見出し画像

経営は実践である

経営シミュレーションの研修にオブザーバーとして参加しました。

架空の会社の社長になりきって、3期分の経営をするという内容です。外部環境の情報を読み解き、戦略を定め、財務諸表を作成しながら経営を疑似体験していきます。

頭で分かっているだけでは不十分

疑似体験とはいえ、あらためて「経営は実践である」と感じました。例えば、「現金がなくなると会社は倒産する」と会計の教科書には書いてあります。基本中の基本ですが、資金繰りを誤って黒字倒産する受講者が出てきました。「教科書通りの黒字倒産をしてしまいました。ちゃんと計画作成時にキャッシュフローを見て、お金を借りないとダメだったんですね…」と反省していました。

今回の研修参加者は、幹部候補のみなさんです。自部署の責任者として数字も見ますし、KPIも意識しています。ただ、実際にお金を借りて会社を経営していません。このため「このままいくとキャッシュが危険」ということにアンテナが張られていなかったという印象でした。

研修全体の様子を振返ると「市場動向を見て、いかに付加価値の高い製品をお客様に提供するか」という戦略実行の勘所は優れていました。このあたりは実務でも実践しています。ただし、市場展開をしたり、生産能力を高めようとするとお金がかかります。人件費や設備投資などです。それらを意識して経営計画は立てるものの、いざとなると大きな値引きを行って市場を取ろうとする行動が見られました。結果、利益が減り、苦境に陥り、銀行から借り入れをすることになります。

これも頭では分かっていることです。でも、実際には値引きの判断をしてしまいました。恐らく普段も同じように値引きをしているのでしょう。その行動が定着してしまうのは、痛くないからです。ゲームとはいえ、経営者の立ち位置に立ってはじめて「倒産」という痛みを体験したわけです。

がむしゃらに体験しただけでも不十分

冒頭で「経営は実践である」と書きました。知識だけではダメで、実行に移してそこから学ぶことが大切です。

つまり、体験しただけでも不十分です。どのようにすれば体験したことから深い教訓を得ることができるでしょうか。

体験を単純に裏返せば「安易に値下げをしてはいけないのだ」という経験則を得ることができます。ここをさらに一歩、二歩と踏み込んで考えていくことが大切です。

例えば…
①そもそも利益とは何か
②なぜ必要なのか
③どうやったら適切に管理できるか
と考えていきます。

利益とはビジネスの成果です。お客様に喜んでいただける商品・サービスを適正な価格で提供することで得られます。したがって、安易な値下げをしてもそこに何の工夫もなければ、利益が得られません

また、成果であると同時に、利益は、事業を発展させるための手段でもあります。これは、「利益がなぜ必要なのか」という問いに対するひとつの答えです。その場しのぎでは、会社を存続させることができません。つまり、経営者のミッションを果たせないことになります。

でも、人は感情に左右されます。冷静に判断するための仕組みが必要です。PDCAを回すとよく言いますが、Checkするための指標やCheckする会議体や責任者が不明確なことが多いです。やるべきことを徹底できるようにしていくための工夫も大切です。

このようにして文字にしてみると、経営の原理原則として教科書に書いてあることばかりです。体験がないまま文字面を読んでも綺麗ごとにしか聞こえません。

しかし、実際には、怖さも痛さも伴います。この綺麗ごとを実践し、前に進もうと体験をすることで成果と学びが得られます

経営は、実践です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?