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「職場コミュニケーション実験室」としてのメタバースオフィスの可能性

メタバース職場、体験してみたいです。

#日経COMEMO #NIKKEI

リンクは、製薬会社のアストラゼネカが全国67カ所の営業所を廃止したという記事です。アストラゼネカが代わりに導入したのが「バーチャルオフィス」です。

興味が湧いて「バーチャルオフィス」で検索してみました。すると出てくるのは、「実態はレンタルだけど、本社として住所を登録できる」というサービスばかり。なるほど、「バーチャル」つまり、仮想といっても色々あるわけですね。

では、そもそも「オフィス」とは何なのか調べてみました。
Wikipediaでは、以下の5つの機能があるとされていました。

執務スペース機能
オフィスは机とイスである
内部コミュニケーション機能
オフィスは打合せ・会議の場である
社会的連絡先機能
オフィスは社会的な看板である
顧客応対機能
オフィスは受付・商談・応対の場である
倉庫・物流機
オフィスは金庫であり物置であり郵便ポストである

Wikipedia

アストラゼネカの場合は、「内部コミュニケーション機能」をバーチャル空間で補おうということですね。ちなみにいわゆる住所だけの「バーチャルオフィス」は、「社会的連絡先機能」となるでしょう。

それにしても「内部コミュニケーション機能」は本当にメタバースなどで代替可能なのでしょうか。その意味で、体験してみたいと思うわけです。

そもそも、仮想ではないリアルなオフィス空間でも「内部コミュニケーション」が機能しているか、怪しいところがあります。というのも会議や打ち合わせのようなフォーマルなものだけではなく、インフォーマルのコミュニケーションも大切だからです。

以前、MR(Medical Representitive;製薬会社の営業社員) の営業現場のコミュニケーションを調査したことがあります。
やはり、結果がでている営業所はインフォーマルなコミュニケーションに優れていました。オフィスで、病院へ訪問する前の準備をしながら、雑談することで、互いに情報交換をしていたのです。といっても、ほぼ世間話に近く、担当するドクターの好みや病院内でのトラブルの話などが交わされていました。

営業所の所長さんに話を伺うと、中堅社員に「あえて」雑談するように指示していたそうです。実は、所長さんがこの営業所に赴任したときに感じたのは、「みんなが自分のことだけしか考えていない」ということです。当のMRたちからしてみれば、個人成績で動いているようなところがあるので致し方ないことでもあります。

ただ、お客さまである病院は、チームで動いています。成績の良いMRは、そのことをよく理解しています。なので、ドクターに話を聴くだけではありません。ナースやその他のメディカルスタッフからも話を聴いています。中には、ドクターではなく、スタッフ向けに薬の勉強会を開くといった例もありました。

つまり、できるMRは、院内のコミュニケーションに対するアンテナが高いのです。上述の所長さんがおっしゃっていたのは「社内でコミュニケーションを取れないようでは、お客さま先でだってできない」ということでした。

単純に効率性だけを求めれば、自分が欲しい情報を取りに行くだけの方が効率的かもしれません。また、インフォーマルなコミュニケーションはアトランダムなものです。結果、煩わしいこともあります。作業を中断されたりしますよね。

したがって、放っておくと、私たちはどんどん内向きになって壁を作ります。はたしてそれが、本当の意味で生産性を高めることになるのか、という視点を持つ必要があります。

先のWikipediaにあった定義は、ハード面からオフィスを捉えています。「内部コミュニケーション機能」にしても打合せ・会議の場となっています。それだけだとただの情報交換です。つまり余白がありません。

会議で私が好きなのは「放課後」です。みんなが会議室を出て行ったあとでなんとなく残った人と、話を続けたり、振返ったりします。ときに「その場でいえば良いのに」という話もでますが、その場で言えるんだったら、言っているはずなんですよね。なので、そうした対話の中から意外なヒントを得られることがあります。

大切なのは、そうした「余白」です。
そのことが
「あそこに帰れば、面白い話ができる」
「他のみんなの知恵が得られる」
「モヤモヤ考えてたのは自分だけじゃなかったんだ」
といった心のよりどころとなる「場」を生み出すのです。

もちろん、バーチャルオフィスが心のよりどころにならないとは言いません。リアルオフィスだって、行きたくない場所になっているかもしれませんよね。問題は、どのような「場」が心のよりどころになるのかということが、あまり探究されてこなかったことだと思います。

その意味で、バーチャルオフィスに期待されるのは、そこで起こっているコミュニケーションを可視化することだと思います。生産性を生み出す「余白」がどのようなものなのか、それは何によってもたらせるのかを科学できる良い機会なのかもしれません。

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