夏巳 系

自由

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【小説】4人の自殺志願者

「先輩、ありましたよ。4人分の遺書」 刑事になって20年。 夏の始まりとも言えるような湿気を纏った7月の下旬、朝の6時。 剛田は、神奈川県内の山中の多美口(たみぐち)ダムにいた。 一般開放されている、いわゆるアーチ式のコンクリートダムではあるものの、年に数回放流する以外は特にイベントもないため観光客も寄り付かない。この山を登ってきたところで、山を越えるだけで観光地もないのだ。 そんなさびれたダムに、早朝にも関わらず現在はパトカーの赤い光が夥しく群れている。警察官が何やら

    • 【短編小説】夜が明けるまで

      閉められたままのカーテンの隙間から、こぼれんばかりの日の光に当てられ、火照った体が鬱陶しくて目を覚ます。 私を包む真っ白なシーツをはぎ取って、ベッドから身を起こし、カーテンを乱暴に開けた。 昨日までの雨が嘘のように空は晴れて澄み渡っていた。雲なんてひとつも浮いてやしない。あれほど止まなければいいと願ったのに、いとも簡単に消えてしまった雨。期待をしていたわけではないけれど、空に裏切られたようで、ひどくみじめな気分だ。 そんな靄のかかった頭を払拭するように窓を全開にして、外の空気

      • ユニバ行った

        今年の夏、人生初のユニバーサルスタジオジャパンに行ってきました。 略してユニジオ。 めちゃくちゃ楽しかった。 いろいろあって友人が遅れて来るとのことだったので1人で向かいました。※出発は東京駅 人生初ユニジオがまさか1人でのスタートになるとは、前日まで思ってもいなかった。 とりあえず入園して、ほんとうにまじで初めてなので、予備知識もほとんどないので、どこに何があるかわからないからひとまず散歩してみた。ユニジオ内を。 ジュラシックパークのエリアとかハリーポッターエリアとか、い

        • 【短編小説】前世の記憶

          暖冬などという言葉を作った人間は、きっと冬を知らないに違いない。 鼻先が凍る程の冷たい風を受けながら、男はトレンチコートの襟元を無意識に掴んだ。 追い討ちをかけるようにビルの隙間風が無防備な耳を掠め、男はもはや寒さに苛立ちの限界を迎えていた。 駅から大通りを抜け、ビルとビルの間の道とも言えぬ路地を進む。薄暗いその道は、50メートルも進めばまた別の大通りへと出る。 マンホールからの異臭に耐えながら半分ほどその路地を進むと、右側に鉄の扉がポツンとある。 ドアノブを回すと

        【小説】4人の自殺志願者

          夢を描く

          スズメって、鳥のスズメ、道路を時々横断するんだけど。 スズメがビュンと、歩道から反対の歩道まで横断する時。 めちゃくちゃ低空飛行なのなんでなんだろう。 もっと高く飛んでみればいいのに。 車のナンバープレートの低さで、飛ぶんだよ。 なんでなんだろう。 そんな疑問を父に問うたら、 「道路の餌を探してんだよ」と。 なるほど。 道路に時々軍手が片方だけ落ちてるの、なんでなんだろう。 両手じゃなくて、片っぽだけ落ちてる。 都市伝説だと、あの軍手を道路に落とす仕事があるとかないとか。

          推しをつくらない

          人生の大半読んでいる漫画があって。 泣けて笑えて、人生の教訓にもなるような台詞がいっぱいあって、伏線が何年もかけて回収されたり、敵だったキャラが心強い味方になってくれたり、世界一売れている。 海洋冒険ロマンの漫画。 ONE PIECEって知ってますか? 主人公の少年が海賊王を目指す話なんですけど。 実家が喫茶店なので毎週月曜日にはジャンプが手元にあったんだよな。 24巻くらいから新刊で単行本を集め出して、改めて1巻からも集めて、気づいたらもう103巻か。 書い始

          推しをつくらない

          表題

          こんにちは、あるいは初めまして。 この世で苦手なものや不得意なことはたくさんあるんだけれど、例えば幽霊の類とか、雷とか、人を嵌めるようなテレビ番組とか、生のからい玉ねぎとか、煮物に入ったくたくたの甘いにんじんとか、幽霊の類とか、鉄棒の逆上がりとか、持久走とか、記念すべき初回の○○とか。 誰も見ていないだろうから、誰も読まないだろうから、誰にも見つからないだろうから、安心して書けるかなとは思うんだけど。 SNSで気軽になんでも発信できる世の中ではあるのに、 絶景スポットの