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大学生が治める街

ライブに出るために高田馬場に行った。

雨だし荷物も多いので早めに移動した。
いつもよりはマシだったけど
それでも駅前は混んでいた。

大学が近いからだろう。
駅前はいつも大学生らしき若者でいっぱいだ。

ライブの会場は早稲田口から歩いて3分。
隅田川沿いにあるカフェの3階。

カフェの入口を入って階段を上がる。
店員も大学生。お客さんも大学生。

いつ行ってもそうだ。
駅からずっと大学生しかいない。

もしかしてこの街は、
大学生が治めてるんじゃないか。

学生の学生による学生のための高田馬場。

そんなことを考えながらカフェに入ろうとして、
今日はいつもと様子が違うことに気づく。

1階の照明が落ちてブラインドが下がっていた。

店員らしき私服の大学生の男女が
客席で帰り支度をしている。

大雨の影響で機材が故障したために
夕方でカフェ営業を終了したらしい。

3階は使えるんですかね?と聞くと
「あ、はい。使える、と思います」と
気のない返事だった。

早くみんなで帰りたいんだろうなぁ。

2年近く通って、わかったことがある。
店員たちは、3階にまったく興味がない。

いや、正しくは、彼・彼女ら大学生が
僕らおじさんに全く興味がないのだ。

それはもう、絶望的なほどに。

「なんか月一で来るおじさんたちまた来てるよ」
くらいのもんだろう。

いや、そんなことないか。
話題にすらしないだろう。

思い上がってはいけない。おじさんの悪い癖だ。

視界に入らないし、記憶にも残らない。
それが彼らにとってのおじさんだ。

階段の前の喫煙スペースに
ライブの出演メンバーがいた。
彼も早くに来たようで
ぼんやりと煙草を吸っていた。

いつもと変わらず、普通にしているだけなのに。

大学生の治める街で、煙草を吸っている彼が。
なんだかひどく、くたびれて見えた。