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認知症予防リーダー

名古屋市の福祉会館(老人福祉センター)では、「認知症予防事業」として「認知症予防教室」という講座のようなクラスと、「認知症予防リーダー養成講座」という、地域の高齢者サロンや認知症カフェへ出向いて「認知症予防に関する啓発活動」を行うボランティアを養成する講座を3年前から始めています。

1.認知症予防リーダーの養成

前述のとおり、名古屋市の「認知症予防リーダー」さん(以降、「リーダーさん」とします)はボランティアで、「認知症予防リーダー養成講座」を修了した方が対象です。
ポイントは、この養成講座、だれでも受講できるわけではなく、名古屋市にお住いの60歳以上の方が対象だということです。つまり、福祉会館が利用できる高齢者の方でないと、受講できません。定年後のセカンドライフで社会貢献をされたい方にはお勧めです。

で、その「養成講座」ですが、8コマを約2か月間にわたり行います。地域包括ケアシステムや認知症施策などの制度のお話、「認サポ」で認知症に関する知識、予防に関する内容として運動栄養、そして地域福祉の概要を解説します。また、実際に地域の各種団体さんに派遣に行った時を想定して、企画の立て方や、進行の仕方、打合せの仕方等を解説して、福祉会館内の「認知症予防教室」で実習を行います。特に私は栄養については、たんぱく質の大切さや抗酸化物質等の話を独自に追加して解説しています。この他に外部研修として、日本福祉大学の協力のもと、「回想法」の研修と、国立長寿医療研修センターの協力のもと、「コグニサイズ」の研修を受けていただきます。

回想法は、1963年にアメリカの精神科医ロバート・バトラーが提唱した、昔の写真や音楽・生活用具などを見たりしながら昔の経験や思い出を語り合う心理療法の1つで、認知症の進行の予防に効果があると言われています。

コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語で、体を動かしながら筋力の強化や機能維持を図ると同時に計算やしりとりといった認知トレーニングもおこない、脳の働きを活性化させ認知症の発症を遅らせるメソッドです。

これら8コマの講座を修了後に、「名古屋市福祉会館 認知症予防リーダー」として登録をされた方は、地域の高齢者サロン認知症カフェ老人クラブなどに「認知症予防のための啓発活動」を行っていただきます。具体的には認知症予防に効果があると言われている「運動・回想法・コグニサイズ」などを地域の各種団体さんに披露していただくわけです。

2.ボランティア育成と運営

ここまで読んでいただいた方に、「これは大変すばらしい事業だ」と思っていただけばうれしいです。実際、私はこの事業が行われると決まった時に、担当をやらせてほしいと当時の上司に直訴しました。で、希望通り担当として立ち上げ当初から関わり、最近ようやく形になり始めたところです。

ただ、「そんな大事な事業をボランティア主体で。。。」という声があるのも事実です。私もこれまで運営に携わりながら、「ボランティア」であるがゆえに、大変だったこともたくさんあります。

私の考えでは、ボランティアは無償性よりも「自発性」が大事だと思っています。例えば「自分を犠牲にして、他人・他者・社会に尽くす」とした場合、ほとんどの方は長くは続かないと思います。「自分のプライベートを割いてまでする必要はない活動」であるべきで、「参加の意思決定が自由な活動」でないと続かないのです。もっと言えば、貢献が前面に出るのではなく、楽しさ(やりがいという意味も含む)が前面に出るべきです。

「私は自分の時間を割いて、みんなのために活動しているのに、どうしてあの人は協力してくれないの?」
という関わり方は困ります。嫌々ボランティア活動を引き受けるようでは、楽しく地域の団体さんに啓発活動を行うことができませんから。

なので、登録された「リーダーさん」には、毎月開催する「定例会」で、派遣依頼の案内をする際に、参加メンバーとして「自発的」に立候補していただくような進行の工夫をしています。

無償性よりも「自発性」が大事だと思うもう1つの理由は、「無償」だからと気まぐれで無責任な行動をとることを避けたいからです。例えば、地域の団体さんにうかがうメンバーとして決まっていたにもかかわらず、簡単に「用事が入っていけなくなった」とキャンセルされるような方では困ります。「認知症予防のための啓発活動」であるがゆえに、「責任感」が他のボランティア活動以上に必要になると私は思いますので、「責任感」を見極めるために「自発性」を1つの基準にしています。

しかし、楽しさや自発性ばかりを求めていくと別の問題が生じます。活動の目的が「自己の利益」や「自己のアピール」のみという方がいらっしゃるからです。「名古屋市の認知症予防リーダー」という「看板」だけが欲しい方、自らの特技を披露するためにこの認知症予防リーダーの活動を利用する方が存在するのです。承認欲求が強すぎるのでしょうか。いずれにしても、養成講座の中で、あるいは修了後の定例会で、「リーダー活動」の目的を理解していただけるよう、繰り返しお願いしているという状況があります。

3.地域包括ケアシステム

詳細は上記リンクを参照していただくこととして、言葉としては福祉職の方であれば聞いたことがあるかと思います。要点を引用すると、

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される

とありますが、その提供の仕組みを、図で示すとこういうことになります。

「おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定」
とありますので、私流の解釈をすれば、要は中学校の学区内で、これからは病気になっても「在宅」医療でいきましょう、介護状態になってもなるべく施設を利用せず「在宅」介護でいきましょう、そして既存の地域団体(老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO等)が生活支援と介護予防を支えてください、ということです。

完成すれば立派なシステムです。ちなみに認知症予防リーダーさんは、このシステムの中ではボランティアとして「認知症予防」を啓発していくということになります。大変重要な役割を担うわけです。ですから、養成講座で成功目指して、1人でも多くの「志と実行力の高いリーダーさん」を養成したいと思って頑張っています。

ただ、残念なことに問題点も多々あります。その中で特に私が思うのは「既存の地域団体」が機能していない地域が結構ある、ということです。

どうして既存の地域団体が機能していないのか?理由は簡単だと思います。例えば自治会の役員を引き受けた場合なら、労力ばかりでメリットを感じられないからです。もめ事も多いです。勝手なことばかりおっしゃる方もいます。強制力があるわけではないので、物事を決めるときに調整は大変です。

また地域の役員をされている方の中には、地域のためというより「役員をしている自分のため」に役員をされている方もいらっしゃるかもしれませんし、あるいは「既得権益化」しているかもしれません。

そのため、「地域の仕組みの再構築」が必要となる場合があるので、地域包括支援センター(名古屋市では「いきいき支援センター」と呼びます)の職員さんや社会福祉協議会の職員さんは大変だと思います。

私は、この状況を打開するには、ボランティアや地域頼みにするのではなく、病気になっても安心して暮らせる社会保障のしくみ、介護状態になっても安心して暮らせる社会保障の仕組みが重要だと思っています。私の一押しは「ベーシックインカム」ですが、これについては後日改めて書きたいと思います。

皆さん余裕がないのです。余裕がなければ他者に目を向けることなどできません。余裕があっても他者に目を向ける方は少ないのですから。

4.認知症の予防

私は、講座の中で
①睡眠(毎日のことだから)
②栄養(毎日のことだから)
③運動
④他者との交流
⑤知的刺激
が大切だと説明しています。

⑤なんかは脳トレの話を例に出しますが、いくら計算が効果があるといっても、算数が嫌いな人が無理に行えばストレスになるだけなので「好きなことや趣味」でOKです、と説明しています。

で、特に重要視しているのが「栄養」です。私の考えでは、運動も大事ですが、それ以前にまず「栄養」です。「栄養」が満たされていなければ、運動ができません

そして「栄養」のなかでも「タンパク質」不足に関する説明が最も力を入れる所です。その理由は、以前の記事にも書いていますが、参加者の皆さんの話を聞く限りでも「質的栄養失調」、つまり「糖質過多・タンパク質不足」を痛感しています。

このあたり、私は藤川徳美医師の症例解説に注目しています。詳細は次の機会に書きたいと思っています。

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