涙で出来た思いがこの呼吸を繋ぐ力になる

羽海野チカ先生の作品が好きです。中学生の頃『ハチミツとクローバー』で大学生活の切なさと甘さに憧れながら悶絶し、BUMP OF CHICKENとのコラボで『3月のライオン』と出逢いました。


人生で初めて友達と子供だけで観に行った映画は実写版ハチクロ。テーマソングだったスピッツの『魔法のコトバ』と嵐の『アオゾラペダル』はギターで弾き語りも練習しました。『3月のライオン』コラボカフェでは再現メニューに、月島のもんじゃのお店では羽海野先生やBUMPのサインに、『羽海野チカの世界展〜ハチミツとライオンと〜』では貴重な展示に、心躍らせた想い出。キャラクターデザイン原案を務められた『東のエデン』も何度も見返したものでした。


ある深夜、先生の苦しそうな呟きがありました。

先生が嫌われているだなんて一度も思ったことがなく、批判されているイメージだって微塵も無かったので、ただただ驚いてしまいました。想像し得ない苦労があったのだろうかと推察すると同時に、苦しんだからこそ心を震わせる作品たちが生まれたのだと理解し、先生の生き辛さをもって私たちは呼吸をしやすくしてもらっていたのかと切ない気持ちになりました。

夜中の衝動的な返信が1週間以上経った今も度々いいねされていて、通知欄に上がってくる度に自分もまた意識させられています。さながら、ひなちゃんに過去の自分を救われた零ちゃんのようで。

好きな人に毎日好きだと伝えることはとても難しくて、想っていたとしても口に出さないことが多々あります。一方で、敵意や悪意を対面以外でもぶつけやすくなってしまった世の中で、時にそれは言葉以上の重みで迫ってくるのです。平たい文字の羅列に沢山の記憶を背負わされて。きっと羽海野先生の苦しさは、そういう所だけではないのだろうけど。

それが「だから好きって伝え続けよう」となるのではなく(受け止める側を慮りたいと自戒を込めて)、ただ、言わずして好意を届ける為に何が出来るのか、その術を模索しています。きっと身近なひとの一言には敵わないし、「楽しみにしています」がプレッシャーになるのではと不安にもなりながら。

解散や閉店の報を受け「もっと愛していたら」と悔やんだ経験を思い返しています。失くして初めて大切さに気づくのはつらいから、大切だと思えている存在を精一杯充分に大切にしたいと願っています。


BUMP OF CHICKENが『3月のライオン』の為に書き下ろした楽曲『ファイター』。主人公や棋士の面々だけではなく、友人知人や家族もそれぞれのフィールドで闘っている戦士たち。漫画を飛び出し、羽海野先生と忽那医師とのやりとりにも闘志を感じる日々。我々もまたこの厳しい闘いを何とか生き抜こうとするファイターなのかもしれません。


羽海野チカ先生と先生を取り巻く方々、ファンの皆様へも、愛を込めて。涙で出来た思いに呼吸を繋げてもらっていることへ感謝を。

"ここにいるためだけに
 命の全部が叫んでいる
 涙で出来た思いが
 この呼吸を繋ぐ力になる
 いくつもなくなったあとに
 強く残った ひとつ残った"
(ファイター - BUMP OF CHICKEN)



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