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組織の中に必然的に生まれる谷に目的という橋を架ける

リーダーとメンバーの間に「谷」ってどうしてもできてしまいますね。

この谷は構造的に生まれるものです。基本的に、リーダーは指示する人、メンバーは従う人という構図ができています。うまく行っているうちは良いのですが、トラブルや失敗があったとき、この谷が意識されます。

リーダーからしてみればメンバーの至らないところに目が向きますし、指導をすることになるでしょう。一方、メンバーからしてみれば、「指示に従ったまで」「こっちのせいだというのか」という気持ちになるかもしれません。

「指示する・従う」の関係をなくそう、フラットにしようと言いたいわけではありません。フラットにしたところで、意思決定や役割分担が必要で、結果として、指示を出す、受けるという関係が生まれます。フラットにした結果、指揮命令系統が曖昧になって何も進まないということも起こります。

したがって、組織である以上、谷はあるものという前提で考えることになります。

そこでもうひとつの側面に着目することになります。谷に橋を架けるのです。それによって、目的の減衰を防ぐことができます。

経営者と話しているとびっくりするくらい社員に思いが伝わらないということを聞きます。伝わらないと感じるのは、社員の行動を見て思うわけです。そこで、行動の方に目が行ってああしろ、こうしろ…ということになります。しかし、よくよく聞くと、伝わっていないのは目的のことが多いです。

ある経営者と話をしていると、いつも目的を意識して話をしているように思います。例えば、「もっと定量的に目標を設定しなさい。なぜならば、大体できてますというよりも70%できてます、残りの3割は○○です、と言った方が、やることが明確だし、みんなのモティベーションにもなるだろう」のような言い方です。この場合、みんなが前向きに仕事に取り組める様にするのが目的です。

ところが、経営者からそれを聞いた管理職が「定量的に目標を設定しなさい」だけしか部下に伝えないことがあります。その結果、定量化しやすい目標とその結果が報告されることになります。

その報告を聞いた経営者が首を傾げるわけですね。「おかしいな、伝わっていないのかな」と。定量的にはなったけど、簡単な目標ばかりになっている。そこで今度は「なぜそれをやるのか、言葉で理由も考えてほしい」と伝えることになります。

ここから先は繰り返しです。「言葉で」となるので定量化の方は忘れられてしまったりするわけです。

はたから見るとおかしいと分かるのですが、当事者だと気づきにくいものです。なので、リーダーは、とにかく伝わらないものだと認識して、目的を繰り返し伝えるしかありません。谷を越えるたびに減衰していくので、繰り返し、繰り返し、繰り返し伝えていくのです。

組織の上に行けば行くほど、重要で難しい意思決定が必要になり、何のためにそれをするのか自問自答する機会が増えます。その機会の量に差があります。よく管理職や幹部に対して、プレーヤー目線でマネジャー目線になっていない、経営目線になっていないといった課題を聞くことがあります。プレーヤーとして、結果は残しているけど、何のためにそれをするのか目的を考える機会が少ないのだろうと思います。与えられたポジションで結果が出ていれば良いからです。本人にとっても結果を出すことが目的なのですから無理もありません。

様々な会社の経営に伴走していますが、会社の一番大きな目的である経営理念に立ち返ることは少ないと感じます。毎朝、唱和していることもありますが、各自の仕事や仕事の目標と結びついていません。日々の仕事のなかで目的を話す際に経営理念に立ち返ったり、結び付けることが大切ですが、実践できている経営者は多くないと思います。

自らの実践によって、目的に立ちかえる習慣を組織に根づかせることができるかどうか。これは、戦略を考える以上に重要なポイントだと思います。

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