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現場で使えるエネルギー代謝① ATP 人の体を動かすエネルギー運搬体

今回から全4回に分けてエネルギー代謝に関して記事を書いていきます。

エネルギー代謝はスポーツトレーニングを運動生理学的な視点から捉えるときに最も重要なものの一つであると同時に、実際にトレーニングを行う上で絶対に考慮しなければならないことです。


第1回
現場で使えるエネルギー代謝① ATP 人の体を動かすエネルギー運搬体

第2回
現場で使えるエネルギー代謝② ATP-CP系

第3回
現場で使えるエネルギー代謝③  解糖系

第4回
現場で使えるエネルギー代謝④ 酸化系

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ぜひエネルギー代謝の基本的な流れや特徴を現場でのトレーニングに役立てていただければと思います。



■ATPとエネルギー

ATP(アデノシン三リン酸)は高エネルギーリン酸化合物と呼ばれる分子の一つで、人の運動や生命維持活動のエネルギーの素といえます。
体の全ての細胞へエネルギーを供給できることから「共通のエネルギー運搬体」「エネルギー通貨」と呼ばれることもあるようです。

生命維持活動や運動の際には、ATPをADP(アデノシン二リン酸)Pi(リン酸)に分解することでエネルギーを得ています。

ATP以外にもエネルギー運搬体はありますが、

"ATPは細胞における唯一のエネルギー運搬体というわけではないが、最も重要なものであり、十分量のATPがなければ、ほとんどの細胞はすぐに死滅する。"

パワーズ運動生理学 P.53

とされています。

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体内に貯蔵されているATPはわずかであるため、体内に貯蔵されている分だけでは全力運動時にすぐに枯渇してしまいます。
しかしそれでは人は動けなくなってしまいますし、上記引用文のように "十分量のATPがなければ、ほとんどの細胞はすぐに死滅する" のであれば運動なんか怖くてできません。

そのためエネルギー代謝機構によって絶えずATPを産生し続けています。

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ATPの産生は食事から摂取した栄養素や酸素、体内の酵素を利用しますが、エネルギー代謝機構は3種類あり、エネルギーが必要となる活動に応じて適切なエネルギー代謝機構を利用し、またそれぞれが相互作用を持ちながらATPを産生しています。



■ATPを産生する3種のエネルギー代謝機構

以下が人体に備わる3つのエネルギー代謝機構です。

1. ATP-CP系
2. 解糖系
3. 酸化系

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これら3つはそれぞれ異なる仕組みでATPを産生し、運動の強度や時間などに合わせてそれぞれが働く割合が変わります。
1つだけでなく3つの経路でATPを産生し続けることで、急な全力スプリントも、2時間に及ぶランニングも、100kg以上のバーベルを瞬時に持ち上げることも、ベンチでコーヒーブレイクをするときにカップを持つ右手の運動も、その運動に必要な量のATPを産生することができます。

行う運動の種類によってATP産生の経路、つまりエネルギーを生み出す経路が異なるため、トレーニングではそのスポーツに必要なエネルギー供給機構に負荷をかけ機能を向上させることが必要となってきます。

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■スポーツ現場でのポイント

多くのスポーツでは激しく体を動かすため、その運動強度や時間に合わせてATPを大量に産生することが必要です。
その競技における持久力やパワー、スピードを強化したいと考えるときにはまずエネルギー供給機構を把握しトレーニングに反映させることが求められます。

また競技のスキルであっても身体能力とは切り離せないため、例えば後半40分に発揮されるサッカーのスキル、400m走のラスト50mで発揮されるスキル、先発ピッチャーが9回裏に投球する際のスキル、などこれらはエネルギー供給機構の理解が深まることでよりトレーニングによって向上させることができるかもしれません。

エネルギー供給機構の理解が全てを解決するわけではありませんが、スポーツトレーニングにおける最も重要な運送生理学の知識として活用していくことが必要だと思います。



■参考・引用



ライター

Keisuke Matsumoto

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今回の一言コメント

「ATP-CP系がわかるか?これくらい知ってて当たり前だぞ!」

筑波大学蹴球部時代の監督が部の全体ミーティングで部員全員に向かって言ったこの言葉を今でも覚えています。
競技の指導者からトレーニング指導者、選手まで、このエネルギー代謝に関しては知っていて損はなく、メリットしかないと思います!

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