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コア製品をサービスで包み込む「ホールプロダクト」で市場トップに

製品の実際の機能と、顧客が期待する機能の間にはギャップ(差)が生じます。

このギャップ(差)を埋めるための製品が、ホールプロダクト(完全な製品)です。

ターゲット市場にホールプロダクトを供給して、他社の追随を許さない独占状態を確立するためのホールプロダクト・マーケティングを考えます。

競争力を高めるポジショニング

前回の記事では「顧客(Customer)・自社(Company)・競合(Competitor)」の3Cによる競争力を高めるポジショニングを考えました。


図1.顧客・自社製品・競合製品

競合製品との競争と差別化は、顧客が自社製品を買いやすくするために不可欠なポジショニング要素です。

競合製品には次の2種類があります。(参考文献1)

  1. 代替(したい)製品

  2. 対抗製品

前回の記事では、アイフォンの市場開拓でのポジショニングを次のように考えました。

  • 自社製品:アイフォン

    • ターゲット顧客

      • 既存の携帯電話/サービスに対して不満を持っている人々

    • ターゲット顧客の課題

      • 音楽を外に持ち歩きたいが、携帯電話と音楽プレーヤーの2台持ちは嫌

  • 代替(したい)製品:ガラケー(携帯電話)

  • 対抗製品:アンドロイド端末

※キャズム理論(参考文献1)の方法を参考にしたものです。実際のアップル社との関係はありません。

アイフォンは、代替製品(ガラケー)に対する新技術「画面のタッチ操作で音楽も聴ける」をアピールすることで、代替製品の持つ市場を獲得していきました。

では、同様の新技術を持つ対抗製品(アンドロイド端末)には、どのようにして対抗したでしょうか?

そこでは、ホールプロダクト・マーケティングが行われました。

「ホールプロダクト・マーケティング」とは「ターゲット市場ホールプロダクトを供給して、他社の追随を許さない独占状態を確立する」ための活動・仕組みのことです。(参考文献2)

ホールプロダクトとは

ホールプロダクトとは「完全な製品」といった意味になります。

製品の実際の機能と、顧客が期待する機能の間にはギャップ(差)が生じます。

このギャップ(差)を埋めるために考えられたものが、ホールプロダクトです。

セオドア・レビット氏は、ホールプロダクトを次のようなモデルで表しています。(参考文献2)

図2.ホールプロダクト・モデル

ホールプロダクト・モデルを分解すると、次のようになります。

図3.ホールプロダクト・モデルの分解

「①コアプロダクト→②期待プロダクト→③拡張プロダクト→④理想プロダクト」の順にレベルが上がっていきます。

それぞれのプロダクト(製品)は、次のような意味になります。(参考文献2)

① コアプロダクト

  • 実際に販売される製品

② 期待プロダクト

  • 顧客がコアプロダクトを購入する時に、「こうであるはず」と期待する製品・サービス

  • 購入目的を満足させるために最低限そろっているべきもの

  • 「①コアプロダクト」「補完製品・補助サービス」

③ 拡張プロダクト

  • 「コアプロダクトの機能」を、さらに拡張した機能を提供できるもの

  • 購入目的を最大限に満たすもの

  • 「②期待プロダクト」「補完製品・補助サービス」

④ 理想プロダクト

  • 顧客に提供できる理論的上限の機能を提供できるもの

  • 「③拡張プロダクト」「補完製品・補助サービス」

ホールプロダクトの例

上記のホールプロダクト・モデルを使って、アイフォンでのホールプロダクトを考えてみましょう。

図2.ホールプロダクト・モデル

① コアプロダクト

  • アイフォン(端末本体)

② 期待プロダクト

スマートフォンの購入目的(電話・インターネットなど)を満足させるためにそろっているべきもの

  • 携帯回線

  • Wi-Fi接続

③ 拡張プロダクト

さらに拡張した機能を提供できるもの

  • カメラ機能

  • プリインストールアプリ

    • ブラウザ、メール、カレンダー、住所録など

④ 理想プロダクト

「③拡張プロダクト」+サービス

  • アプリのダウンロードサービス

  • コンテンツ(音楽、動画など)のダウンロードサービス

※上記内容は、キャズム理論(参考文献1)の方法を参考に作成したものです。実際のアップル社との関係はありません。

ホールプロダクト・マーケティング

上記のようなホールプロダクトを使って行われたホールプロダクト・マーケティングを考えてみましょう。

「既存の携帯電話/サービスに対して不満を持っている人々」というターゲット市場に、上記のホールプロダクトを供給しました。

「③拡張プロダクト」で拡張された機能(カメラ機能、アプリ機能)により、顧客の購入目的を最大限に満たすことができました。

さらに「④理想プロダクト」でのサービス(アプリのダウンロードサービス・コンテンツのダウンロードサービス)により、顧客の期待を越える満足を与えることができました。

このような「ホールプロダクト・マーケティング」により、他社の追随を許さない独占状態が確立されたといえます。

※上記内容は、キャズム理論(参考文献1)の方法を参考に作成したものです。実際のアップル社との関係はありません。

競争と差別化

その後、対抗製品であるアンドロイド端末でも、同様のホールプロダクト・マーケティングが行われてきました。

競争は激化し、両方の端末の機能はますます向上しています。

前回の記事でも述べたように、「アイフォン vs アンドロイド端末」の競争に対して、現在での顧客の反応は次のようになっていると思います。

  • デザイン重視の顧客は

    • アンドロイド端末と比較して → アイフォンを選ぶ

  • コスパ(コストパフォーマンス、費用対効果)を重視の顧客は

    • アイフォンと比較して → アンドロイド端末を選ぶ

しかし、このような状況にも変化が生じる可能性はあります。

でも、顧客が商品を買いやすくするためには「競争と差別化」が必要という点は変わりません。

シリーズ記事

  • 前回の記事

参考文献

  1. ジェフリー・ムーア『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第6章 戦線の見定め」

  2. ジェフリー・ムーア『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第5章 部隊の集結」

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