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話すスイッチONとOFF

私は実はおとなしい。
私は実は人見知りだ。

と、自分では思っている。

友人には否定されるかもしれないけれど…。

誰かと会話をしているとき、
脳内はフル回転しながら、言葉をえらび、
相手の反応を見ながら話し方を考えている。

会話の相手が気を使う相手であれば、
脳の回転速度が上がり、処理するデータ量が増える。
だから、どんなに楽しい会話の後でもぐったりすることがある。

自転車のペダルの漕ぎはじめが重いように、
会話の始まりが一番しんどい。

一度、会話が始まると、苦もなく会話を進めることができる。
そして、どんどん聞きたいことが出てくる。
話したいことが出てくる。

だから、誰かと会話するときは
話すスイッチを意識的にONにする。

でも、
気をつかわなくて済む相手にはONにしない。

そういう相手とは、一緒にいてお互い沈黙していても平気だ。
沈黙が気まずくないのだ。
そして、会話が始まる時はスイッチをONにしなくても
自然に流れはじめていく。

このことに気づいたのは中学生の時だった。

今思うと不思議なのだが、
とりたてて仲が良いという訳ではないのに、
いつも教室移動の時には一緒に行動している子がいた。

授業でグループをつくるときに一緒になるわけでもなく、
一緒に遊んだりするわけでもなく、
その子と一緒にいるのは、ほとんど教室移動だけなのだ。

それでもなぜかいつも二人で移動していた。

ある日、いつも通り教室移動で音楽室へ移動している時、
その子が言った。

「私たち、一緒に移動してても、
 移動中もほとんどしゃべらないよね」と。

私は気づいてなかった。

本当だ。私、いつもこの子と一緒に移動しているのに、
移動中、二人ともほとんどしゃべっていない。

かといって気まずいわけでもない。
むしろ、すごく自然で居心地が良かった。

その子も言った。
「それでもなんか安心していられるよね」と。

そして、その子と会話が始まるときは
何か話さないと、など考えず、
自然と会話がはじまっていて、
気がついたらリラックスして話している。
そういう自分に気づいたのは
そのときだった。

そうか、私、普段は
意識的に話すスイッチONにしてるんだ。

かといって、
意識的に話すスイッチをONにして話すことが嫌いじゃない。

むしろ、楽しい。

が、しんどいとも思うし、
エネルギーを使うので疲れるのも事実だ。

そのしんどいと思う気持ちや疲れがあっても
会話スイッチをONにして会話すると
ドーパミン?が出るのか、気持ちが上がることが多い。

だから、「話す」仕事をしているのだと思う。

私は、仕事の時「話すスイッチ」を
自分で意識してONにしている。

「話し方」「伝え方」についての
パーソナルレッスンをしていて気づいたことがある。

「話すのが苦手」という人は、
この「話すスイッチ」について、少し誤解をしていないだろうか。

「話すのが苦手」と思っている人ほど、
この「話すスイッチ」をONにするのにパワーが必要だとは思う。

しかし、「話すのが得意」になったなら、
スイッチをONにしなくても、いつでも誰にでも
自然に会話ができるようになるんじゃないか、という誤解をしていないだろうか。

私は、人前で話す仕事をしている。

が、仕事の時ほど意識してスイッチをONにしているのだ。

そんなスイッチをONにする意識をしなくても、
自然にいつでも誰にでも会話ができる人ももちろんいるだろう。

実際に、アナウンサー仲間にはそういう人も多い。

ただ、もともと苦手な人がそこを目指すのは、苦しい。
そして、いつまでも自分で自分の話し方にOKをだせなくなる。

私は、アナウンサーだが、
意識的にスイッチをONにしたりOFFにしたりしている。
そして、それで良いと思っている。

「話し方が苦手」と思っている人のなかに
頑張ってスイッチをONにしないと話せないことを憂いている人がいたら、
大丈夫、そこは気にするところじゃないと伝えたい。

プロでもスイッチを意識的にONにしている人はたくさんいるから。

そして少し負荷がかかったり、疲れたりもするけれど、
スイッチを入れて話したとき、
そこに
「つたわった」
「わかってもらえた」
「わかった」
「表現できた」と感じる体験が積み重なっていくことで、
きっと「話すのが苦手」という苦手意識が
だんだん薄くなっていくのだと思う。




書いてみたこと、発信してみたこと、 それが少しでもどこかで誰かの「なにか」になるならばありがたい限りです。