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「カスタマーサクセス」におけるセールススキルの重要性


「カスタマーサクセスにはセールスのスキルも必要」


という話をしばしば耳にします。これに対しては賛否両論で、異を唱える人もいますが、私は肯定派です。基本的には、カスタマーサクセスはセールスもできた方がメリットが多い、と考えています。


ちなみに私自身のキャリアがセールス→カスタマーサクセスだったので、そもそもがセールス脳だったのと、過去にはカスタマーサクセス(ハイタッチ)として予算を追っている時期もありました。


だからこそ、セールスのスキルをカスタマーサクセスに活かすメリットを実感できましたし、これからの時代のカスタマーサクセスのキャリアとしてセールスのスキルはますます重要になっていくと考えています。


そこで今日は、具体的にカスタマーサクセスのどういった場面でセールススキルが役立つのか、何を学ぶべきなのかについて個人的な意見を書いていきたいと思います。

※ちなみに現場でどんな話をしているかは以下のnoteも合わせて参考にしていただけると幸いです。


カスタマーサクセスの仕事

まずはカスタマーサクセスについて、前提を少し整理いたします。

改めてになりますが、カスタマーサクセスの仕事は顧客の成功確率をあげることです。「カスタマーサクセス」という組織が増えていますが、そもそもカスタマーのサクセスは特定の部署だけが追うものではありません。全社で考えるべきものです。


ただ、そうはいっても、全員がそれだけを追ってしまっては企業として存続ができないので、組織内に「カスタマーサクセス」という顧客成果に責任を持った組織を設置します。だから「カスタマーサクセス」の組織は、何があろうと顧客の成功、自社サービスを使用した成果を追求しなくてはいけません。


指標としても、成功しているのであれば継続してくれるはずだという理屈からチャーンレート(解約率)とされることが多いです。また、サービスにもよってはクロスセルやアップセルのチャンスも狙えるので、そこからの商談創出数や売り上げを追う会社も増えているようです。(ちなみに弊社もそうでした)

カスタマーサクセスが追うべき理想系

顧客の成功を最優先するのがカスタマーサクセスです。ただし、ここでよく現場がやりがちな過ちが、自社の利益を度外視してでも顧客の成功を追う、という極端な行動です。


例えば、無償のサービスの範囲には収まらないことを、自身の工数を使ってあれこれ頑張ってしまう、などはよくある話です。


この考えはもちろんわかりますし、私もどちらかというと頑張りたくなるタイプです。多少のサービスは否定しません。ただ、長期的な視点で考えるとサービス改善のための投資ができなかったり、継続改善が必要な分野のリソースが割けなかったりと、別の問題が生じます。


だから理想は、まずはしっかりと成果を出してもらい、その成果を更なる大きな成果につなげていくために追加投資をしてもらい、顧客とともに成長していくことです。


例えば弊社であればWeb制作やMAツール、ネット広告の運用などのサービスを行なっているのですが、どのツールも成果が出始めたら、プランアップやツールの組み合わせで顧客が更なる高みを目指すことができます。小さく始めた場合も、成果を再投資して最終的に顧客も弊社もWin-Winな関係を築くことが可能です。


そうして出た利益をさらにサービス改善につなげ、同金額でもより高品質なユーザー体験を提供できます。


ちなみに、はじめから全てのサービスを完全に連携させて成果を出せたら理想なのですが、これには社内体制から大きく変える必要があるのでいきなりは難しいことが多いです。そのためまずは、全体戦略としての理想像を描き、導入したツールで成果を出しつつ、少しずつステップアップしていく、というプロセスが王道です。


ここで重要な点として、全体戦略としての理想像は経営層まで話を通す必要があります。いくら現場でFIXできていても、最終的なリソースを決めるのは経営層です。逆に言えば、この全体像が経営層まで伝えることができれば、ものすごく強力な関係構築が可能といえます。


そもそもサービスの導入目的は何かしらの経営課題の解決です。その課題に対してより効果的な手段があり、少しでも成果が生まれているのであれば、経営層も話を聞いてくれるはずです。


だからカスタマーサクセスとしては、「顧客の成功を最優先するのは大前提として、価値に対しては正しく投資してもらう」、というマインドで活動する必要があります。

理想に近づけるための5ステップ

とはいえ、これはあくまで理想系です。言うは易し行うは難しで、簡単にできたら誰も苦労しません。理想を追うためには超えなければならない壁が多く存在します。


例えばパッと思いつくだけでも、以下のようなネックが現場も人間には立ちはだかります。


・経営層に提案する機会がない。
・やり方を教える仕組みがない。
・顧客担当者の気持ちを理解していない。
・つまづいている箇所を勘違いしている。
・あまりにも都合よく顧客像を描いている。
・顧客のビジネス全体を理解していない。


のように、ミクロで見るといくらでも問題は出てくるのですが、シンプルにいえば理想の実現には


①成功パターンの確立
②成功する顧客の獲得
③成功方法の伝授
④成功のためのアクション支援
⑤経営的な視点でのFB


この5つステップが必要だと考えています。もし何かネックがあるとすれば、この5つのどこかで問題が生じます。


そもそもカスタマーサクセスは、獲得した顧客を自社サービスで成功させるために尽力するよりも、最初から成功する顧客を獲得した方が圧倒的に効率的だと言われています


だからまずは、自社サービスにおける成功パターンを作り、そのパターンが当てはまる明確な顧客像を描き、リードを集め、セールスがその成功パターンをベースに受注していきます。それが先ほどの①〜③の途中までです。そして成約後はカスタマーサクセスに引き継ぎ、③〜⑤を行なっていきます。


ただこの③〜⑤に関しても、セールスのスキルは必要になります。そこで、ようやく本題となるカスタマーサクセスにおけるセールスの話をしたいと思います。

カスタマーサクセスにセールススキルが必要な理由

圧倒的に前置きが長くなってしまいましたが、こういった課題を解決する際に、セールスのスキルが役に立ちます。ところで、”セールスのスキル”ってなんでしょうかね?


そもそも昨今のセールスの手法は多種多様です。フィールドセールスをはじめ、オンラインセールスやインサイドセールスなど、時代に合わせたセールスの形が生まれています。


ただ、手段は変わっても目的は同じで、人を動かして良い方向に向かわせるのがセールスの仕事だと思っています。


より効率的に多くの人にアプローチをするためにやり方は変われど、自社の提供するバリューは変わらないので、それを使って成果を出してもらうのがセールスのゴールでもあります。


だからセールスのスキルの1つは、人を正しい方向へ動かし、組織を変えていくスキルだと考えています。色々意見はあるとは思いますが、今回はその前提で話を進めさせてください。


となると、先ほどの③〜⑤のフェーズ

③成功方法の伝授
④成功のためのアクション支援
⑤経営的な視点でのFB

にも、セールスのスキルが求められる箇所は多くあります。


例えば③の成功方法を伝授する際にも、顧客の心を動かすような伝え方が必要です。これはハイタッチのような対面であっても、テックタッチのようなコンテンツにおける接点でも、本質的には同じだと思っています。


④のアクションの支援についても同様です。基本的に人は楽をする生き物なので、きちんとマネジメントをしないとアクションを取ってもらえないことがあります。その時にセールスで重要な追客のスキルが役立ちます。


以前、オンラインセールスが命というnoteを拝見しましたが、カスタマーサクセスにも追客と同様な活動が必要です。ましてやこれからの時代はオンラインで支援する機会も増えるので、こういったオンラインセールスのノウハウは取り入れた方がいいと考えています。


ちなみにオンラインセールスについてのnoteもちょくちょく現れていて、以下のnoteはうちの後輩が書いた記事ですが、現場レベルでリアルに役立つことが書かれているのでぜひ読んでみてください。


このnoteの結論は

早速結論からですが、「相手の不信を取っ払うこと」です。

といった内容なのですが、これはカスタマーサクセスにおいても同様に大切なことです。キックオフのMTGで少しでも不信感を抱かれたら、それ以降なかなかこちらのペースで進められなくなります。


もちろんカスタマーサクセスに引き継ぐまでにもセールスが信頼を得て受注をしているので、それだけでチャーンとなる可能性は低いです。ただ、こちらの側の言葉はクライアントに響きにくくはなります。そうなると顧客のアクションを促したり、軌道修正することもできず、結果として成果も生まれずリプレイスされる、といった自体も招きかねません。


じゃあどうすればいいのかっていうのが先ほどのnoteに書かれているような内容で、自己紹介とかがめっちゃ大事だったりします。やっぱりセールスから学べることは多いんですよね。


せっかくなのでもう少し例をあげると、営業のヒアリング項目でBANT条件と呼ばれるものがあります。

1.Budget(予算)
2.Authority(決裁権)
3.Needs(必要性)
4.Timeframe(導入時期)

の頭文字をとったフレームワークなのですが、これはそのままカスタマーサクセスがクロスセルやアップセルの提案をする時にも使えますよね。営業提案時に聞けていたとしても、この辺りを意識しておいて損はありません。


ましてや2年3年経てば状況も変わっている可能性があるので、カスタマーサクセスも最低限、最新の情報を知っておく必要があります。


こういったノウハウが、セールスの勉強をすれば手に入れることができるのです。


特にオンラインセールスは、ウィズコロナの時代において当たり前になっていくはずなので、オンラインセールスの手法をカスタマーサクセス(特にハイタッチ)にトレースすれば、ある程度はうまくワークする気がします。カスタマーサクセスにも当然のごとくオンラインの波はきているので、その辺りは早急に取り組むべき事項です。


また、カスタマーサクセスよりもセールスの方が歴史も長く、人口も多く、直接的な数字へのインパクトがあります。そのため、有益な情報はセールスサイドの方が先に出てくる可能性も高いです。書籍などもいずれ出るのではないでしょうか。


だからまずは、セールスから学んだことを、カスタマーサクセスサイドでも実践し、知見を貯めていくのが良いと考えています。

経営層へのFBを行う機会を得る

最後に、カスタマーサクセスにおいてセールスのスキルが必要な例として、経営層に対してのFBの機会が得られるかどうか、という話をしたいと思います。


セールス、特にBtoBの法人営業は、クライアントの規模が大きくなればなるほど、いきなり決裁者が現れるケースは稀です。そのため少しずつ根回しをしながら、味方を増やしていき、最終的に成約を勝ち取る必要があります。


この時に、担当の方から稟議であげてもらう、という手段もあるのですが、直接会えた方が成約率は格段に高くなります。その辺りも含め、いかに自社に有利に進めていくかがポイントとなります。


この構造はカスタマーサクセスでも同様です。そもそも自社のツールの導入成果は何かしらの経営的な課題が解決されたかどうかで議論がなされるべきです。そうなると、経営層に対してどう提案していくかが重要になります。


よくありがちなのが


「担当のレイヤーが低くて話が通せない」
「現場と上の認識が違いすぎる」


といった理由でなかなか施策が進められず、不要と判断されてチャーンになってしまうケースです。もちろんセールス段階で話はある程度通っているにせよ、年月が経てばそれもどんどん薄まっていきます。サービスの単価が低ければ低いほど、起こりがちな問題です。


ただ、これを言い訳にチャーンされても良いわけがなく、上記の理由であれば根回しをしながらなんとか社内の上流に入り込んでいく必要があります。特にハイタッチの人間はこのあたりをうまくやらないと、厳しいケースもあるのではないでしょうか。


とはいえ、セールスと比較すれば比較的やりやすい部分もあります。少なくとも導入段階では承認をされているツールなので、まったく0からの提案は必要ありません。


また、訪問型のセミナーから少しでも役職の高い人を巻き込んだり、関係者をウェビナーに招待したり、役職者向けのコンテンツを多く作って共有してもらったり、糸口はたくさんあります。


前提として担当者様を味方につけておく必要はありますが、これもセールスでは基本です。きっかけを作り、少しずつ巻き込む人数を増やし、最終的に経営層まで関心を持たせる。基本的にはカスタマーサクセスもこの流れが主流になります。


ちなみに、この話はあくまで「担当のレイヤーが低くて話が通せない」「現場と上の認識が違いすぎる」といった理由で進まない場合の話で、すでに上層部との繋がりがある場合は不要です。


すでに経営層と話す場があるのであれば、成果をこちらからFBすれば、さらなる高みを目指すための提案が通るはずです。そのためには、直近の成果とセールス的な根回しが必要になるのです。

まとめ

カスタマーサクセスにおいてセールスのスキルが役に立つ、という話をしてきました。もっともっと使える場面はあるのですが、今回はこのくらいにしておきます。


もちろん会社によってサービスの形態や事情も違うと思うので、必ずしも全てが当てはまるとは思っていません。


ですが、セールスをわかったカスタマーサクセスや、カスタマーサクセスがわかったセールスの価値はこれからどんどん上がっていくと思います。現在は相互に補っている企業が多いとは思いますが、実際は垣根を無くして、どちらもできるようになっていくのが効率的だと考えているので。


そうなると、やはりカスタマーサクセスの人はセールスのスキルがあった方が良いですし、実務として経験がなくとも、学んでいって損はないなと思います。


特に、先ほどもご紹介したオンラインセールスはウィズコロナの時代において大切なことが多く学べるので、引き続き勉強していきたいと思います。本気でカスタマーをサクセスさせるなら、こちらも本気になる必要があります。妥協せず、顧客成果の最大化にこだわっていきましょう。




長々と書いてきました。
時代の変わり目なので、変わるなら今です。変化に踊らされるのではなく、変化をチャンスにできるよう、自身も組織も変わっていかねばと思う今日この頃。



お読みいただきありがとうございました。



小木曽

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