さんぽ
「ガラガラーッ。」「ガラガラーッ。」
という音が、近所に響き渡ります。
足で蹴って走らせるタイプの自動車です。私たちは、「青いブーブー」と呼んでいました。運転手は…息子です。
同じアパートに住む住人から譲り受けた、その青いブーブーを走らせ、近所を散歩するのです。
タンポポがつぼみを膨らませた頃も、田んぼに水が張られた頃も、バッタが飛び跳ねる頃も、木枯らしが吹く頃も、です。よくもまあ、飽きもせず「運転」したなあ。
私は…そばを歩くだけです。何か、話をしたのでしょうが、今となっては覚えていません。ただ、同じ時間を共有していたことは、確かです。
「青いブーブー」が、補助輪がついた自転車になっても、やがて乗り物がなくなっても、散歩は続きました。行き先は、特にありません。只々、のんびりと歩いていました。
車と違って、流れる景色のスピードが違います。きっと、普段目につかない、何かを探していたのでしょう。
ひょっとしたら、「同じ方向を向いて進んでいこう。」そんな、自分たちの姿を探していたのかもしれません。
例年より、暖かい年末を迎えました。
久しぶりに、散歩をしてみようかな。
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