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矛盾と葛藤の魅力: 組織開発の意外な視点

「馬場さんて、感情とか関係性の方からアプローチする人なのかな、と思うと、ロジックの方も強くて、両面からなんですね」

個人的にとてもうれしい言葉をもらいました。
ただ、ちょっと解説が必要ですね。

組織開発の氷山モデル

組織開発の界隈だとこんな「氷山モデル」というのがあります。

検索すると様々なパターンのものが現れますが、この図が組織開発としては一般的かと思います。
※ダイヤモンドonlineの早瀬さん、高橋さん、瀬山さんの記事から引用しました。(https://diamond.jp/articles/-/328770

組織の課題を解決しようとすると
「目に見える問題事象(コンテント)」
「目に見えにくい問題事象(タスク・プロセス)」
「見えない問題事象(メンテナンス・プロセス)」
といった階層に問題を分けることができます。

問題解決における要件定義

多くの場合、問題を解決しようとする場合、見えにくいけど、その問題を定義して解決を進めます。整理すれば、解が見えてくる世界です。

社会に出てからのキャリアの10年くらいが、システム開発の端くれのような仕事をしていたので、こうした要件定義みたいなことは割と好きです。そこそこ厄介な問題はありますが、大体は問題や原因が特定できて解決が進みます。

この時大事なのは、あるべき姿を定義することです。このソフトウェアは、こんな使い道だから仕様としてはこうあるべし、というのを決めるわけです。解決方法自体は、衆知を集めれば何とかなります。

ちょっと余談ですけど、開発側は何か不具合があると「仕様です」といって終わらせることがあります。「不具合っていうけど、設計通りに作りましたけど、何か?」という感じです。これが、嫌いでしたねえ…(笑)。

そもそも解決したいことに立ち戻った方が建設的だろうに、と思ってました。特にウォーターフォールで作るのが主流だったのでそんな「言った、言わない」が起きていました。

システムではなく、さらに複雑系な人間や組織に仕事の領域が移ったわけですが、似たようなことはありますよね。

「ルールですから」で終わりになるパターン。
もっとまずいのは「社長が言っているし」というやつ。
最悪なのは「(決定権はないくせに)あいつがまた面倒なこと言っているから」というやつです。

システムにしろ、組織にしろ、問題にただ向きあっても本質的な解決になりません。そもそもの目的に立ち返って、目的を再定義しないとどっちつかずの解決になったり、モグラたたきになったりします。
そのためには、一面からだけ物を見ずに、多面的に見ていきます。いわゆるMECEってやつです。

組織の問題を生む一人ひとりの価値観の違い

上の図では「技術的な課題解決の領域」とありますが、この領域だと、あるべき姿と事象とのギャップを定義できれば、解決できます。

組織の場合は、Aさんの「あるべき」とBさんの「あるべき」が違ったりします。この違いに無頓着なケースが多いです。一人ひとり、生きてきた過程や経験が違うんだから当然です。ただ、普段は見えない。何なら自分でもよく分かっていない。考え方、価値観の違いを表現して、「私たちはこういう価値観でつながっている」ことを了解しあう必要があります。

そうじゃないと、いくらどんなにMECEに整理しても、決められないんです。決められないし、決まったように見えるけど、参加している人が腹落ちしていないから行動に移されない。そして、声の大きい人がキレたりする。なぜなら、その人はその人で真剣で、自分の価値観や考えを分かってほしいからです。でも、自分の価値観だけでは、やっぱり進まないし、組織は硬直する。

価値観による葛藤を活かす

多くのリーダーと仕事をしていて、自分も学んできたのは、価値観を定義することの大切さです。そもそもどうありたいのか、ということを目に見えるようにすること、言語化すること。知ってもらおうとすること。知ろうとすること。違いを違いのままに受けとめて、一人ひとりの価値観を「私たちの価値観」として更新していく。

その過程には、いつも葛藤があります。矛盾があります。
一人ひとり違うんだから、当たり前なんですけどね。

でも、やっぱり、葛藤と向き合うのはしんどい。だから、目に見える方で解決しようとする。結果、「ルールだから」「社長が言ったから」「誰かが言ったから」になってしまう。

だから、感情や関係性など、見えない問題にライトを当てることが、コンサルタントやファシリテーターとしての自分の使命だと思っています。

感情とロジックのバランスについて

…が、どうやら、いや、実際そうなんですけど、結果として「ロジックとかMECEとかじゃないよね、この人」と思われているようです。自分としては両利きのつもりなんですが、これまた、見えない人には見えないようです。

実は「コンサルタントっぽくないですよねー」とか言われると、ちょっと嬉しくなってしまいます。「どういう意味だよ」とも思ってますが、分かってくれているのはうれしい。

ただ、見える問題だけにこだわって、そこから抜け出さずに、大きい声で何とかしようとする人も多いです。「仕様ですけど何か?」みたいな人もいる。しかも、この良くない矛盾に気づいていないので、自分は正しいと思って空回りするし、誰かのせいにしたりします。

そういう人に心を閉じてしまいそうになるのですが、それだと自分の目指すコンサルではないよなと、葛藤してます。これは、あまり良くない葛藤かもしれません。精進します。

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