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八重咲きのドクダミとの再会

いつものように
夕食のため
商店街へ買い物に出かけた。

いつもの道を曲がり
並ぶ店先の様子など見ながら
この道が気に入っているな
と見渡しゆっくりと
歩いて行くと
ふと
八重咲きのドクダミを
見つけた。


とても久しぶりに再会した。


雨上がりに
八重咲きのドクダミたちは
活き活きとしていた。

何と美しいのだろう。



この花を始めて目にしたのは
井の頭線駒場東大前にある
東京大学駒場構内の敷地

ここには小さな森に囲まれた
フレンチレストラン
ルヴェ ソン ヴェール駒場
があって
私はそこで友人と昼食をする
約束があり
向かっていた時である。

八重咲きのドクダミを見つけた。

“旧制一高”のアール・デコ朝の同窓会館を改装した
オレンジ色のルヴェ ソン ヴェール駒場は
まるで
小鳥の秘密の社交場みたいで
賑々しく、華やいでいた。

ここでは、フランス料理の
手法に則った定番のビストロ料理、地方料理を気軽に楽しめる。

久しぶりに八重咲きのドクダミをじっと見つめた私を
彼らは、いや、彼女たちだろうか…。

想い出へと私を誘った。


あのレストラン
ルヴェ ソン ヴェール駒場
から、私の中の見知らぬ私が
立ち現れて
創り話を始めたのだ。


私は、その女(ひと)が現れたり、消えたりするのを感じながら東京 バリ島 大阪 を行きつ戻りつ、過去や未来の時空間に記憶と妄想を重ねて旅をする人であった。

今は、そのちょっと忌まわしく想われた過去や不穏な未来が
薄らぎ、色あせている。
消えかかっている。
これは良い兆しなのだろうか…。
これは新しい兆しなのだろう…



意識の想が重なり合う階段を
私は丁寧に上がって来たように思う。



あの女(ひと)の存在は、私の鏡であったのか?
私の一部なのか?
私は、八重咲きのドクダミの
中に入るように、その感触を
見つめていた。



創り話は湧き水のように
生み出されている。

それを書き留めなければ
物語はただ流れていく。

そんなことを、この幾重にもなっている偽りの花びらから
指先が聴いた。

雨上がりの夕方
買い物に行く道すがらのこと
だった。


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