21-21『マル秘展』 〜デザイナーの原画展〜
一流のプロフェッショナルは、どのように一流たらしめるようになるのか。
それは、俺みたいな凡人が常に頭を悩ましている点である。そんな自分に対する解答を切り売りしてくださるようにして開催された六本木ミッドタウン近くのアートスペース21-21『マル秘展』へ。
自分たちの身の回りにある日用品のプロダクトデザインなど、名だたるデザイナーたちの原画展である。漫画の原画展はよく耳にするが、デザインの原画展だなんてさすがTakram。5月10日まで会期が延長されたのでもういちど行きたい。
㊙︎1:メルカリのロゴが決まるまで!
本展示はデザインに明るくない人たちでも、身近なロゴなど馴染みやすい展示作品が多くて魅力的だと感じた。たとえば、メルカリのデザイン候補も!
レターの一文字ずつフォントやサイズ感を精密に変化させて最適なデザインにするあたり、狂気の沙汰とすら思う。脱帽。こちらは、本展示の主催でもあるTakramの田川氏の作品。最終的なデザインに至るまでの軌跡を見られるのはここしかない。
田川欣哉(デザインエンジニア)
ハードウェア、ソフトウェアからインタラクティブアートまで、幅広い分野に精通するデザインエンジニア。デザインイノベーション・ファームTakram代表。トヨタ自動車「NS4」のUI設計、日本政府のビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS Prototype」のプロトタイピング、NHK Eテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなどを手がける。
㊙︎2:東大の重鎮によるスケッチの数々
山中俊治(デザインエンジニア)
東京大学生産技術研究所で教鞭をとり、アスリートのための美しい義足や、付加製造技術(3Dプリンティング)を使った生き物っぽいロボットなど、人と先端技術の未来を示唆するプロジェクトを推進。
過去に『ぞわぞわ展』など山中研究室の展示には欠かさず行っている。Twitterもフォローしているけど、とにかくスケッチが美しいので、完成形をすでに初期から描ける強さを感じる。山中研究室の卒業生にはひとりずつスケッチが授与されるらしい、羨ましい!
とにかく身近にあるもののスケッチから山中氏は推奨している。デバイスのシステム設計もアート作品のデザインにも通底する洞察力と表現力のスキルなのだろう。このように、無駄がなくシンプルなスケッチが写真を含めてたくさんある。
㊙︎3:「ものの見立ての天才」の脳内画廊
鈴木康広(アーティスト)
日常の見慣れた事象に新鮮な切り口を与える作品によって、ものの見方や世界のとらえ方を問いかける活動を続けている。代表作に、《まばたきの葉》(2003)、《ファスナーの船》(2004)、《空気の人》(2007)、など。
タイトルからも作品の外観からも面白いポイントが一発でわかる点がすごい。「まばたきの葉」は左から三番目の写真。中央の塔から葉っぱの形をした紙が飛び、表の目が閉じている絵と裏の目が開いている絵が回転しながら舞い降りるので、まるでパチパチまばたきしているように見えるのだ。見せ方が抜群。
また、過去に箱根の彫刻の森美術館で開催された鈴木氏の企画展示を研究室のみんなと体験した。箱根の自然と鈴木氏の作品のマッチ加減が至高。なかでも、面白かったのは下の「BLINKING PHOTO」。
一見、変哲のない3分間写真のブース。しかし、中のカメラは体験者のまばたきを捉えてシャッターを押すので、出てくる写真は必ず目が半開きになっている。恥ずかしいっすよ、超油断している顔してるから。
最後に
おすすめとしては、作品展示を観た後は各出展者のTwitterをフォローすること!楽しいんだ、この方たちのツイート。そのツイート自体が作品だし、作品に至るまでの経緯でもある。ある意味、マル秘展は21_21での会期中のみならず、その前後にまで及ぶのかもしれない。
展示やイベントレポート、ブックレビューなどを通じて、アート・テクノロジーなど幅広いジャンルを扱った記事を書こうと思います。また、役者としても活動しているので劇場などでお声がけさせてください!