かぜゆか

日本民俗学歴20年。埼玉の民俗的なことや、不思議な物語ショートショートをお届けします。…

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日本民俗学歴20年。埼玉の民俗的なことや、不思議な物語ショートショートをお届けします。 RFAまちづくりデザイン室/鳩山町コミュニティマルシェコーディネーター/ショートショート

最近の記事

【ショートストーリー】昔話「せんじょが池」を現代風にアレンジしてみた

埼玉県に伝わる昔話「せんじょが池」を、思いっきり現代風にアレンジしてみました。 元のストーリーは ・「せん」という働き者の娘がいた ・せんは、馬が好きで、飼っていた馬の世話をよくしていた ・馬も、せんによく懐いて、せんのあとをどこへでもついて行くように。 ・せんは、困り果てて、家の近くにあった池の方に逃げたが、馬は追ってくる。それで、池のそばにあった松の木によじのぼった。 ・馬は、せんが消えてしまったと思ったが、池にせんの姿があった(映っていた) ・それをせんだ

    • 【民俗ストーリー】月待堂でニヤサマ

      (どうしよう・・めっちゃキンチョーする・・) 私は、今「月待堂」というお堂の中で、村に住む女性たちと宴会をしている。 この望月村の地域おこし協力隊として、先月着任したばかり。 男子禁制というこの月待堂で、月に1回程、二十二夜の夜に集まる会。女性だけでワイワイ楽しく過ごす会で、村では「ニヤサマ」と呼ばれているらしい。 「サエちゃん!!ホラ!もっと飲みぃ!」 お酒をつぎに来たのは、村でいろいろお世話になっているタエコさん。 「初めてだもんね!まぁ女だけだし、気楽に楽し

      • 【民俗ストーリー】女鹿岩と男鹿岩伝説

        7月7日・・世間では七夕という日に、私は登山の格好をして、とある山を登ろうとしていた。 登山は、本当に初めての初心者の初心者。 今日の目的地は、ネットで調べた低山で、「ハイキングコース」とも書いてあった。 山の名前は、雷電山。 そして、目指すは女鹿岩(めがいわ)。 初めての登山だけど、何かゴールみたいな目的地があった方がいいかなと思って・・。 特に岩好きって訳じゃないけど、名前がカワイイなぁっていう軽い気持ちでそこを選んだ。 隣の弓立山には、男鹿岩ってものあるん

        • 【ショートショート】AIごはん

          もぐもぐ・・ 今日も俺は、茶碗一杯の「ごはん」を食べる。 さえない20代独身サラリーマン。この前、末期ガンを宣告された。 余命1年。地味な人生だったけど、恋愛や結婚もしたかったし、人生もっと楽しみたかった・・。 医者にも治療不可能と言われ、何かできることはないかと、必死で見つけたのがこの「AIごはん」だ。 古来より米は、魂を強くすると言われているらしい。 このお米は、一粒一粒にAIが搭載されており、俺の魂に最適化されたごはんが、毎回炊けるようになっている。 1日

        【ショートストーリー】昔話「せんじょが池」を現代風にアレンジしてみた

          【ショートショート】お呪いのかきの木

          「サヨリちゃん!すごく効くおまじないを聞いたの!」 算数の授業が終わった後の休み時間に、友達のミクちゃんが弾むように話しかけてきた。 「四丁目のビルの間にある大きい柿の木があるでしょ?そこの柿を食べると好きな人と両思いになれるんだって!」 最近、好きな人ができたミクちゃんは、おまじないに夢中だ。 「放課後行ってみようよ!」 今日は習い事もなかったので、ミクちゃんに付き合うことにした。 夕日がビルの間から差し込んできて眩しい。 オレンジ色をバックにその柿の木はあっ

          【ショートショート】お呪いのかきの木

          最後の雨雲

          人類全員が外に出ているんじゃないだろうか。 だって、今日は雨雲に会える最後の日だから。 皆、空からの最後の恵を手に入れようと、バケツやオケなどあらゆる「入れ物」を持っている。 ゴロゴロゴロ・・!! あ!!来た・・・!!えぇ!? なんと、空には「カミナリ様」を乗せた雨雲が現れた。 皆、そんなことは想像していなかったのか、慌てて持っていた「入れ物」で自分のおへそを隠したのだった。

          最後の雨雲

          【ショートショート】しゃべるラジオ

          「ヤッホー!サトシ!元気しているか?」 今日も、僕は勉強開始とともに、ラジカセをオンにする。 電源を入れたと同時に、パーソナリティ「ヨシキ」が話しかけてくる。 受験勉強のBGM用として、ラジオでも聞こうかなーとぼやいたら、母ちゃんが、亡きじいちゃんが昔使っていたラジカセというものをくれた。 AMとかFMとかよく分からずぽちぽち触っていたら、急に僕の名前を呼ばれた。 ビックリしていると、パーソナリティ「ヨシキ」たる人はそのまましゃべりはじめた。 それ以来、ラジオをオ

          【ショートショート】しゃべるラジオ

          【ショートショート】二重人格メガネ

          自宅のリビングで、僕はそのメガネをかけようとしていた。 手が震える・・果たして何が見えるのだろうか。 リビングから見えるキッチンでは、妻が夕飯の準備をしていた。 以前から、気づいていた。 妻が時々、フッと暗い表情になり、自分の世界に入りんでしまうこと。 もう1人の妻がいることを、僕は感じ取っていた。 カラダはただの入れ物にすぎず、オモテに出てこないもう1人の自分がいるという。 そのもう1人を見ることができるメガネ。 僕は妻に気付かれないように、メガネをかけた。

          【ショートショート】二重人格メガネ

          【ショートショート】未来行電車の笛が鳴る

          私は、その駅に着くと、そのままホームへと歩いていった。 改札口には誰もいなかったが、ホームまで降りると駅員さんがいた。 「こんにちは」 駅員さんは優しい声で語りかけてくれた。こちらもあいさつをし、そのまま電車を待つ。 「前の会社では、つらいことも、悲しいこともいろいろあったと思います」 (え・・!?なんで分かったの・・?) 以前、働いていた会社は、長時間労働やパワハラ、セクハラが日常的にあって、心身ともにもうボロボロだった。 逃げるように退職をして、体と心を休め

          【ショートショート】未来行電車の笛が鳴る

          【ショートショート】火星のアイドル

          私、マス子!火星でアイドルしてます! 仮想空間のアバターで、地球に向けて発信中! 最近、火星では地球からの移住政策に力を入れていてね。 私は、その広告柱として、地球人の皆様に火星のいいところを発信中。 今日も、これからライブ配信! 「みんな〜!元気?今日は、新曲「テレワークしてマース★」を歌います!」 火星(マース)でのテレワークをオススメする一曲です! 他にも、オンラインツアーや紹介動画もあるよ!中でも、力を入れているのはリアル体験ツアー! ロケットで来て、

          【ショートショート】火星のアイドル

          【ショートショート】恥ずかしがり屋の動物園

          「ねぇ・・しまうまもキリンもぜんっぜん姿現さないんだけど・・」 最近、カップルに人気というこの動物園に彼女と来たんだけど、動物たちは飼育小屋から出てくる気配はない・・。 彼女との初デート、これはやばいぞ・・。 「・・じゃあ・・体験コーナーに行こうか!うさぎを抱っこできたり、馬に乗れたりできるらしいよ!」 さすがにそこでは動物と触れ合えるだろうと行ってみたら・・ うさぎには逃げられるし、馬なんて飼育員さんがひっぱっても全然動こない。 ますます微妙な空気になる俺ら・・

          【ショートショート】恥ずかしがり屋の動物園

          【ショートショート】下克上の棒

          「今日の夕飯なにー?」 夫が帰宅するや否や、開口一番コレ。 私もさっき仕事から帰ってきたばかりだっつぅの! もう限界。いよいよアレを使う時が来た・・。 パッケージには「笑いのつぼ押し〜これでアナタもストレス解消〜」と書いてあり、見た目はどこにでもあるつぼ押しの棒。 ・・しかし、ウラでは「下克上の棒」と呼ばれている。 私は、その小さな棒を握りしめ、夫に背後から迫った・・!! 崩れ落ちる夫。 「・・あははは!!ちょ・・!やめ・・!!」 この棒は、自動的に相手のく

          【ショートショート】下克上の棒

          【ショートショート】失恋釣り

          ポチャン・・・ 「はぁ・・」 私は、ため息と共に釣り糸を池に垂らした。 釣りなんて初めてだけど、こんな感じでいいのかな? 失恋した人のための釣り堀があるというので、来てみたんだけど…。 なんだかボーッとしちゃうな…。 池を見つめていると、いろんな感情が心の中でグルグルし始めた。 浮気した元カレへの怒り 楽しかった2人の思い出 別れ話のときの悲しみ 気づくと涙が頬をつたっていた。 周りを見ると、同じように釣り竿を持ちながら泣いている人もちらほら。 あらゆ

          【ショートショート】失恋釣り

          【ショートショート】しまうまキャプテン

          「1年生パス練習からねー」 僕は、S高校サッカー部1年。毎日、サッカーの練習に励んでいる。 以前、うちの高校は、弱小サッカー部だったけど、数年前に「しまうまさん」がキャプテンになった頃から、めきめきと力をつけ始め、なんと現在、県ベスト4まできている。 現役中、しまうまさんは「弱者は弱者の戦略がある」と言った。 草食動物としての戦い方として「集団行動の強みを活かした戦略」や「力技ではなく頭脳戦」、「時には、逃げることも大事」といった独自のやり方を実践した。 卒業後、そ

          【ショートショート】しまうまキャプテン

          【ショートショート】ゾンビ冷蔵庫

          遂に僕の彼女が、ゾンビになってしまった・・。 僕は、もしもの時のために購入しておいた「ゾンビ冷蔵庫」を使用し、ゾンビになってしまった彼女を冷凍保存した。 変わり果てた彼女の姿に、絶望的になりつつも、ゾンビ専用睡眠スプレーを使用して、なんとか冷蔵庫に入れることができた。 世界にゾンビが現れ始めて数年・・。 最近は、人類側も逃げたり、撃退したりするだけではなく「保存」および「研究」するという段階に入っている。 そのために開発されたのが「ゾンビ冷蔵庫」だ。 身近な人がゾ

          【ショートショート】ゾンビ冷蔵庫

          【ショートショート】伝説のポケット

          「ハハハ!勇者よ!これでおしまいだな!!」 「くっ・・」 俺は、ラストダンジョンの魔王戦で膝をついてしまっている。 いわゆる大ピンチという状態だ。 (・・くそっ、やっとここまで来たのに!!・・そうだ!ここに到着する直前の宝箱で出たアレを・・) と、俺は藁をもすがる思いソレを出した。 伝説のポケット! 宝箱を開けた時、「伝説の剣」とかじゃねぇのかよ・・と正直、落胆した。 でも、きっとスゴイものを出してくれるに違いない! 俺は急いでポケットをあさり、何かを出した

          【ショートショート】伝説のポケット