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【小説】鏡越しの君

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小説「鏡越しの君」をまとめています。
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2024年9月の記事一覧

鏡越しの君 #6 ダブルパラレル(完結)

まるで、妻とお義母さんの生活を支えているATMみたいだ。もやもやとした気持ちを抱えたまま、なんとなく妻との距離が離れていった。

家に届いた請求書を見ると、またこんなに出費が増えてる。妻は休日も友達と遊びに出掛けて殆ど家にいない。
貯金もどんどんと減っていき、弁当は作ってくれなくなり、会話が減った。
お小遣いは増えず、弁当はコンビニで出来るだけ節約する。

最近、夜遅く帰ってくるようになったり、触

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鏡越しの君 #5 魔が差す

「これ、落としましたよ」
顔を上げると、差し出されたボールペンを受け取った。
「ありがとう」
後輩の山本さんだ。
薄化粧に髪の毛はいつもボブの黒というなんの変哲もない彼女。
特別、話も上手くなく同期の友人も多くないため、いつも一人でいる。
コツコツと仕事をしているところしか評価が上がらない。
今まで意識すらしたことがない。
正直、どっちかと言うと昔から目立つタイプでそれなりにモテてきた俺は、山本さ

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鏡越しの君#4 バタフライエフェクト

スマホの目覚まし時計が鳴る。スマホの画面は五月十六日になっていた。
時間は不可逆的だ。

下に降りると、見慣れたエプロン姿が振り向いた。
「おはよう。今日はちゃんと起きてきて珍しいわね。今日は雹かしら」
「母さん。良かった」

じんと鼻の奥が痛くなる。
ほんの数日会っていないだけのはずなのに、懐かしさを感じる。
慌てて欠伸が出た素振りを見せる。

俺が犯してしまった罪の申し訳なさと情けなさ、一瞬で

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