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あなたの為に生きて、死ぬ これは慣れた音だった。 絶え間なく響く銃声。乾いた連続音は…
「大丈夫か?」 左手と足だけでするすると器用に崖を登りながら、アミがこちらを見下ろす…
──とは言ったものの、だ。 ほどなくして、ラドムは自分の意固地さを後悔することとな…
「ちょっ、ちょっと待て。もぅ……って地元のガキんちょ(あんなコ)が知るわけないか」 全…
にまっ。 片手に蛇を握りしめて、満面の笑みのアミは草原に仁王立ちしていた。 隻腕…
それは土に侵食された灰色の街だった。 雑に敷き詰められた石畳の細道。その両側には、ご…
──いや、そんなことより……。 香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。 ラドムの意識は、危機感より食欲の方へとシフトしていった。 「ラドム! できたぞ。さぁ!」 条件反射だろう。 けたたましく鳴り始めた腹を宥めるように押さえて、ラドムは少女の方へと向き直る。 淡白な肉がこんがり焼ける匂い。 すぐ目の前には零れんばかりの笑顔のアミ。 つられるように笑みを作ってから、ラドムは己の頬が凍りつくのを自覚した。 生々しく体をくねらせて大きく口を開けて絶命し、炙
それはシュタイヤーが彼女に渡していた銃であった。 昨夜遅くたまたまその場面を見かけた…
《狂気の刃》(ヴァーンズィニヒ・クリンゲ) 首筋から後頭部にかけて痙攣が走った。 体中…
自分の背中が窓枠を破壊する音と、背骨のきしむ響き。 それに、肺の空気が漏れるような悲…
キナ臭い空気が鼻腔の奥に、耳障りな声が鼓膜の表面に今も残っているようだ。 「あい…
第三章 戦うことが、運命 夜の空気は、どこまでも冷たく沈んでいた。 ノルマンディーの…
モン・サン=ミシェルへ 目の前に横たわったそれを見下ろして、女は直感した。 ──ヤ…
再び目覚めたとき、傍らに鋼鉄色の少女の姿はなかった。 そのためだろう。周囲に気を配ることもせず、ラドムはぼんやりと天井を見上げただけであった。 「えっと……」 記憶が混乱している。 ここが故郷(ポーランド)じゃないのは分かる。 密航船の中でもない。 ならばモン・サン=ミシェル? いや、違う。 それならば、あの廃墟か? 狭いものの、清潔で近代的な造りの部屋を見回す。 先にあげた何処とも違うことは分かった。 だが、混濁する意識。蓄積された疲労が、眠