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いちおうフィクションです。

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2021年6月の記事一覧

短編小説「生まれてはみたけれど」

ぼくには、生まれてくる前の記憶がある。

もう亡くなってしまった母が、お腹の中にいるぼくに向かって、

「こいつは絶対産まねえからな」

と大きな声で怒鳴っていた、という記憶だ。

相手が誰なのかは分からないけど、恐らく相手は、ぼくが一度も会ったことのない父だろう。

母の啖呵を聞いて、ぼくはお腹の中で悩んだ。

お腹の中は、とても心地良いし、出なくていいなら出たくないんだけどな、とぼくはぼんやり

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短編小説「夏の日の落下」

短編小説「夏の日の落下」

都庁の近くの小さな集会室で、ぼくは手話を教えていた。

手話講師は、ぼくの本業ではない。

ぼくの本業は、レントゲン技師だった。

レントゲンが壊れて修理を依頼されれば、ぼくはどこにでも出向いた。
腕の良いレントゲン技師だったと自負していたのだけど、3年前に咽頭癌が見つかった。

レントゲン技師の仕事と発癌の因果関係を疑ったが、その証拠は何も見当たらず、ぼくは次第に職場の中で浮いた存在となっていっ

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短編小説「父を埋める相談」

短編小説「父を埋める相談」

図書館に行き、川上弘美さんのコーナーの前で、彼女の本をパラパラとめくっていると、母からラインがあった。

「お父さん殺しちゃったの、どうにかして隠したいのだけど、どこに埋めたらいいと思う?」

突然、そんなことをラインされても、息子としては困る。

「本当に?」

ぼくはラインを返した。

すぐさま、母からラインが返ってきた。

「本当よ、お父さん埋めるの手伝ってくれない?」

どうしたものか、ぼ

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