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病院広報記:職員の著作権意識は皆無と思え!①

少なくとも広報担当者にとって著作権や肖像権を意識しながら広報媒体を制作することは常識だと思いますが、他の職員にも同じような意識があると考えるのは非常に危険です。

広報媒体の制作はすべて広報が担っている場合であれば良いのですが、各診療科や看護部などでも独自に何か制作している場合は要注意です。

今回は当院での実例を紹介しようと思います。

イラストや写真はネットで拾ったものを平気で使う

私が現在の病院に入職した頃は広報を専従で行う職員は1人もいませんでした。また、広報を担当していた職員も何か特別な知識があったわけではなく、単に他の業務の片手間で行っているに過ぎませんでした。

当院の場合、30以上の診療科と20以上の病棟を抱える大病院にもかかわらず広報がそのような有様だったため、広報媒体の制作は各診療科や看護部が独自に行なっている状況でした。

広報がそれらの広報媒体制作を一手に引き受けることは人手が足りず不可能だったのですが、現状を把握しておく必要があると考え各診療科と看護部に使用中の広報媒体をすべて提出してもらうことにしました。

その結果は悲惨の一言。

他院のWebサイトからコピペしたであろう写真やイラストを出典も書かずに使っているのはかわいい方で、中には有料素材サイトの透かし入りサンプル画像をそのままコピペしたり、芸能人の写真を使っているケースもありました。

有料素材や芸能人写真の無断使用は複数の病棟で見つかったため、すぐに広報担当の副看護部長に連絡して使用停止を依頼し、代替素材をこちらで用意して差し替えてもらいました。

その他のコピペに関しては、引用の範囲で収まるものは出典を明記するよう依頼し、引用では収まらず主なコンテンツとなってしまっているものは差替えを依頼しました。

このように、特に医療従事者はこちらの想像以上に著作権や肖像権を意識していないため、その前提で物事を考えておく必要があります。

有料素材の無断使用が相手方に発覚した例

次は有料素材の無断使用が相手方に発覚して使用料を請求された事例を紹介します。そもそも先述の調査を診療科と看護部に行ったのは、この例があったからです。

ある診療科が患者向けに作成した手作り冊子の表紙に、あるイラストを使用していました。後にこれは有料素材サイトのイラストを無断使用していたと判明したのですが、この表紙の画像をWebサイトの当該診療科ページに掲載していたことが発覚するきっかけとなりました。

私はWebサイトの管理も入職時に任されるようになりましたが、広報専従職員は私1人で、当院Webサイトは800ページを超える規模であるため、すべてのページの細かい部分にまで目が行き届かず、そのような画像が掲載されていることに気づいていませんでした。

ある日突然、病院長宛に一通の封書が届き、事態が発覚しました。

ただちに当該診療科に事情聴取したところ、その科の広報担当者が冊子を制作する際にネットで良さそうなイラストを検索し、有料素材であるとは気づかずにコピペしていたことが判明しました。

その有料素材サイトには透かし入りのサンプル画像はなく、費用を払わなくてもフルサイズの画像を保存できる状態ではありましたが、当院の顧問弁護士も全面的に当院側の非であるという見解であったこともあり、相手方の請求金額(2年間の使用料として50万円ほど)をそのまま支払うことで決着しました。

小児科病棟における有名キャラクターの無断使用例

一般病棟はともかくとして、小児科病棟では壁面にイラストを飾ったりして患児が少しでも安心して入院生活を送れるよう色々と工夫していると思います。そして往々にして飾るイラストは某有名キャラクターになってしまいがちです。

当院の小児科病棟でも、ナースステーション前の壁面や処置室などに、病棟保育士や看護師が用意したイラストが飾られていました。元気が百倍になりそうなキャラクター、便利な道具を出してくれそうなキャラクター、機関車が喋りそうなキャラクター、ネズミが踊りそうなキャラクターなどなど・・・。気持ちはよく分かるのですが、病棟師長にすぐに剥がすよう依頼しました。

この他にも、幼い患児用にキャラクターの塗り絵本などをコピーして使用していた例もあったため、これも病棟保育士と話をしてやめてもらいました。

もちろん代替措置として法的に問題がないキャラクターの掲示や塗り絵の提案はしました。代替措置を提示せず「これはダメ、それもダメ、あれもダメ」というだけでは病棟から反発されてしまい、今後の協力関係を築けなくなってしまうからです。

これ以後、小児科病棟からは都度相談をいただけるようになり、こちらとしても助かったケースとなっています。

ちなみにキャラクターの病棟での使用について著作権者に問い合わせてみたところ、元気が百倍になりそうなところのみ「良いとは立場上言えないが理解はできる」と黙認する雰囲気を言葉の端に感じました(もちろんだからと言って無断使用はいけません)。
なお、便利な道具を出してくれそうなところや機関車が喋りそうなところは使用申請を提出する必要があるという事務的な返答で、ネズミのところには恐ろしくて聞くことすらしませんでした。

まとめ

今回いくつか例をあげましたが、こちらの常識では想像もつかないようなことが普通に行われているのが実情です。

昨今ではコンプライアンスがより重視される時代になってきていますが、特に医療業界においてはまだまだ一般企業に比べるとその意識が低いと言わざるを得ません。

広報担当者には頭の痛いことだと思いますが、可能であれば広報媒体の制作はすべて広報が担当し、難しい場合は職員への定期的な意識付けと何らかのチェック体制を構築することをオススメします。

次回はこちら。

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