疑問に妥協しない勇気をみんなが持てたら間違いなく強い組織になれる
ある会社の間接部門でワークショップを行いました。1年も半分過ぎて、仕事を振返ろうという内容です。この取り組みは、部門にとって初めての試みとなります。
依頼は、部門長からでした。同社のビジネスは成長を続けており、間接部門はとても忙しい状況にあります。今後のビジネス展開に合わせて、社内の仕組みを変えていく必要があるからです。
また、成長しているがゆえに様々に突発的な対応も発生します。お客さまにまつわるトラブル、クレームの類だけではなく、社内のあちこちから連絡が入ります。「あれはどうなってる」「やり方を教えてくれ」「急ぎでこれをお願い」…などなど、様々に頼られるわけです。そこを臨機応変に対応して、事業を支えていくのが間接部門の役割です。
自分の仕事はどこまでを指すのか
一方で定常的なルーチンワークもあります。変化に対応するだけではなく、安定的に事業を支えるためにコツコツ続けるべきこともあるわけです。
だから思わず愚痴がこぼれます。
「社内からの連絡に対応していると自分の仕事が終わらない」
いかがでしょうか。
同じように感じている方も多いのではないでしょうか。
ただ、あえて言葉尻を捉えると矛盾しています。
「社内からの連絡への対応」も「自分の仕事」のはずです。
部門長にとっては、部下の後ろ向きな様子が気になります。
忙しいのは確かだが…
・もっと工夫する余地があるのではないか
・一人で悶々としてないで、互いに協力すればできるのではないか
・そもそも創意工夫して解決するのが仕事ではないのか
…という思いがあります。
部門長は、部下に以下の三つを大切にしてほしいとことあるごとに話します。
素晴らしいですよね。こういう気持ちで働きたいものです。
プロアクティブになれずに妥協してしまう
セッションでは、上の3つを実践できているイキイキした職場になるために「増やしたいこと」「減らしたいこと」をふせんに書いて出していきました。
いくつかの班に分かれて進めました。どの班からも減らしたいことに「残業」が出てきます。そのために「無駄な仕事」も減らしたいという意見も出てきます。
事業が成長することで、間接部門の仕事は増えます。しかし、成長したのであれば、もう不要な仕事もあるはずです。それを減らすことができていません。結果、残業をすることになってしまいます。
一方、「増やしたいこと」には何が出てきたと思いますか。
一番多いのは「コミュニケーション」でした。
一口にコミュニケーションといっても様々にあるのですが、特に足りないのは「言うべきことは言う」といった主体性です。つまり、「Proactive 自分から」が足りないのです。
みんな、分かってはいるのです。なのに、「こうした方が良い」「このやり方はもうやめた方が良い」といった意見はしまい込んだままです。そこそこ前向きで、ホスピタリティもあるのですが、「自分から」というProatciveな行動はいま一歩なのです。
セッションでは、これを象徴するひとことが出てきました。
それは「疑問への妥協」です。
おかしいなと思ってもそのままにしてしまいます。「おかしいと思うことに疑問を持って解決しようとすると、自分の仕事が終わらない」ということなのでしょう。加えて、解決しようとすると「ただでさえ忙しいのに周囲を巻き込む」ことになります。
問題は、
・おかしいと思ったらみんなに言うこと
・いっしょになって解決しようとすること
これが一人ひとりの仕事として認識されていないところにあります。
「自分から」アクションすることをみんなの価値観にする
これは、価値観の問題なので解決には時間がかかります。逆にいえば、浸透すれば大きな強みになります。
トヨタ自動車にはアンドンと呼ばれる仕組みがあります。工場のラインに異常があると思ったら、現場作業員の判断でラインを止め、周囲の関係者が集まってその場で解決します。よく言われるのは、この仕組みをそのまま他の企業が取り入れてもうまくいかないという話です。
社員全員が「おかしいと思ったら言う」「いっしょになって解決することが一人ひとりの仕事である」という風に、仕事を良くしていくのは社員全員の仕事であり、上の人間が決めることではない、そんな価値観がないと機能しないのです。
今回のセッションではそうした価値観の大切さがほんのりと分かった…という着地点でした。恐らく職場に戻っていくと再び妥協が起きてしまうでしょう。
部門長の言葉に立ち返って、自分たちを振返る場を繰り返すことで、価値観を浸透させていきたいと思います。
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