夢を描く


スズメって、鳥のスズメ、道路を時々横断するんだけど。
スズメがビュンと、歩道から反対の歩道まで横断する時。
めちゃくちゃ低空飛行なのなんでなんだろう。
もっと高く飛んでみればいいのに。
車のナンバープレートの低さで、飛ぶんだよ。
なんでなんだろう。
そんな疑問を父に問うたら、
「道路の餌を探してんだよ」と。
なるほど。

道路に時々軍手が片方だけ落ちてるの、なんでなんだろう。
両手じゃなくて、片っぽだけ落ちてる。
都市伝説だと、あの軍手を道路に落とす仕事があるとかないとか。

靴下が片方だけ無くなるのを防ぎたい。
確かに左右合わせて洗濯したはずなのに、気がつくと絵柄が揃わない。
この解決策として、全て同じ無地靴下を購入することを、生涯の目標とする。

生涯付き合うアレルギーとして、花粉症がある。
薬のおかげで年々酷さは緩和されつつあるが、ティッシュは手放せない。
全ての部屋にボックスティッシュ、車内にも運転席近くと後部座席に置いておく。
開けたばかりの箱ティッシュの1枚目をもう少し取りやすく改良してもらえる技術はまだかな。
なんてぼやいたら、
「箱を開けた時に何度かトントンとするとティッシュが少し下に降りるらしくて、1枚目が取りやすくなるよ」と父が教えてくれた。
なるほど。

ところで、むかし、子供の頃、命には形があると思っていた。
人の身体の中に、ひとりひとつ持っていると思っていた。
魂も、目に見えるものだと思っていた。
身体を失っても、命や魂が消えなければ生き続けられると思っていた。

むかし、子供だった頃、テレビの画面を割ればテレビの世界に入れると思っていた。
ブラウン管の画面の向こうにはテレビの世界があると信じていた。
だから小さい頃の夢は、いつか大人になって自分のお金でテレビを買えたら、そのテレビを割ってドリフの楽しい世界に行くことだった。
液晶テレビが実家に設置された時、「テレビの世界」が本当はどこにあるのかを知った。

懐中時計は海中時計だと思っていたし、「きよしこのよる」の”きよしこ”は誰か一晩中考えたこともあるし、空と海はどこかで繋がっていると思っていたし、バイエルとブルグミュラーは作曲家ではなく楽譜のタイトルだと勘違いしていたし、好きな食べ物はオムライスだった。

夏休みの学校のプール(自主制)は皆勤賞で通って、朝顔を育てて、宿題は最後の追い込み派で夏休み最終日前日に読書感想文を書き上げて、最終日に人権と交通安全のポスターをそれぞれ描いた。

やっつけで描いたポスターは選ばれることはなく、学校の授業内でゆっくり丁寧に描いた絵は度々表彰された。ずにのってた。調子にのってた。絵を描くことは好きだった。絵の具はいつも青色と白色が先に無くなった。思い返せば空や海を描くことが好きだった。

わたしは、わたしのことを決めることが苦手だった。
空の色は薄紫だったけど、隣にいた秀才が「空って透き通っているんだね」と言えば空は透明だった。
誰かを否定するわけではない。人の見る景色は十人十色で、50億人いれば50億色の空の色がある。そんなものは、何億光年も前から言われてる。
だからわたしは、わたしの色を決める。
「空の絵を描いて」と言われたとき、天才は緑色や黄色を混ぜるのかもしれない。
それを横目で見て、やっぱり天才は違うな、と自分の平凡さに落胆することもある。
だけど、「空=青」ではないと、わたしたちは歳を重ねる度に知っていく。
誰かに教えられるわけでもなく、天才画家の絵を見たからというわけでもなく、ただ日々の中で、空の色は灰色だったり夕焼けに染まったり星を映したりすることを、わたしたちは知っていく。
生きていく中で知っていく。

いいな、と思った洋服を、自分1人では決められない。2000円のTシャツを買うことに対して、誰かの同意が欲しい。
わたしは、わたしのことを決めるのが苦手だ。
自分を客観的に見られないから。
わたしは青とか緑とか紫が好きだけど、周りがピンクとか黄色、オレンジがいいよといえば、そちらのTシャツを選ぶ。
そして、そのTシャツは気づいたらヨレヨレになっている。洗濯しすぎてクタクタになる。襟が伸びる。
お気に入りの一枚として、なかなか捨てられずにいる。

わたしは、眠ることが好きではない。
休息として機能しているだけが睡眠ならよかったなと、大人になってから気付く。
うなされる夢は数えきれないほどあって、けれどもちろんそれはわたしだけでない。
周りのひとたちだって嫌な夢で良くない寝汗をかいているし、あまりよく寝られなかったという人もたくさんいる。
夢は毎日みる。
そしてそれを、起きてからしばらく経っても覚えている。
なんだか、寝ている間は別の世界に行っているみたいで、とても怖い。
怖くて寝言の録音もしたくない。
「たすけて…」とか入ってたら一生眠れない。
「コレオイシイ...」とかなら嬉しいけど。
そこで私は、見た夢をスケッチブックに描いてみている。試しに。やめたほうがよければやめる。

ちなみに最近で楽しかった夢は、すごくタイプの人にお揃いのアクセサリーを買ってもらったことです。


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