【民俗ストーリー】女鹿岩と男鹿岩伝説
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【民俗ストーリー】女鹿岩と男鹿岩伝説

かぜゆか

7月7日・・世間では七夕という日に、私は登山の格好をして、とある山を登ろうとしていた。


登山は、本当に初めての初心者の初心者。


今日の目的地は、ネットで調べた低山で、「ハイキングコース」とも書いてあった。


山の名前は、雷電山。


そして、目指すは女鹿岩(めがいわ)。


初めての登山だけど、何かゴールみたいな目的地があった方がいいかなと思って・・。


特に岩好きって訳じゃないけど、名前がカワイイなぁっていう軽い気持ちでそこを選んだ。


隣の弓立山には、男鹿岩ってものあるんだって!次は、そこにも行ってみようかな。


天気も良し!さぁ、いよいよ入山!!


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自然を楽しみながら歩くこと 分。眼前に巨大な岩が現れた。


「おわー・・・」


思わず見上げてしまう。真ん中にパックリと割れ目があり、正に「そびえ立つ」という感じ。


ドクンっ・・


あれ・・何だろう・・この感覚・・。


悲しい、愛しい、寂しい・・会いたい。


あらゆる感情が、心の中をかけ巡る。


手が自然と、岩に触れていた・・。


・・・・・・・・


(行かなきゃ!!)


私は、登ってきた道を急いで下っていった。


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ハァ・・ハァ・・。


下山して橋に差し掛かった時、向こう側から男性が歩いてきた。


向こうも、息が上がっている。


ゆっくりお互い距離を縮める・・。


その距離があとわずかっていうところで、男性の顔を見上げた。


泣いていた・・。大粒の涙を流して、泣いていた。


いつの間にか私の頬にも涙が流れていた。


「今度は、ちゃんと会えたね・・・」

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※このお話は、埼玉県比企郡ときがわ町に残る民話をもとに、現代風にアレンジしてみた作品です。以下、その民話をまとめてみました。

【女鹿岩・男鹿岩の大蛇の恋】
・都幾川を挟んで、北側の雷電山に、女鹿岩があり、南側の弓立山に、男鹿岩がある。
・女鹿岩にメスの大蛇、男鹿岩にオスの大蛇が住まう。→恋に落ちる
・1年に1度、7月7日夜に都幾川で落ち合う。
・ある夏、日照りが続いたためか、メスの大蛇が姿を消してしまう。
・悲しんだオスの大蛇は、大粒の涙を流し、メスの大蛇を追ってどこかへいってしまった。
・地元には、7月7日夜に都幾川の谷を渡っていく大蛇を見ると、その人に災いが起こるという言い伝えが残っている。→その夜は絶対に出歩かない。
・二匹の大蛇が落ち合ったところが、越瀬橋東側のお諏訪様。
・大粒の涙を流したところが泉となって今でも湧き出ているそう。
※『都幾川村史 民俗編』より抜粋してまとめてみました。







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かぜゆか
日本民俗学歴20年。埼玉の民俗的なことや、不思議な物語ショートショートをお届けします。 RFAまちづくりデザイン室/鳩山町コミュニティマルシェコーディネーター/ショートショート