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ぶっちゃけ地鶏ってナンすか?:養鶏の基礎

『なるほど!畜産現場』今まで触れていなかったものは、こちら「鶏肉」です。同じ鳥でも鶏卵の回は2度ありましたが、養鶏業もまた特徴的な畜産現場ですので、ぜひご紹介したいと思います。

みなさんが聞き馴染みのある「地鶏」と「銘柄鶏」。これら2つは似て非なるものですが、みなさんはその違いを答えることはできますか?実は、多くの顧客たちが地鶏と銘柄鶏を間違えて購入することもあるそうなので、今回でハッキリ覚えておきましょう!

番組では日本における養鶏業の概要、鳥の種類、そして「地鶏」にスポットライトを当てていく流れとなっています!最後は、東京しゃもを使った親子丼も登場!もし、上の質問の答えが気になっていらっしゃったら、下記の30分フルバージョンをご覧ください!

日本の養鶏業のはじまり

そもそも日本人はいつ頃から鶏肉を食べるようになったのでしょうか。実は、江戸時代までは鶏肉を食べる習慣はほとんど無かったようです。当時の鶏は、いわゆる朝に「コケコッコー」と時間を知らせるアラートの役割だったり、観賞用など人間と共に暮らすように飼育されていたようです。ニワトリの語源は「先で飼育する」とも言われているほど。

それが明治維新によって欧米列強から肉食文化が日本に取り入れられたのがターニングポイント。養鶏が始まります。ちなみに、国内初の実用鶏は後述の名古屋コーチンです。昭和36年には貿易為替自由化に伴い、海外から育種改良された種鳥が輸入されるようになったことで日本における工業的畜産に拍車がかかります。ここで、種鳥というのは、良い鶏肉を持つ鳥を生産する親鳥を指します。

地鶏にはJAS規格がある!鳥の種類分けって?

番組本編では、大まかに肉用鶏を「ブロイラー」、「銘柄鶏」、そして「地鶏」の3つに種類分けしました。実はこのほかに「国産鶏種」という種類もあるんですが少し複雑になってくるので、次回に後回し。はじめの3つで整理しましょう。

ブロイラー:出荷までの期間が短い若鳥
まず、ブロイラーというのは若鳥の総称を指しており、特定の種類を指す言葉ではありません。若鶏の名の通り、飼育期間が短い(50〜60日で出荷する)ため生産コストが安く、安価で購入できます。つまり、上記のような目的で生産された鶏はどんな種類でもブロイラーなのです。そして、スーパーで売られている鶏肉は一般的にブロイラーに位置づけられます。

銘柄鶏:ブロイラーのプラスアルファ版
実は、銘柄鶏は、ハーブなどといった特殊な餌の給餌を通じて特別な栄養成分・飼育方法で育て上げたブロイラーなのです。したがって、プラスアルファのエサや飼育に必要な材料以外はブロイラーを育てる生産コストとあまり変わらないようです。けれども、付加価値がついているため、通常のブロイラーよりも値段は少し高くなるそう。また、銘柄鶏にはJAS規格による明確な定義づけはありません。しかし、日本食鳥協会の認定を要するようです。たしかに、餌の種類などの生産農家さんの工夫によって銘柄が決まるわけですから、ブロイラーのアップデート版だということをきちんと検証しないとですよね。

地鶏:日本在来種の血を50%以上持つ〜など条件クリア必須
では、地鶏は銘柄鶏となにがちがうの?地鶏にはJAS規格が定められているんです。それらの条件を満たさなければ地鶏として認定されないようです。その条件がこちら!

地鶏肉と認定されるためにクリアすべきJAS規格
【ひな】日本在来種の血液を50%以上持ち、出生証明ができること
【期間】ふ化日から75日間以上飼育
【方法】28日齢以降平飼い
【密度】28日齢以降1㎡当たり10羽以下

こうしてみるとブロイラーに比べて飼育期間が長いことが分かりますよね。平飼いというのは地面に置いてトコトコ走り回れるように広いスペースを与えて飼うこと。対してケージの中で飼うケージ飼育があります。密度も少なくするなど、どうやら地鶏を生産するためには、鶏に広いスペースを与えて身体を大きくする工夫が必要条件のようです。

そして、何よりもまずは日本在来種の割合が高いことが条件。おそらく、上述の通り、工業的畜産は昭和に入ってから日本で隆盛を極めていったため、ローカルな場所で育てられている種は希少、その上、在来種はほとんど食用ではなかったことも希少性が高さに現れているではないか、と思います。

日本各地の有名な地鶏!

番組では聞き馴染みのある名古屋コーチン比内地鶏についてリモートでお話を伺いました。どちらも日本三大地鶏と言われており、あと一つはさつま地鶏です。それぞれの地鶏がどのような特徴があるのか、美味しい食べ方など。ぜひ、番組をご覧くださいね!

こちらで補足情報・感想をまとめました↓

名古屋コーチン
名古屋は分かるんだけど、「コーチン」って何?って最初に思いませんか。実は、名古屋コーチンの発祥は、明治時代。尾張の地鶏と中国産のバフコーチンと呼ばれる鶏の種を掛け合わせたのが由来となっています。仕事がなくなっちゃった藩主・海部兄弟による交配種なのです。しかし、オリジナルの種を発明するのは諸刃の剣です。なぜなら、より安価な外来種の方が生産に向いているとして重宝されるようになった途端に、名古屋コーチンは絶滅に瀕していたこともあるからです。

このような歴史を経て、現在においては名古屋コーチン同士を交配させて生産するブランド鶏にまで成り上がりました。つまり、雄雌両方とも個体数が多くなってきており、伝統的な「かしわ」の味に需要があることが分かります。さて、この名古屋コーチン、実は基本的には雌を食用とするらしいんです!なぜか?これは、やっぱりオンエアの方で(本編参照)!

比内地鶏
比内地方は秋田県の北部に位置します。そんな寒い場所で誕生したのが比内地鶏。さっきの名古屋コーチンと対照的な部分が面白いんです!名古屋コーチンは人為的に交配されて出来上がりましたが、比内地鶏は鶏、キジ、ヤマドリなどが自然交配をして誕生したんだそうです。僕の感想としては、種を超えて交配ってできるんだ、ということ。おそらく、遺伝的に近縁なんでしょうね!

ここで面白い記事を見つけました!「比内鶏」と「比内地鶏」って何が違うの?という質問とアンサー。え?同じじゃないんスか?実は、少し違うようです。上述の通り、自然交配でできた希少種は比内鶏で、天然記念物にもなっているほど。しかしながら、成長が遅いという課題点があったそうです。そこで、比内鶏に対して成長の速い別の種を掛け合わせて、さらに育種改良されたものが比内地鶏!

一番驚くのは育種改良って現在のような科学の叡智が構築される前に、誰がどんなキッカケで思いついたんでしょうかね。自然交配の例もありましたが、それを模倣・人為的に再現しようと思ったのか。じゃあ、なんでそう思ったのか?奥が深いと思います。

特殊なブランド鶏「東京しゃも」

番組の後半では、実際に生産農家の方と対面で取材。江戸時代からの伝統的な味を引き継ぐ東京しゃも生産組合の浅野さんです。

実は、この東京しゃもは、国産の軍鶏の血を75%引き継いでいるんですが、地鶏ではないんです!番組でも「銘柄鶏」と紹介しましたが、前の章で説明した定義とはまた異なりますよね。地鶏でも銘柄鶏でもない、特殊なブランドということになります。

東京しゃもは、大量生産されるブロイラーとは一線を画する、今や東京都が誇るブランド鶏です。 今や、多種多様な”地鶏”も大量生産される時代になりましたが、東京しゃもは同じ路線は歩みません。
-------------------------------------------------------------公式サイトより

地鶏というのは上述のように飼育方法などの一定条件を満たすことで認定されますから、あえて別の飼育管理手法を行うことで、またオリジナルのブランドが確立される、というのが養鶏の面白いところ。

浅野さんのお話は非常に興味深く、自身が師匠と崇める農学博士に養鶏を始める上でのアドバイスをいただいたそうです。それは、取材場所だった農場の環境。「北に山、南に川と田んぼ、風通しの良い斜面、開放鶏舎」という条件だったそうです。水と風と土、自然資源の豊富さが良質な鶏肉を生み出します。しかし、シャモはもともと闘鶏ですので、食べるために育種改良をされてこなかった種。じゃあ、今はどうか?今も生産性を向上させる交配などは行っておらず、じっくり長い期間東京しゃもを飼育するんだそうです。このことが後に撮影クルーを驚かせます。

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そんな東京しゃもは実は都内の馴染み深いところで販売されているんです!それが、新橋駅から歩いて5分ほどの株式会社加賀屋。明治10年に創業された老舗の販売店です。こちらで1羽のしゃもを購入し、店員の奥村さんからおすすめされた親子丼作りにチャレンジ!

今日の料理「東京しゃもの親子丼」

まずは、千葉大学の名誉教授である石井克枝先生に、鶏肉そのものの栄養価についてお話を伺いました。石井先生は以前、卵の回にもご出演いただきました。

鶏肉の栄養価のまとめ
🐔タンパク質が豊富!
🐔牛肉・豚肉に比べて脂質が少ない!
🐔ビタミンA豊富(皮ごと食べること!)

こうしてみると、筋トレをされる方や食事の見直しをされる方がなぜ、鶏肉をよく食べるのかが分かるような気がします。

さて、では東京しゃもを石井先生に見せると.....

これは、まだカメラを回していない段階だったんですが、石井先生、めちゃくちゃテンション上がってました!「う〜わっ、デカい!!」と。なんとブロイラーに比べて、もも肉の大きさは2倍だそう。どの部位もデカいうえに色合いがキラキラしているように見えるんですよね。

これ、部位ごとに分けられて選んで購入したのではなく、大きい袋に1羽分のお肉から鶏ガラまで全部入っているんです。加賀屋さんすごい!本当にリュックサックくらいの大きさなんです、1羽だけで。恐らくラーメン屋さんはここから鶏ガラを入手して出汁をとったりするんでしょうね!

そんなマッチョな東京しゃものもも肉を使って親子丼づくり。ただ〜、ここは映像で見てもらった方が魅力が伝わるでしょう!出汁・薬味いらずの鶏肉本来の旨味をふんだんに引き出した贅沢一品です!下記に再度リンクを掲載!


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