができるという特徴もあります。

サッカーの試合の中で連続して高い強度のアクションを繰り返したり、試合終盤でも高強度アクションを繰り返したりという能力の向上を目指すトレーニングです。

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RSAにはエネルギー供給系などの要因(代謝系の要因)だけでなく、神経系の要因が関わるため、RSAが要求される連続したサッカーのアクションを繰り返すための持久力を向上させるためには、強度の低いランニング系の持久力トレーニングでは不足があります。
神経系の要因も考慮したときに、高い筋活動を要求される反復スプリントトレーニングの有効性をより理解することができます。

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スピード向上を狙ったスプリントトレーニング(ここではスピードスプリントトレーニング:SST とします)はRSTとは異なるトレーニング方法です。

スピードを向上させるためにはトレーニングの中で高いスピードを発揮することが必要です。
それにはフレッシュな状態でスプリントすることが必要であるため、SSTでは休息時間を長く設定(運動休息比1:5~10ほど)します。

サッカーの練習だけではスプリントする機会が少なすぎる、ということは珍しくなく、その場合試合への準備という視点でも、選手のスプリント能力向上という視点でもトレーニングが不足していると言えるでしょう。

SSTはそれを補完するトレーニングとして実施することができ、選手のスプリントスピード向上を目指して実施します。

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■RSTとSSTを1週間の中でどちらも行うことのデメリット

RSTとSSTを1週間でどちらも行うことで、サッカーに必要な持久力の向上とスピードの向上のどちらにも取り組むことができます。
これは選手の能力を向上させるためにも、毎週末の試合へのより理想的なコンディショニングのためにも有効な方法であると思えます。

しかし以下のデメリットが考えられるのも事実です。

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