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そして再び! 室津🦪合戦の巻📚


【これまでの回想】

 
あれから何年だったであろうか。

そう、あの出来事は皆忘れようとしていた。
・・・磯臭く苦い思い出。

赤穂 坂越の合戦!

しかし、忘れようとしても決して忘れる事など出来ない。
そう、心の奥底でその炎は燃え続けていた。
 
そして再び!
 
その日に備え、隊長は準備を整えていた。
小さな事からコツコツと。
 
敗れた磯臭い想いと不安を乗せて、今始まるスペクタクルファンタジー!
 
皆様は、奴らの事についてご存じでしょうか。
奴らとは、そう「牡蠣」のことなんです。
 
奴らを見定め、
奴らを食らい、
無事に帰路にたどり着いたものが勝者となる。
しかし、油断してはなりません。
時間差攻撃で、仕掛けてくる強者もいる!
 
奴らがどんな戦い方をするのか。
何故、海のミルクと呼ばれているのか。
その容姿が、その触りこごちたるやまさにホニャララに似ているのか。
また、一旦寄生されるとどんな恐ろしい目に遭うのか。
 
とくとご覧あれ。

【本 編】

 
そう、あの出来事は皆忘れかけていた。

・・・磯臭く苦い思い出。

しかし、忘れようとしても決して忘れる事など出来ない。
そう、心の奥底でその炎は燃え続けていた。
ずっと、根に持っていたのである。
俺はまだ負けていないと。
 
隊長の五臓六腑で感じていた。
酒と共に。
 
ある時は冷やされ、ある時はチュンチュンに温められ〜の。
ちょっと少ない、もうチビッと入れてと。

けっこう、ややこしい。
 
今では、そんな隊長も孫から『川じぃ〜』と呼ばれている。
本人は、『川じぇ~』と呼んでほしいのだ。

ほらっ。
早く! 言ってみろ~!

赤鬼の形相!
危うく孫を泣かしてしまうところである。
 
本人曰く、
『じぃ~』だとジジイみたいなので、
『じぇ~』の方がカッコイイと言うのだ。
 
しかし、孫にはそのカッコ良さは、伝わっていない。
なんで『じぇ~』って言わなあかんのんって。

 
 ⚫出 陣

長年に渡り勧誘し続けた甲斐あり、新たに新隊員を二人騙し入れ脇を固めた。
 
一人目は、ガタイ大きく鬼滅の刃 我妻善逸(あがつまぜんいつ)の髪型に似ており、先頭切って突き進む機動力あり。 ビコ隊員

二人目は、現代風チョンマゲを結った出立の好青年で、動きが早い。チヨマゲ隊員

二人共に見所あり、期待できそうである。
 
私と言えば、超厳戒態勢で臨むこととした。
度重なる闘いで、奴らに寄生された身体は既にボロボロであった。
この闘いでやられると、命を落としかねない。

CoCo壱の闘いになる。
カレーだけに!? 
なんでやねん。
しかし、胸騒ぎは止まらない。
 
この度の闘いは、前回から場所を変え奇襲作戦とした。
別部隊からの情報も踏まえ、準備を進めた。
 

X DAY。
午ノ刻 出陣!!
木は熟した。

えっ、柿でも出来たんかいな。
これは、牡蠣違い。
上手いこと言うた気になってないやろなっ。
 
機は熟した。
決戦の時じゃ〜。
右手を空高~く!

『ヤー』

 
チヨマゲ隊員が用意した鉄馬に皆を乗せ滑り出す。

一刻はかからなかったじゃろうか。

闘いの場所を探りながら、間違えながらも何とか辿り着いた。
 
 
●戦 場
 
所変われば、なんとやら。
闘い方も変わる。
場を仕切る使いの者が、今回の闘い方について述べる。

『いやいや、皆まで言わんでも良い』
言いかけた言葉を飲み込む。

これまでは、奴らは海のミルクと言われるほど栄養たっぷりのボディを守るモビルスーツを身に纏い、熱せられると先端から熱湯銃を放つやり口だった。

この度は、バケツ甲冑に身を隠し、戦うというのか。
自ら得意技の熱湯銃を封じている。

何故!

何故なんだ!!

新手なのか!? 
どんな戦法なのか。
これまでと様子が違う。
 
『う〜むっ』
隊長は、唸った。
 
野郎ども!
一歩も引くな!
かかれっ!
 
へいっ!

 
使いの者は、言葉少なく講釈を垂れると装備は自身で闘いの場に持っていく様促し去って行った。

皆で奴らから脱がせたモビルスーツ入れる皿、短刀など、そして闘いのタイムキーパーなる物を席に持ち帰る。
 
刻々と時間は過ぎてゆく。
24分50秒。
時間は削られゆく。

その時は刻々と迫ってくる。
 
今回は、奴らも新兵を脇にたくさん抱えておった。
マグロ、オクトパス、鯛の腹から切り裂き取り出した卵、サザエの煮っ転がしなど、奴らは油断させよった。
 
音もなく忍び寄る。
生。 
焼き。 
フライ。
難無くこなして行く。
こんな奴らにヤラレてたまるかー。
 
タイムキーパーがけたゝましくなり響いた!

バケツ甲冑バージョンの奴らが登場するゴングが鳴り響いたのである。
すると、動きの速いチヨマゲ隊員がすばやく戦いの場にバケツ甲冑を持って来るや否や隊長に仕留めた奴を素早く差し出す。

奴らは何食わぬ顔をして。
いや、奴らはバケツ甲冑でポーカーフェイスを気取ってやがる。

『やるなっ』
隊長は小さくつぶやく。
 
隊長は、短刀を奴のモビルスーツの隙間を狙い土手っ腹に突き刺したかと思いきや、すぐ様口に放り込んだ!!

今、闘いの幕が上がった!
 
皆が隊長に続く。
 
むむっ!
 
皆の手が止まる。
 
いや、待てよ。
 
何か嫌な予感。
背筋に冷たい汗。
ナメクジが伝うように「つぅ〜っ」と流れ落ちた。
 
オカンが走る。
えっ。
家のおかんが言うには、そんなとこ走ってないって言うねん。
ほんなら、おかんが走ったんとちゃんうやないか。
いやいや、何の話でっか。
 
話がそれちまったな。
時を戻そう。
 
何か嫌な予感。
背筋に冷たい汗。
ナメクジが伝うように「つぅ〜っ」と流れ落ちた。
 
手にした奴らは、そう。
まだ冷たかったのである。
皆、隊長を見上げた。
 
隊長は無言のままではあるが、
『しまった!』と言った顔になっていた。

行き良いよく口にしたものの違和感を感じていたのだった。
もしや、してやられたのでは!!
皆が心配して見守った。
 
鼻を摘んで一言、『大丈夫!』
辺りは静まり返っている。
 
ちょっと似てないんとちゃう。
一度、大きな声で。
さぁ!ジミー大西のものまねです。

 
『お前ら人で遊ぶなー』
隊長の声が響いた!
隊長は、握り拳を強く握っていた。
殴られるのではあるまいか。
 

早かった。
チヨマゲ隊員は、素早くバケツ甲冑を持ち上げると元の火の上に戻しに行ったのである。
更に蒸し焼きにするために。

正解!
 
再度、タイムキーパーをセットする。
バケツ甲冑の奴らは甲冑の蓋が軽過ぎて蒸し焼きになり切っておらず、半生どころか、ほぼ生といった感じであった。

いつもなら、何かにつけ生が一番なのだが、奴らの中途半端な生はいただけねえ。
バケツ甲冑は、細長く火は下から熱せられているが最初にやっつけるのは火からは一番遠い上からである。
蒸しの蒸気が全体にまわっていなかったのである。

やばい状態となっておった。

それが奴らの狙いだったのである。
ちょっと不安げな隊長。
うつむき加減である。

大丈夫なのか、もう一度鼻を摘んで。
もう、それはええねん。
あっそ。
 
仕切り直しやー!
 
ビールからを熱燗に持ち替え、腹の消毒にあたる。
熱燗の解毒効果を期待すると言う。
ホンマけ!?
 
奴らを熱し直しその間、脇に固めた他の物達を先にやっつける作戦に急遽変更した。
臨機応変に闘うことをこれまでの経験で得ていた隊長の指示であった。
 
タイムキーパーが鳴り響く。
すかさずチヨマゲ隊員がバケツ甲冑の蒸し焼け状況の確認に向かう。
手ぶらで帰って来ると無言で、タイムキーパーを更にセットした。

火の回りが悪いのか。
隊長が気にしている。
何でそんなに時間かけて焼いてんねん。
『俺は既に食ってしもうてるねんで!』
隊長~ 心の叫び!
 
3回目のタイムキーパーが鳴り響き、ラスボスを持ち帰って来た。
もう安心だ。

チヨマゲ隊員が皆に取り分けようとした瞬間であった!
隊長がすかさず『俺、もうええは』と言い放った。

えっ!
今、何と!

『後は、お前らに任す』捨て台詞のように。
すねているのか。

先程のダメージが拭い切れていなかったのか。
穏やかではない。

何さらしてますのん!

 
そして、私の前にも奴が差し出された。
牡蠣センサーが反応する。

何か嫌な予感が・・・。

奴のモビルスーツを剥がすと、
むむっ、まだ生っぽい。
湯気も出ない。

まさか、一番上の奴。
つまり火から一番遠い奴である。

目を筋のように細く凝らし、奴を睨み続けた。

ふと、辺りを見渡すと二人の新隊員達は、旨い、美味いと片っ端からやっつけていた。

私が水を差すわけにもいかない。
私も後に続く。

奴らは、見事なボディをしてやがった。
今年は、ミルクをたっぷり蓄えプルンプルン。
何を思わせるなぁ~?

何って、何を。
いやいや、それは言えんなー。

詳しくは、
「赤穂 坂越の合戦!の巻」
にてご確認お願い致します。

 
そうしているうちに新隊員達は、ひとつ、また一つと次々にやっつけて行く。
あいや、待たれ〜っ。
俺ももう一つくらいは。
思いは馳せる。

素早く手を伸ばしては、素早く引っ込めた。
カメさんのように。
 
やっぱ、無理。
新隊員達に任せよう。
新隊員達の大活躍によりバケツ甲冑の奴らを壊滅させ、落ち着きを取り戻した。

 
一息ついて辺りを見渡すと他隊が、誰もいなくなっていた。
戦場の終了時間が迫っていた。

何やら片付けも端の方から始まっている。
使いの者が我々の装備品に手をかける。

隊長の顔が鬼の形相に。
『まだ、うちの子供が食べている所でしょうが』
北の国より。
 
決まった所で、体調を侵されることなく闘いは終わりを告げた。
 
むふっ。
まだまだ、青いな。
蒙古斑も取れちゃ~いないんじゃねえのかい。
本当の闘いはこれからだと言うことを新隊員達は知らない。
ドヤ顔で勝ち誇っていた。
 
新隊員達には勝利の証として、隊長から裸にした奴らを戦利品として持ち帰らせた。

あれっ、おかしいぞ。
何かおかしい。
そう、私には戦利品は無かったのである。
『そんな、無慈悲な~  裸じゃ、いや~ん』

ちゃ~ん。
ここは、じっと我慢の子であった。
 
闘いも終わり皆、チヨマゲ隊員の鉄馬に乗り込んだ。
そう、チヨマゲ隊員はアルコールが摂取できない身体に改造されていたのである。
鉄馬を走らせるために!
そこそこ揺られはしたが、体調に変化なし、順調だ。

闘いが終わり皆、各拠点に散ってゆく。

まずは、私が離脱した。
闘いから3時間が経過していた。
皆、体調に変化なし。

しかし、油断はならん。
『この後1時間は用心なされよ』
っと言い残し、その場を後にした私。

皆、達者でな~。
走り去る鉄馬に手を振っていた。
 
そう、気を許してはならない。
家路には半刻はかかる。
今のところ問題ない。

よし!いくぞう!
ふふっ、あえてここは突っ込まない。
大人の駆け引きである。
 
汽車に乗り込んだ。
このまま、無事帰宅できるであろう。
自信はあった。
汽車は、走るよ何処までも。
西明石~、西明石~。
到着駅が連呼されている。
 
むむっ!
何やら、違和感。
これは、もしや!
油断させて置きながら、静かに蝕まれていたというのか。

クソッが・・・っ。

あかん!
奴が、奴らが。
やりやがった。

声が出ない。

その時、明石着リンコ。
すかさず飛び降りたいが、足取りは重い。

空いている。
やっとの思いで、多目的厠へ雪崩れ込む。

まだ、ツキはある!

前から後ろから。
上から下から。
そこはダメ。
これ以上は・・・。

あっ、あ~ぁ~っん。

身を捩りながらも預けることしかできなかった。
抵抗などできない。

 
どのくらい時間が経過しただろうか。
私の腹には何も残っていなかった。
しかし、奴らはそんな私から胃をエグり取ろうとする。

見えない奴らと闘いは続いた。
苦痛に耐えながらも、ようやく汽車に乗り込む。

やっとの思いで最寄駅まで辿り着く。
足取りは重く、一歩一歩、前え前え。

我が家に辿り着いた時には、暮れ六つ。
中々時間を要しておった。

 
部屋に上がるなり、セーロガントーイAを3錠口に放り込み、そのままベッドに潜り込んだ。
 

今、なんどきでぃ。

一刻は、眠り込んだか。
何とか一命は取り留めた。
あっ、隊長、新隊員達は大丈夫なのか。
そう、鼻を摘んでジミー大西の、もうええか。

ちょっと、余裕がでてきた。
 
頭をよぎるが、微かな意識の中で、またしてもやられてしまった現実を噛み締める。

次回は戦力外を告げられるか?
そんな事を思いながらまた意識が遠のく。

意識が落ちて行く。

やっ、奴め〜。
夢の中で、闘いは続いて行くのであった。

 
おしまい

by まるまるの虫 カメさん

【あとがき】
 
後のニュースでは、
検査で規制値を超えた貝毒が検出され、姫路、たつの、相生、赤穂各市の4拠点で回収要請がされていました。
まさか、俺もこの貝毒になられていたのでは、
敏感肌やからね。
 
好き嫌いなく、何でも食することが売りの私であったが、、、。

ついに断念せざるを得ない奴が出来てしまったことにショックを隠せなかった。

いつの日にかきっと。
 
隊長が今回の戦いをもって、現役を卒業される件について、隊長の意志は固く、引き留めることが叶いませんでした。

しかし、戦いはこれで終わったわけではない。

隊長の遺志は引き継がれました。
きっと新隊員の彼らが戦い続けてくれることでしょう。

新兵達よ。
空を見上げてごらん。
あの一番光ってる星が、金星! 
宵の明星って言ってね。
たっ、隊長〜。

ロマンチストやねーって、あんた。
隊長のことは気にせず。
今は安らかに。。。
いやいや、まだピンピンしておりまっせ。
 
私は今後、牡蠣料理の牡蠣抜きでお願いすることにしたいと思う今日この頃であります。

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