アムスのケバブ屋
出張でオランダに来た。オランダは相変わらず雨が降ったり止んだりで太陽がなく、朝も夜みたいに暗くて、とてもいいものとは言えない。
土曜日は電車で3時間近くかけて足を運んでお客さんと面談をし、その後にアムステルダムをひたすら闊歩した。
アムステルダムは建物が綺麗で運河も流れていて花も咲いていて、とても美しい街だった。全てはこの日だけ天気が奇跡的に良かったからかもしれないけれど、どこまでも歩けそうな感覚に陥るほど。
正直この街にあまりいい印象がなく、今日もいくか迷っていた。おそらく学生時代は飾り窓のエリアなど大麻を吸って暴れている観光客のエリアしか行っていなかったので、あまりいい印象がなかっただけで、それ以外のエリアがあんなに美術館が何軒もあって美しいところだとは、恥ずかしながら知らなかった。
もっとライデンにいた頃に美術館とか行っておけば良かった。全て予約制でゴッホとかは行けなかった。あの頃はライデンが大好きだったし、国内には目を向けず周辺国を周遊することに命懸けだったから仕方ない。。
オランダの大都市は東京や大阪と違って、古い建物がそのまま残されているのが素晴らしいと思う。ただ新しいものに置き換えるのではなく、融合させていくというか。ハーグの街もチェーン店のようなものはほとんどなく、商店街には画廊やレストランなど個人経営の店が目立つ。もちろんスーパーなんかはチェーンのAHとDirkが占めているが、何でもかんでもチェーンになる日本とはまた違う気がする。合理性をとても重視する国民性でありながら、街並みを見ているとそういうわけでもなく、ここにオランダという国や国民性の本質が隠れているのかも。
アムステルダムは聞こえる言語が半分ぐらい英語であり、やはりイギリスからの観光客が多いのだろうと推測する。ユーロスターで一本だしね。それにしてもオランダは英語を話す人が多いな。テレビも英語にオランダ語字幕とか結構あるし、みんな子供の時から当たり前のように身近にあるのだろうな。
歩くのが楽しくて、休憩することなく3時間以上歩き回っていて流石にお腹が減った。お店に入ろうとするも、なかなか一人で入れそうなところが見当たらない。昨日のハーグもそうだったけど、オランダは一人で外食する人に優しくない。というか観光地だからそういうものなのだろう。
外食は日本の2倍以上するし、あまり美味しくない。どの店も混んでいる。
というわけで全然入りたい店が見当たらない。
しばらく歩き回ってイスラエルケバブ?とかいう名前のケバブ屋に入る。私はエルサレムでシャワマにハマりすぎたがあまり3日連続で行ってしまったぐらいにはこの手の店が好きだ。ライデン時代もbarで飲んだ後、深夜までやっていて7€で美味しいケバブを提供してくれるケバブ屋のトルコ人たちには心から感謝していたしあの味と雰囲気が大好きだった。
そんなわけで私にとってはケバブ屋はとてもナチュラルな選択肢だったわけだ。
普通に店も賑わっており、特に何も考えずに店に入る。客である私にbrotherと呼ぶ調子の良い感じのオーナーだ。
Kapsalonを注文。
ポテトにケバブとチーズが乗ったカロリー爆弾である。
注文してから、ふとこの店のgoogle mapでの評価が気になり、携帯を手に取り調べてみる。。
なんと評価はクソ低い。google mapで⭐︎2は食べログの0.3ぐらいの勢いで悪い。
心配になりコメントを見ると
「詐欺師です、絶対に行かないでください」というコメントが多数並んでいる。
よくよく壁を見ても値段は書かれていないし、メニュー表もテーブルにない。これはやられた。私の不注意だ。
なんというお店に入ってしまったんだ。。まだ注文して5分。コーラだけで食事は来ていない。コーラだけ払って逃げるべきか?
詐欺師の店となるとここに居座る理由もない。でも、注文してしまった。
本当に詐欺師なのかも少し気になる。
あれこれ考えているうちにkapsalonがきた。詐欺師が作るkapsalonはたしてお味は、、
普通に量もあってうまい。なんだ美味いではないか。
しかし、google mapのレビューによるとケバブとコーラで30€ほど吹っかけられるという。日本円にして5000円近い。せいぜいアムステルダムプライスでも20ユーロ、いや15ユーロぐらいが妥当か。
食べ終わっていざ会計をもらう。ここはアジア人のカモだと思われてはならない。胸を張り脇を大きく広げて、デカめの声で腹から「check please」という。
すると、空気中を虚な目で見上げた店長が「サーーティーーエイト」と言ってきた。
はい、来た!!!詐欺師きた!!38はやばい!!
すぐさま「Whaat?? How much??」と詰め寄る。デカめの声で詰め寄る。
ちょうどその時二人の若者が入店してきた。店長はやばいと思ったのかその若者らを席に誘導しながら、手で私に落ち着くように宥める。このアジア人が暴れて新規客が帰ってしまうのを恐れたのだろうか。
ThirtyじゃないよThirteenだとと言わんばかりの感じでペンを片手に13.50と書いてきた。
まあようわからんが、めっちゃ妥当な金額を書いてきたので20ユーロを出してしっかりお釣りも6.5ユーロもらって店を出た。
勝った。詐欺師に勝った。高揚感が漲る。
美しいアムステルダムの街がさらに美しく見える。少し陽が落ちたこともあり、光が街を照らす様がとても美しい。詐欺師に勝った高揚感が街を美しく照らした。
また戻ってきたいな。アムステルダム。
それにしても詐欺師の目は空虚に満ちていた。彼の38は客である私に投げられた数字というよりは、何もないところに向かって発せられ、空気中で揮発した。
目を見て、言葉を聞けば、人が分かるは本当だな。いい勉強になった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?