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【前編】大阪・関西万博を見据え、世界に羽ばたく日本のコワーキングカルチャーを。コワーキングフォーラム関西2022 in 大阪「コワーキング祭会(さいかい)-会うことから始まる共創-」

コワーキング関係者が集い、交流し、学びを深める中で「コワーキングの本質」に迫る全国最大級のイベント「コワーキングフォーラム関西2022」。8/9に京都、10/14には神戸で開催され、各地の特色を反映したプログラムで大盛会となりました。

・コワーキングフォーラム関西2022in京都イベントレポート

・コワーキングフォーラム関西2022in神戸イベントレポート

三都を巡るコワーキングの祭典、最後の舞台は2025年に万博博覧会を控える天下の台所「大阪」。会場は、世代や業種を問わず多様な人が集い、学び合える場である関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE」

2025年に大阪・関西万博が開かれる同都市は、グローバルにひらかれた強固な人的ネットワークの形成を目指しており、民間企業×自治体×大学×フリーランスなど、多様なステークホルダーのハブ的役割を担ってきたコワーキングスペースの持つ可能性に再び注目が集まっています。

迎えた当日、集まったのは所属・属性・人種・国籍を越えた多様な人々とともに「協働・共創」のカルチャーを育んできた日本全国のコワーキングスペース関係者たちと、総勢400名を超える参加者。コワーキングの本質に迫る熱い議論と、世界へ羽ばたくコワーキングの可能性に心踊る一日となった当イベントの様子をお届けします。

前座を務めたのは、株式会社ツナグムのタナカ ユウヤさん、GRANDSLAMの吉永 亮さん、パラレルコミュニティコーディネーターの岩田 かなみさん。
会を明るく引っ張ってくれたのは、The DECKのコミュニティコーディネーター向井 布弥さんと、関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE 倶楽部」の甲斐 莉枝子さん。
総勢400名の参加者が集い、会場は大盛況。

・イベント詳細ページ

主催・協力

【主催】
関西Beyond the Community
【後援】
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
【協力】
関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE」
株式会社ツナグム
Peatix Japan株式会社
一般社団法人日本ワーケーション協会
さくらインターネット株式会社

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droppin(NTTコミュニケーションズ株式会社)
Veap Japan株式会社|ヴィープジャパン
株式会社アクトビ
株式会社Miuit
日本工学院北海道専門学校
Team Place(株式会社AnyWhere)
evawat(合同会社エヴァワット)
Lieffice(南海電気鉄道株式会社)

【トークセッション1】コワーキングの本質と大阪・関西万博を見据えた自治体連携

コワーキングの祭典、最初のプログラムを飾るのはトークセッション「コワーキングの本質と大阪・関西万博を見据えた自治体連携」

モデレーターは日本のコワーキング第一人者であり、カフーツ 主宰/コワーキング協同組合代表理事を務める伊藤 富雄氏。スピーカーは元大阪市職員で株式会社 Human Hub Japan代表の吉川 正晃氏、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会「TEAM EXPO 2025」プロジェクト事務局の深澤 一宏氏、エンスペース株式会社COOの可野 沙織氏の三名が務めました。

「一人で完結する仕事なんてほとんどありません。互いに情報や知見を共有し、ときに協働パートナーとして寄与貢献し合う。それがコワーキングの本質です」。

冒頭、日本コワーキングの祖である伊藤氏が本質について言及。コワーキングの五大価値であるAccessibility(つながり)、Openness (シェア)、Collaboration (コラボ) 、Community (コミュニティ) 、Sustainability (継続性)を各地の事例を取り上げながら紹介しました。

また、世界的に注目を集めている大阪・関西万博を2025年に控えた今、地元に無いものを引き込み、地域経済を活性化するコワーキングの担う役割は大きいと話します。

「コワーキングスペースは、地域の課題と個人の果たしたい目的を共有し関わり代を作るところでもある。そこから共創が生まれビジネスにつながっていく可能性も。コワーキングから内外へ情報発信をし、世界中のリモートワーカーを日本に呼び寄せていきましょう」。

伊藤氏の話を受け、「自治体は課題解決の場であるコワーキングを重視していくべきだ」と語ったのは吉川氏。

「地域内外にあるリソースをつなげて付加価値を生むというのは自治体ではなかなか難しい。従来の自治体がやっていた零細企業に補助金を出す、制度を整えるにとどまらず、支援のあり方そのものを考え直していくべきです。そのためにも、私たちが"見本"となる成功事例になっていきましょう」。

と、会場のコワーキング関係者に呼びかけました。さらに、地域内外のリソースをつなぐ"ハブ"の重要性についても言及。

「行政は仕組みをつくりたがるが、大事なのは仕組みじゃなくて"人"。予算だけ出してスーパーマンを呼んできても、既存組織とつなぐハブの役割を果たす人がいないと上手く回らない。中間支援のできるプロが欠かせません」。

多種多様なカルチャーが集う港であり、市場の役割も果たす"ハブ"にしっかり投資をすること。そしてハブを担う人を疎かにしないことを訴え、話を締めくくりました。

地域に根ざしたコワーキングとして、学生と社会をつなぐ取り組みや起業家のサポートを通して地域経済の活性化を行ってきた可野氏は、「待ちの姿勢ではなく積極的に外に出ていくこと」の大切さを主張。

「自治体でも感度の高い人は、情報収集のためにコワーキングスペースへいらっしゃいます。しかし、私たちはただ待っているだけでなく、こちらからどんどん外の関係機関に向けて情報発信をしています。そこでプレスリリースに取り上げられたり、起業家の方と行政の方との接点をつくったりもできるので」。

続いて、地域に還元できる活動をしたいとの思いのもと、ローカルコミュニティを運営していることも紹介。

「仕事って何をするかよりも誰とするかの方が大事。社会人に比べ、ライトに人をつなげられる学生の協力のもと、コワーキングスペース内外をつなぐローカルコミュニティの運営もしています。ビジネスエコシステムの創出を目指し、各支援機関と連携しながら、地域経済の活性化をしていきたい」

と、今後の展望を語りました。

最後のスピーカーは公益社団法人2025年日本国際博覧会協会「TEAM EXPO 2025」プロジェクト事務局の深澤氏。

「大阪・関西万博といった名前から誤解されがちですが、万博は大阪や関西圏に限ったものではありません。今日お集まりいただいているコワーキング関係者の方々含め、日本各地で『共創』のカルチャーを育てる機会として活用してほしい」。

と話します。世界各国から続々と参加表明が出て盛り上がっている大阪・関西万博。この機運に乗り、コワーキングの得意とする多様な人と機会を繋ぎ共創を生み出していく動きが、全国あるいは全世界に拡がっていくかもしれない。その未来に大きな期待を寄せました。

「見るだけ、体験するだけじゃない、今ここにいるあなたたちが主役の万博だと知ってほしい」。

後半のパネルトークでは、大阪・関西万博から拡がる可能性とコワーキングとの連携について、

「コワーキング関係者の皆様は『共創』をすでに体現している方々。協会だけではカバーできない部分として、全国各地のハブとなって万博を盛り上げ、引っ張っていただけると嬉しいです。万博をもっと活用、利用し、この大きな流れで皆様のやりたいことをどんどん仕掛けてください」。

と、深澤氏から呼びかけがありました。

伊藤氏はこれを受け、「全国のコワーキングと連携すれば、各地に万博の舞台があると考えられる。全国でみんな一斉に何かやりましょうよ!同時多発的に行い、夢洲へつなぎましょう」と答え、吉川氏も「万博のレガシーとして共創のつながりや大切さを遺していきましょう!」と、2025年とその先に向けての展望で話が盛り上がりました。

【トークセッション2】企業のリモートワーク・コワーキング活用事例

トークセッション2のテーマは「企業のリモートワーク・コワーキング活用事例」

スピーカーは、さくらインターネット株式会社社長室の奥畑 大介氏、関西大学社会学部教授の松下 慶太氏株式会社リンクアンドモチベーションの梅原 英哉氏の三名。モデレーターは株式会社funky jump代表の青木 雄太氏が務めました。

冒頭、青木氏から「わざわざオフィスを離れてシェアオフィスやコワーキングで働く理由は?」と質問が。松下氏は、コワーキングが求められるようになった社会背景について以下のように語りました。

「digital nomadic employee(DNE)と呼ばれる、ITを活用して場所に縛られない働き方をする人々が増えてきており、それに伴ってコワーキングスペースの需要も増加。推定ではありますが、2024年には41,000箇所を超える勢いです。オフィスの果たす役割も従来とは変わってきており、セレンディピティの余地が大きいコワーキングの可能性に注目しています。今後コワーキングに求められる価値はさらに高まってくるでしょう」。

コロナ禍を脱し、出社率が上がってきている昨今、90%を超えるリモートワーク率を誇るさくらインターネット株式会社の奥畑氏は「リモートワークを積極的に推奨しているわけではなく、社員それぞれの任意で働き方を選べるようにした結果こうしたデータになった」としつつ、オフィスについては新たな形を模索していると話します。

「松下さんが話していたように、社員が求めるオフィスの役割は大きく変わってきました。弊社では、オフィスは『作業する場』ではなく『コミュニケーションスペース』だと考え、行くのが楽しみになるようにオフィスづくりをしています」。

上記のような先進的な働き方改革を進めてきた同社ですが、課題もあるとのこと。

「働き方の多様化に伴い、『働きやすさ』についてはある程度成果が出てきました。次のフェーズはいかに『働きがい』に創出していくか。今はそこに取り組んでいます」。

株式会社リンクアンドモチベーションの梅原氏は、会場で自由闊達に交流する参加者の様子に目を細めながら、「コロナ禍でコワーキングの価値はますます高まった」と話します。

「以前は不必要だと言われていたオフィスでのコミュニケーションがなくなり、人と人とのつながりやあたたかさが減ってきました。離職する新入社員の多くが、その理由を『自分のいる意味が無いから』と話すといいます。オフィスは仕事場であると同時に、居場所にもなっていたのでしょう。コワーキングには、失われつつあるその役割を果たせる可能性があります」。

さらに、コワーキングの価値と利用する理由について以下のように話しました。

「これまでは自分が会いたいと思う人にしか会いに行かなかったし、得られる情報も限られていた。でも、コワーキングを利用するようになってからは予期せぬ出会いや意図していない情報が入るようになったんです。アイデアを探している事業部長などは使った方がいいんじゃないでしょうか」。

後半「コワーキングを選ぶ際に大事にしている部分」について、モデレーターの青木氏から質問がありました。奥畑氏は「全国に拠点がある多拠点展開のコワーキングであること」「スマホ一つでネットから予約できること」「一日単位で突発的に利用できる、使いたいときに使えること」を挙げ、梅原氏は「楽しそうな雰囲気のところがいいと思っていた」と話します。

中でも注目したいのが二人が共通して挙げた「コミュニティマネージャー」の存在。「コミュニティマネージャーが積極的に話しかけてくれて、いろいろな人や機会とつなげてくれる。さまざまな人や情報と出会い、得てきたものを社内に還元できるのなら、コワーキングへの投資は惜しまない」と、両氏ともコワーキングのソフト面を担うコミュニティーマネージャーの魅力を強調しました。

コワーキングスペースに集まるさまざまなリソースとつなげてくれる彼らの存在は、設備以上に果たす役割が大きいのかもしれません。

コワーキングフォーラム関西2022 in 大阪『コワーキング祭会(さいかい)-会うことから始まる共創-』各記事へのリンク

・アンカンファレンス編はこちらから

・出展ブース紹介&クロージング編はこちらから

文:Ropeth/ロペス 中野 広夢
写真:益田 翼


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