鏡越しの君 #5 魔が差す
「これ、落としましたよ」
顔を上げると、差し出されたボールペンを受け取った。
「ありがとう」
後輩の山本さんだ。
薄化粧に髪の毛はいつもボブの黒というなんの変哲もない彼女。
特別、話も上手くなく同期の友人も多くないため、いつも一人でいる。
コツコツと仕事をしているところしか評価が上がらない。
今まで意識すらしたことがない。
正直、どっちかと言うと昔から目立つタイプでそれなりにモテてきた俺は、山本さんみたいなタイプは殆ど、接触したことはなく苦手としていた。
それから席に戻ると