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中期経営計画と年度予算の役割

未上場企業のクライアントと話す際、「中計(中期経営計画)」と「予算」の違いを明確に理解されていないケースが多々ありました。
上記2つは私自身もうまく言語化できていない点もあり、noteにまとめて見ました。

中計・予算それぞれの目的

中計と予算の細かい違いはありますが、まずは大元の目的を理解した方が頭に入りやすいと思います。(目的が違うから様々な違いあります。)

中計は自社の戦略の解像度を上げるために作成するもの、予算はその実行を確実にするために作成するものとざっくりご理解いただけるといいと思います。

中計と予算の違い

近視眼に陥らず具体アクションに繋げる

予算を毎年作れば中計は不要なのでは?という質問を受けることがあります。この場合中計を策定する一番の意味は将来目標達成のために今必要なアクションを認識できることだと思ってます。

年度予算のみの場合、目標は当期数値(わかりやすくPLをイメージ)になるので、当期の売上・利益のための行動が最優先され、今期結果に繋がらないものにリソースを投下するモメンタムが失われます

例えば100億円の売上高を作るのに3年かかる場合、最初の1-2年は利益が出ませんが、準備は初期から必要です。
中計と予算を両方作ることで具体的なアクションの落とし込みが可能になり、その中に将来を見据えた先行投資部分も含め反映することができます。

KPIと積み上げのハイブリッドが理想

今度は中計があれば予算はいらないのでは?と言われることもあります。
この場合予算を作る意味は、足元の状況を反映しながらより具体的な数値を作り、同時に具体アクションにつなげられる点にあると思います。

なので、上述の説明では中計はKPI、予算は積み上げと書きましたが、実際には中計はハイブリッドで作成すべきと思っております。

売上の例でいうと、中計はどちらかというとトップダウンで、TAMからの逆算(マーケットシェア)とか、競合数値とか、経営者の思いとかの目標値があり、それをKPIで分解すると「顧客数×単価」、顧客数はパイプラインに沿って、「リード数×受注率」等に分解しメタ的に捉え、それが達成可能かという視点から目標数字やKPIをチューニングしていきます。
一方、予算はボトムアップでA社の案件で10億円、B社の案件6億円、C社の案件・・・の積み上げで今期の売上高になりそうだ。
でA社の担当は田中さんであり、具体的なXXなアクションを取っていくと、足元の情報の積み上げていくイメージです。

仮に「顧客数300社×単価=売上高」としても、中身がないとただの300という数字遊び、算数の世界であり、ビジネスは顧客300社はA,B,C3つのセグメントで構成しており、主要のAセグメントの具体顧客はXXX社、XXX社を想定しており、○○部が担当してますと具体的化することで、実際のアクションとの結び付きの解像度をあげることができ、対外的な納得性も高くなります。

なので、コストの見積もりや既存事業等しっかり実績で語れる部分は足元の積み上げを行い、これからの成長戦略部分や新規事業はKPIで作成するハイブリッド型が必要だと思います。

なお、ご参考までに以前紹介した記事のシミュレーション型が中計、エビデンス型が予算に近いイメージになります。

モデル

ちなみに変化の少ない大企業だと中計でもKPIではなく、実績をベースにした個別明細の積み上げで作ることが多い気がしてます。

将来は振れ幅を把握し、足元は一つの目標に邁進する

3年後のことなんて誰もわからないので、中計は複数シナリオを想定しのうえ、シナリオ別の経営数値の振れ幅(インパクト)を把握し、重要なリスクへ備えることが重要になります。

なので一般的にベスト・ノーマル・ワーストの3パターン程度もしくは、個別のトピックを基に3~5個の大シナリオを作成(≒結局ベスト・ノーマル・ワースト的な要素に収斂する形になると思いますが)したりします。

一方予算は実現すべき数値のため、中計みたく複数シナリオを策定することはオススメしません。分けるとしても「対外的なコミット値」と「社内目標値」の2つかと思っております。

対外予算の下振れはネガティブインパクトになるので、死守すべき数値は設定するとしても、会社としてはガチガチの保守的な数字ではなく、少しチャレンジングな目標値に向かっていきたいはずです。

具体的には施策のNo8はチャレンジング、○○会社の案件獲得はチャレンジングと、社内目標値から個別のチャレンジ項目を除いたものを対外的なコミット値として公表するのが良いかと思っております。

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