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十二話 エンジンの重低音がうなりを上げている。ぬかるんだ悪路を走る車の振動で、Aは意識…
第十一話 回りの悪い鍵を三度ほど試すと手ごたえがあって、アパートのドアが軋みながら開い…
第十話 京急線の蒲田駅で下車すると、鈴木は地図を開いてもう一度目的地を確認した。美穂と…
第九話 まるで太陽を忘れたかのように、重い雲が空を覆っている。女は天から降り注ぐ雨に気…
第八話 相愛病院は三次救急の設備を持つ、地域の基幹病院だ。最新の設備と優秀なスタッフが…
第七話 病院の処置室の壁にかけられた時計が正確に時間を刻んでいく。誰かの運命など関係な…
第六話 ストレッチャーの小さな車輪から伝わる振動が身体の内側にまで響く。その度に痛みが波となって寄せ、Aはまだかろうじて生き残っていることを思い知らされた。 肺が圧迫されて息がまともにできず、Aはいっそ意識を失ったほうが楽かもしれないと思えた。だが、事態は無情にもAの意思とは無関係に進んでいく。 「廊下空けて、早く!」 「左脚の脛骨及び腓骨に複雑骨折あり。レントゲンの用意をお願いします」 病院の白い廊下を慌ただしく過ぎるスタッフ声たちが、緊急性を周囲に知らしめていた。
第五話 高速道路に設置されたライブカメラが、止むことのない雨の中を走行する車たちを捉え…
第四話 まだ六月が終わらないと言うのに、もうどこかで蝉が鳴いている。ニュースでは今年…
第三話 時間が恐ろしくゆっくりと流れていた。車のドアが開いて差し込んだ光が、車内に舞う…
第二話 非常階段を駆け下りる音の一つ一つが大きく響く。実際には変化がなくても、Aにはそ…
【あらすじ】 目覚めると死体の側にいた。女は殺された相手どころか、自分自身の記憶すらな…