森川圭介

小説を書くことが好きです。

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最近の記事

鏡越しの君 #2

次の日の朝、まるでいつも通りかのように起きて電車に乗り、会社についた。 身体は覚えていて悩むことはなく順調に会社に着いた。 いつもこんな満員電車に乗っているのかと我ながら感心する。 狐につままれた気分で恐る恐る社員証をかざすと、扉が開いた。 「よっ、田渕」 肩を掴まれて振り返ると、男の俺から控えめに言っても爽やかで格好いい男がいた。 「おはよう。矢本」 するりと名前が出てくる。 この奇妙な感じは呼び慣れた名前のようで身体に染み付いていた。 「どこまでいった」 昨日の仲

    • 地面師たち(Netflix)について語りたい

      近頃、話題になっている「地面師たち」について語らせてほしい。 鑑賞し終えて誰かに話したくて仕方なくなったのだ。 すでに各所で話は出ていると思うが、あくまで評論家でもない素人の一意見であり、解釈違いのところもあるかもしれないが温かく読んでもらえるとありがたい。 そしてこの記事を読んで、地面師たちの魅力が伝わり興味を持ってもらえれば嬉しい。 (決してNetflixの回し者ではなく、これを観るために一ヶ月だけ入会した) 【あらすじ】 ハリソン山中率いる不動産の詐欺集団、地面

      • 鏡越しの君 #1

        #1ルビー・サファイア 鬱々とした曇り空を見上げた。ため息が吸い込まれていく。学生を横目にトレーを席に運ぶ。 この辺りではここにしかないってのもあるが、ここのファーストフード店はいつも賑わっている。 ハンバーガーを口に運ぶと、何も考えていなかった学生時代を思い出す。 この春、就活に失敗した。お祈りメールを何通もみた。◯人と聞いて何を思い浮かべるだろう。 俺は凡人だ。どこまで行っても凡人にしかなれない。秀でた才能もない。 うちは母子家庭で親が五歳の時に離婚した。

      鏡越しの君 #2