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【20選】イタリアという国に興味がある人へおすすめしたい本。

イタリアに約1年滞在して、だいぶ堪能したな...と思う一方。まだまだ深みのあるこの国の文化を知るにあたって、個人的に参考になった本(シリーズ・著者)を20選してみました。

日本にいた頃に読んだ本もあれば、スーツケースで持ち込んだ or 電子書籍で購入した書籍なども合わせて...。現地滞在中に読むことでさらに見識が深まったりも。

観光、留学、出張、在住。どんな形でもイタリアに関わることがあれば、ぜひその経験をブーストさせるべく、読んでみてはいかがでしょうか!

■ 小説

 1. 塩野七生さんの著作

鉄板ですが、日本人でイタリアに関する著作家といえば、塩野七生さん。イタリアの歴史における街や人を、緻密かつ巧みなストーリーテリングで執筆されています。「ローマ人の物語」「十字軍物語」「小説 イタリア・ルネサンス」... 著作の数が多いため、自分が訪れる街を舞台にした本を読むのがおすすめです。

私はヴェネツィア近くの街で滞在していたため、上リンクの上下巻を読み込んだのですが、観光が倍楽しくなりました。「ここがあの箇所に出てきた教会か!」と、街を歩き回る度に新しい発見が生まれつつ。単に「ヴェネツィアの知識」が手に入っただけでなく、ひとつの街の発展史をひととおり読み終える中で、ヨーロッパや日本など、他の諸都市における産業構造・経済・地理・政治制度などにも興味が増大し、応用が効く見識を持てたなと実感します。

 2. ハウス・オブ・グッチ (上下巻) / サラ・ゲイ・フォーデン

イタリアの高級ブランド「GUCCI」における内紛を描いています。リドリー・スコット監督の映画にもなり、2021年に公開されました。一族間の経営権争いが生々しく、株式取得の交渉もリアリスティックで、世界的に名の知れた巨大企業の内部事情が興味深いです。

ファッションの街として有名なミラノが舞台になっています。もしお訪ねのときは、こちらを読まれつつ「高級ブランド企業」について理解を深める時間にしてみてはいかがでしょう(私はミラノ行きの電車の中で、映画を観ました)!

■ マンガ

 3. チェーザレ 破壊の創造者 (1) ~ (13) / 惣領冬実

ルネサンス期、イタリアが都市国家群に分かれていた頃のお話です。イタリア史の中でも、野心家として有名なチェーザレ・ボルジアが中心のストーリー。当時の大学の様子や、教皇の選挙(コンクラーヴェ)による覇権争いなど、詳細な歴史的資料をもとに中世イタリア社会を描いています。

ストーリーが半ば途中で完結してしまったのが残念でしたが、歴史モノのクオリティーとしては非常に創り込まれており、高いものとなっています。マンガなのに注釈がめちゃくちゃ細かく記載されていたり。下記リンクで1話目が無料公開されているため、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

 4. アルテ (1)~(16) / 大久保圭 ※現在も刊行中

同じくルネサンス期のイタリアですが、こちらは貴族生まれの女の子が主人公です。現在の境遇を捨てて、ひとりの画家としての生き方を志す物語。絵のタッチからも、チェーザレより和やかな雰囲気ですが、ギルドで身分制の強い社会における葛藤を描いていたりと、テーマ性がしっかりしています。

高級娼婦として生きる女性や、パトロンの政治的駆け引き。シリアスな側面も合わせた中世イタリアの時代を堪能できる作品となっています。

 5. テルマエ・ロマエ (I)~(VI) / ヤマザキマリ

2010年代前半に大きな盛り上がりを見せた作品。言わずもがな知れたシリーズかもしれません(映画で阿部寛さんが主演されたのを見かけた方も多いのではないでしょうか)。

古代ローマ人が現代日本へ、両時代の風呂を通じてタイムスリップするという、なんともコメディ調な話ですが、実在のローマ皇帝も登場していてなかなか臨場感があります。首都ローマのカラカラ浴場なんかは有名ですね。全6巻とさほど多くないので、お訪ねの際はさくっと読んでみるといいかもしれません!

■ 教養・歴史

 6. パスタでたどるイタリア史 / 池上俊一

誰でもが知っているパスタを軸に歴史を語る本。世界史(or パスタ!)への関心が多少ともあれば、すいすいと読んでいけます。

大航海時代に南米から入ってきたトマト、アラブ人がもたらした乾燥パスタ、イタリア統一に果たした料理書の役割。いつ「パスタ」はイタリアの国民食になったのか?現代日本におけるパスタ流行とも絡めながら紐解いていく姿が、知的好奇心を満たしてくれるのにうってつけです。

 7. イタリア史10講 / 北村暁夫

黎明期から古代ローマ、カトリック教会の発展、ルネサンス、宗教改革、イタリア統一(リソルジメント)、ファシズム政権、現代共和制の成立など。「イタリア」という国(領域)を巡っての、ひととおりの通史として把握できる一冊です。

ローマ帝国が分裂し、国民国家としての「イタリア」ができるまでは、バラバラの地域に分かれていた都市国家群。各々の時代におけるハイライトが的確に抽出されているため、さしあたって概観を掴むのに向いていると思います。

 8. イタリア現代史 第二次世界大戦からベルルスコーニ後まで / 伊藤武

こちらはイタリアの、より「現代史」に焦点を当てた歴史本です。世界史で習う範囲の比較的わかりやすいテーマ群(ローマ帝国、ルネサンス、宗教改革 etc)とはうって変わって、政党や政治家の細かな固有名詞が多発し、やや硬派な内容です。

終盤が2011年あたりで止まっており、正確に今の時代(2020年代)を捉えるには現地のニュースに精通したり、リサーチする必要もありますが、第二次大戦後からおおむねの変遷は掴めます。デ・ガスペリの戦後再建、モーロ首相の暗殺、ベルルスコー二の中道右派形成など。現地のイタリア人と一歩深い会話をするためのインプットに。

 9. 会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 / 田中靖浩

簿記を学んだことがある方、会計の専門職に就かれている方におすすめです。銀行を表すバンク(bank)は、もとを辿ればイタリア語のバンコ(banco)。今の簿記も銀行も、実は中世イタリアで生まれました。為替手形というキャッシュレスな発明が、500年前の都市国家で行われていた。

私もヴェネツィアに行くとき、銀行跡の地区を歩き回りました。当時、地中海世界の先端を行くイタリア諸都市でイノベーションが促進された様子は、21世紀の「紙からデジタル」の流れとも絡み、考えさせられます。みたいですので、読みやすいかと思います!

 10. 陣内秀信さんの著作

「ブラタモリ」にも出演された、建築史家の陣内秀信さん。イタリアのまちづくり・都市の発展にまつわる著書がとても多く、現地の街路を歩き回る機会があれば、ぜひ参考にしたいシリーズです。(「イタリア都市の空間人類学」「イタリアのテリトーリオ戦略」「南イタリアへ!」... etc)

個人的に読んだのは上記の一冊。ヴェネツィアを探索する中、「湾沿いにおける都市」の発展にふと興味が湧き、生まれの東京と比較したくなりました。イタリアにいながら、Google Mapで日本の地形を上空から眺めて感慨にふけるという。異国にいるからこそ、自国を別の眼差しで捉える、特殊な経験ができたと感じます。

■ 古典

 11. プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 / マックス・ウェーバー

独自の選書です。イタリアというカトリックが支配的な国に住む中で、否が応でもプロテスタントとの違いを意識しました。外資のスターバックスが国内に数軒しかなかったり、郵便局で3~4時間も待つ列が並ぶのはなぜか? ひとつのヒントとして、宗教的な背景から読み解けるように思いました。

もともと「社会学で有名な、あの難解な本か」くらいの認識しかなかったのですが、現地で生活する中で、ページをめくる文章が痛いほど身に染みてきました。「努力」や「勤勉」が盛んに唱えられる、ある種プロテスタンティズム的な風土の濃い日本に生まれ育った中で、対照的なバリューに根付くライフスタイルを捉えるきっかけとして、深く省みさせられた一冊になりました。

 12. イタリア紀行 / ゲーテ

ドイツの文学者として最も著名なゲーテは、イタリアに強い憧れを抱いていました。宮廷を突然脱して、約2年間をかけて諸都市をめぐった軌跡が描かれています。イタリア周遊を目論む方は、このゲーテの心中に自身を重ねられるはず。(私もこの本をバックパックのポケットに突っ込んでました...!)

現在でもメジャーな、ミラノ、ヴェネツィア、ヴェローナ、ボローニャ、フィレンツェ、シエナ、ローマ、ナポリ、シチリア島などにおける滞在記が読めます。鉱物や植物などへの関心も窺えたり、200年以上前に生きた教養人の目を追体験する感覚で、イタリアの街を巡るのは味がありますね。

■ まちづくり・ローカル

 13. イタリアの小さな町 暮らしと風景 地方が元気になるまちづくり / 井口勝文 

人口1,400人の小さな町である、メルカテッロに在住する著者の体験記です。スローでローカルな町における住民の取り組みをインタビュー形式で紹介していて、メルカテッロという一事例から、イタリアの地域活性術に触れることができます。

私が特に気づきを得た点は、本書で紹介されていたイタリア独自の地方自治単位「コムーネ」です。数百万人を超える大都市圏がいくつも林立し、全人口で大多数がその周辺に住む日本と違い、数千~数万人の小さな町に住む国民の比率が非常に多いイタリア。わずか30人程度しか住民がいない地域と、人口200万を超えるローマとが同じ「コムーネ」で括られるシステムが非常に興味深く、地方自治という観点から国を見るきっかけとなりました。

 14. スローシティ~世界の均質化と闘うイタリアの小さな町~ / 島村菜津

生ハムのブランドを、世界レベルのクオリティにまで育て上げたサン・ダニエーレ。庶民的な水準から、質の高いワインで名を馳せたキアンティ。イタリアの小さな町たちが成し遂げた、地方へ誇りを与える「スロー」な取り組みを具体的な実例で詳述しています。

分散型ホテルの「アルベルゴ・ディフーゾ」の例も取り挙げられています。話題に聞き及んで私も行ってみたので、レポートにしてみました。ぜひご参考に...!

■ イタリア語

 15. イタリア語のしくみ / 野里紳一郎

入門用。イタリア語の知識ゼロで、最もとっかかりやすいと個人的に感じたのがこの本でした。分厚い量でもないので、最初の乗り越えるべきステップ(基本的な文法や表現の理解)として、ちょうどいいラインに設計されている印象です。

がっつりした文法解説書のような網羅っぷりはないのですが、まだ勉強したことがない人に向けて「イタリア語がどうしておもしろいのか」を著者がユーモラスに語りかけてくるような、読み物としておもしろいです。外国語への軽やかなステップとして、初心者の方におすすめしたい一冊。

 16. べつの言葉で / ジュンパ・ラヒリ

ピューリッツァー賞を受賞した作家で、インド系アメリカ人のジュンパ・ラヒリさんによるエッセイ。ベンガル語と英語との行き交いでアイデンティティの揺らぎを覚える中、初めてのイタリア旅行で出会ったイタリア語に魅了され、熱意を注ぐことになりました。

その思いたるや、40歳を過ぎてから家族まるごとイタリアに移住を決意するほど。イタリア語学習者の「わかる、その感覚!」をふんだんに書き綴っています。文章も非常に美しく、比喩に富んだ表現がなかなか素敵です。私も彼女の一ファンなのですが、イタリア語を学ぶ際は、この本を傍らに置いて励ましていました。

■ 食文化

 17. 完全版 イタリア料理手帖 / 池田愛美・池田匡克

序盤では各州ごとの、地理的な特徴や歴史を踏まえての食文化を説明しています。日本ではそこまでメジャーではないような、現地ならではの料理や素材も広くカバーしており、非常に役立ちます。トマトも8種類くらい(!)紹介されていたり。

イタリアのスーパーに行くと、ハムやチーズ、パスタなどめちゃくちゃいろんな種類があってどう選べばいいのか困惑するのですが、この手帖を見ては「今度はあの名前のやつを買ってみよう」と意識的に試せるように。kindleに入れてたら、めちゃくちゃ重宝しました。イタリア食文化マニアの人にはぜひおすすめです。

 18. Dolce! イタリアの地方菓子 / ルカ・マンノーリ、サルヴァトーレ・カッペッロ (監修)

こちらでは、イタリアのお菓子が中心です。料理だけでなく、ドルチェ(dolce)も地方ごとにいろんな背景から多くの種類があって、楽しみのひとつです。

キリスト教の習慣や、宮廷にまつわるエピソードから生まれたお菓子が多々あり、話のネタとしても良いインプットになります。自分の行く町ごとに、どんなスイーツが堪能できるのかを予習できる、良い機会ですね。作り方や材料なんかも記載されているので、日本に帰った際にもチャレンジできそうです。

■ コアな人向け

 19. 初めて書籍を作った男 アルド・マヌーツィオの生涯 / アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ

最近(2022年)出版された、出版業者の本です。現在私たちが読んでいる本を、読みやすく設計させた張本人のアルド・マヌーツィオというイタリア人の物語。

目次、序文、献辞、ページ数、イタリック体。さらには持ち運びしやすいサイズの文庫本を初めて考案したり、現代でも有効な数々のUXデザインは、全て彼のアイデアに依るものです。何かしらのデザインに携わる方には、ぜひ読んでみてほしい一冊です(といいながら、筆者も実はまだ読めておらず...笑 電子書籍版がまだないので買えずにおります、、)。

 20. タタール人の砂漠 / ディーノ・ブッツァーティ

「イタリアのカフカ」とも呼ばれる、ブッツァーティによる名作。イタリアの現代文学を一冊は読んでおきたいと思って購入した本ですが、ストーリーがものすごく響きます。砦の向こうには敵であるタタール人がいる、と言われている。いつ襲ってくるのだろうか?確証のない不安げな雰囲気の中、一将校の思案がダイレクトに伝わってきます。

正直、読んだあとは若干気鬱に陥るのですが、世の中の社会人の真理を痛いように突いてくる感じです。地道な作業に追われながら「いつかは何か大きな人生の契機がやってくるはず」と心の底で期待しつつ、時過ぎ去るのは早し。「今を真剣に生きねば」と思い起こされる本です。

■ 最後に

イタリアとは?

ローマ帝国からルネサンスにいたる豊かな歴史
過去の栄光をそのままに保存した建築群や美術品
簿記や出版など、現代にも残る意外な中世由来のイノベーション
ファッションの流行を生み続ける高級ブランド
地方ごとにバリエーションのある多彩な食文化
歌うかのような響きを持つ言語
国内の運動で注目を浴びるスローでローカルなもの

これほどの多面性を秘めているからこそ、自分も魅了されたのかもしれません。

そんなイタリアを知るための、20冊を今回は載せてみました。もちろん、実際の街を歩くことが何よりの体験となるのですが、頭の片隅にちょっとでもインプットされた「キー」があると、その見たもの感じたものを、二重にも三重にも反芻できるように思います。

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個人的には、とても仲の良い、同い年のイタリア人の友だちがひとりできました。著名なイタリア人政治家(ベルルスコー二)への印象を聞いたり、チェーザレ・ボルジアのストーリーを語ったり、イタリアのお菓子の由来を(なぜか自分が)そのイタリア人に教えることになっては談笑したり。

話してもなかなか尽きない、この国のネタを交換し合ううちに築かれた関係はとても貴重なものになりました。どんな形でも「イタリア」に触れることがあれば、ぜひいろんな角度から覗いてみてはいかがでしょう!

タイトル画像引用: Dsndrn-VideolarによるPixabayより。


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