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新聞記者の取材経験から見た問題解決学習を進める上でのヒント

 大学院時代の集中講義にて、中日新聞社の記者の方から、実際の取材経験の話を聞くことができた。
 新聞記者の生きた取材体験の話が、学校現場における問題解決学習に似ている部分が多く、問題解決学習のヒントを得ることができた。

1 「なぜ?」が口癖
 新聞記者は、取材において事実を正確に把握するために、「なぜ、そのようなことが起きるのか?」「どうしたら~になるのか」など、「なぜ?」を口癖にし、常に事象に対して疑問の目で見ることで、事実の裏側になる背景までを情報として得られるようにしている。

 学習材(題材)に初めて児童生徒を向き合わせる時に、このスキルは参考になる。「どのようなことに気付くかな?」「何が印象的か?」など、目に見えるものだけを追い求めるのではなく、「なぜ、その状態になっているのか」「何かおかしい部分はないだろうか?」と、疑問で問い掛け、より深い気付きを促したい。

 問題解決する前の問題発見する力を高める上で、この「なぜ?」という目をもつことは非常に重要なポイントになりそうだ。
 
2 記者よりもよい「聞者」になれ
 記者は、人から、いかに正確に話を聞くことができるかが求められる。いかに正確に相手の話を理解することが、分かりやすく伝えることに直結するからである。ここで重要なのは、事実と意見を区別して聞くことができるかどうかである。記者は、事実を追い求めることで正確な情報をつかむ。意見は、その人なりの解釈になるので、その人の経験値や感性によってゆがんだ情報になる。
 話を聞いて疑問に思ったことは、再度問い返したり、別の関係者に話を聞いたりして、徹底的に情報を精査します。

 学習場面において、対話する際、事実と意見を区別して、話を聞くことができているだろうか。
 どちらかというと、意見を重視している部分が強いのではないか。対話に入る前に、教師から「自分の考えを言いましょうね」と念押しされることが多い。また、対話後に「〇〇さんは、こんな考えだったよ」という意見が飛び交うことが多い。
 自分の考えを伝える、相手の意見を聞く場面において、導かれた考えに対し、その考えがどのような根拠(事実)から導き出されたものなのか、事実と意見を分けて考え、根拠(事実)を追い求めることは、聞く情報を鵜呑みにすることなく、事実は何であるのかを正しく理解し、意見を批判的に聞くことができるようになると考える。
「相手の意見をしっかり聞こう!」ではなく、「相手の情報を正しく理解しよう!」こそ大事であり、事実と意見を区別し、相手の意見はどんな事実から導き出されたものなのかを意識して聞く力が大切となります。
 
3 独りよがりではいけない
 新聞記事は、人が書いている分、どうしても主観や賛否両論がつきものであるが、極力それを減らす努力は必要である。そのために、「異なる意見があって当然」と常に意識することが大切だという。
 様々な視点から事象を分析したり、他者の捉え方と自身のそれとを比較したりすることで、幅広い視点で物事を捉え、客観性を高めた記事に仕上げることができる。

 これは対話を通して、自分やグループとしての意見を高めていく過程に通じるものがある。対話を通して、答えの教え合いをするのではなく、個々の見方・考え方の多様性を生かして、他者の意見を自分の意見の参考にしたり、グループとして1つの意見をまとめたりしていくことが大切である。


 以上、「不特定多数の読者に、正しい情報を伝える」という読者意識、目的をもった新聞記者の取材経験から、問題解決学習を進める上でのヒントを3つのカテゴリーに分けてまとめることができた。
 記者の取り組みの要素は、問題解決学習の質を高める大きなヒントになった。

 今回は、新聞記者の仕事であったが、実際に社会で営まれている仕事と、問題解決学習との接点を引き続き、考えていきたいと思う。

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