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推しをつくらない

人生の大半読んでいる漫画があって。

泣けて笑えて、人生の教訓にもなるような台詞がいっぱいあって、伏線が何年もかけて回収されたり、敵だったキャラが心強い味方になってくれたり、世界一売れている。

海洋冒険ロマンの漫画。

ONE PIECEって知ってますか?

主人公の少年が海賊王を目指す話なんですけど。

実家が喫茶店なので毎週月曜日にはジャンプが手元にあったんだよな。

24巻くらいから新刊で単行本を集め出して、改めて1巻からも集めて、気づいたらもう103巻か。

書い始めた当初、電子書籍なんてまだなかった時代だから、いまだにほぼ意地で紙で買い続けてるんだけど。

今更電子書籍には移れないなと、ONE PIECEだけはずっと紙で集めて、寝室にONE PIECEだけ入れた本棚がある。

もうそろそろ入りきらないよ。

実家が喫茶店なのでたくさんの漫画が置いてあるんだけど、ONE PIECEはなかったな。

自分の父親が短大卒業後にオープンした店なので、数十年以上前の漫画がたくさん置いてあった。貰い物だったり、父親がハマった漫画が、店の壁やら空いているスペースにみっちり所狭しと置かれてたな。

何がきっかけだったかはもう全然覚えていないんだけど、とりあえずONE PIECEはジャンプで毎週欠かさず読んで、単行本も買って、SBSも全部読んで、ウソップギャラリー海賊団はウソップのコメントまで隅々読んで、読者の考察とかインターネットで調べてみたりして、純粋に「ものがたり」としてのONE PIECEを楽しんでた。

あと毎話のタイトル好き。

〝東一番の悪〟

〝いくつかの正義〟

「この時代の名を〝白ひげ〟と呼ぶ」

〝弟よ〟

〝ねぇマザー〟

〝麦わらのルフィ〟

印象的なタイトルって、ずっと覚えてる。

ONE PIECEってジャンプで毎話必ず表紙があるんだけど、だから余計に印象に残りやすいのかな。他作品だとそのまま漫画がスタートして、1ページ目の空いているスペースに作品名とサブタイトル入っていることが多い気がする。決まりでもあるのかな。


いや、ONE PIECE以外にも好きな漫画はある。

たくさんある。kindleにいっぱい入ってる。

ただ、ほんの少しだけ自分に物心がついて、ONE PIECEがめちゃくちゃ熱い展開になった時代があった。

ジャンプで読んでて、あの衝撃以上の衝撃はなかった瞬間。

エースって、ロジャーの息子なんだって。

大体、少年漫画のセオリーとして、偉大な故人って主人公の身内が多いよね。

実はラスボスが父親でした、とか。祖父は伝説のヒーローでした、とか。


エースはルフィの兄ではあるけれど、義兄だからな。

そんなエースの出生の秘密、みんななんとなく推測してたのかな。

自分はもうONE PIECE史上一番の衝撃でしたけど。


どんな漫画を読んできても「このキャラが一番好きだな」と思ったことはなかったのに、アラバスタでエースが出てきた時は「ルフィにお兄ちゃんいたんだ・・・似てねえな」としか思わなかったのに、「兄弟なのに名前がDしか一緒じゃない。苗字が違う。複雑なご家庭なんだな」としか考えてなかったのに。

黒ひげとのバナロ島での決闘で言った「力に屈したら男に生まれた意味がねぇだろう」って言葉が、すごいささったんだよな。

エースの生き様を表してる気がして。

この決闘ってようやくエースの実力が披露された場面でもある。

で、終始冷静なんだよな。黒ひげがごちゃごちゃやかましいから余計にそう思ったのかな。

そりゃ1人で偉大なる航路を逆走するだけの力はあるよなと。

アラバスタはちょっと技を披露して終わりだったので。

ルフィの兄ちゃんです。自然系悪魔の実なので強いです。ちょっと常識あります。っていう、まあエースの紹介的な部分だったのかな。

まずそもそも扉絵連載がこんな大ごとになるなんて思わないじゃないですか。エースの黒ひげ大捜査線。本編に絡んでくるなんて思わないじゃないですか。

当時改めて読み返したんですよね。どんな話だったかと。

ミルク売りの少女への恩返しに海軍に侵入して苦いコーヒー飲んで白ひげの悪口に腹を立てて極秘情報ゲットしてついでに海軍助けて、「海賊の名のもとに」?好きだわそんなもん。かっこいいだろ。

「俺は白ひげを王にする」っていう時の、覚悟を決めたような表情も、ずっと印象に残ってるんだよな。

エースの、白ひげを世界一にしたいっていう思いは、白ひげとライバルだった父親であるロジャーへの当てつけでも復讐心でもなく、ただただ自分の親父を海賊王にしたいっていう家族愛というか仲間愛だったのかなと。それこそ麦わらの一味が「ルフィは海賊王になる男だ」って信じているのと同じに。

え、こいつめちゃくちゃかっこいいじゃん、強いし。

って思ってたら公開処刑って。

それこそエースは初登場時からずっと強そうで、そりゃあ主人公が強ければその兄ももちろん強いだろって補正かかるものはあるだろうが、兄はルフィにとって目指す指針の一つでもあっただろうし、世界最強の男”白ひげ”の二番隊隊長という確かな実力もあったわけだけど。

赤犬に身体を貫かれて瀕死の状態のエースが「愛してくれてありがとう」ってルフィにもたれかかって泣いた時にはもうジャンプが自分の涙まみれだったな。


ONE PIECEの世界って、死人は絶対に出なかったんだよね。

だから信じてた。

ビブルカードが消滅した時も、タイトルで〝ポートガス・D・エース死す〟の文字を見た時も、白ひげとエースの墓が建った時も、「いや、彼の本名はゴール・D・エースなんで。死んでないんで」と思ってた。周りにもそう言ってた。

ドレスローザでメラメラの実が出てきた瞬間に、「え?死んじゃったの・・・?」って実感が湧いた。

そんで、泣いた。

今でも虚無感が付きまとう。

多分、彼はONE PIECEの中でというより、自分の人生の中での推しだったんだろうな。

サボが生きていたことが分かった時も、ワノ国で出会ったお玉や、鬼ヶ島でヤマトが出てきた時も、エースの意志は至るところにあって、幾度となく誰かに影響を与えていて、その度にめちゃくちゃつらい気持ちになるんだよな。嬉しい気持ちもあるけど、やっぱりすぐその後に「でももういないんだよな〜」って思う。ご飯もあまり喉を通らないし、ビールも冷えてないと美味しくない。


ハマっている漫画を伝えると、必ず聞かれる。

「どのキャラが一番好きなの?」

そういうベクトルで漫画読んでねえんだわ。


ハマった漫画がONE PIECEではなく、実家の喫茶店に所狭しと並んでいたゴルゴ13や美味しんぼとかだったら、また自分の価値観や推しも変わっていたのだろうか。ゴルゴが推しになってたかな。

実家の喫茶店にジャンプが置いていなければ、彼に出会うことはなかったのだろうか。


そんなONE PIECEもついに最終章。

魅力的なキャラクターは数知れず。

けれど推しをつくらない。

後にも先にも、つくらない。

すごく寂しい気持ちがずっとついてくるし、冷えていないビールは美味しくないから。

だから推しをつくらない。


けど、とりあえずみんなできたらジャンプでONE PIECE読んで。

少年ジャンプ+ってアプリで週刊少年ジャンプが定期購読できるので。

バックナンバーも買えるよ。

私はこれで鬼滅の刃の単行本既刊とジャンプ最新話の間を埋めた。

ちなみにもちろん鬼滅の刃にも推しはいない。あの漫画こそ推しつくったら心もたないだろ。


ちょっとONE PIECE興味あるなあって思うならそれこそアラバスタ編まで読み進めてみて。13巻くらいでアラバスタ導入編だから。起承転結でいうところの「起」の部分。ルフィとゾロが大喧嘩したり、ナミが高熱で倒れたり、ルフィが真面目に他人に頭を下げるシーンなど、印象的な場面も多い。そのあたりでも面白くないなと思ったら、海賊に向いてないだけなので仕方ないです。好みってあるから。

youtubeでよくある「一味の生い立ちざっくりまとめました」「10分でわかるアラバスタ編」みたいなものをみて「ONE PIECE読んだ〜めちゃ感動」とか言っている人は放っておいて大丈夫。世界地図の国名を読み上げて「世界一周完了〜」って言っている人と同じなので。

アニメ派も単行本派もネットにある意味わからん拾い絵をのせた違法サイトで読んでいる輩も、ジャンプで読んだほうがいい。引き続きアニメもみて、単行本も買って、ジャンプも読んで。違法サイトは滅びてくれ。

こんな世界一売れている漫画の最終回、ネタバレはたぶん避けて通れない。

ONE PIECEの正体をTwitterで知るなんて、いやだな。

電車の中で「ONE PIECEって実はさ!」って聞くのも、いやだな。

リアルタイムで、ジャンプで、ONE PIECEの正体知りたいな。


みんなジャンプ読もう。






















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