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なぜ「風と土と」で働き続けているのか?

萩原 亜沙美(はぎわら あさみ) 風と土と・出版事業
「太陽の塔」が近い大阪の千里ニュータウン出身。近くに大きな公園がたくさんあり憩いの場だった。大学時代は京都の鴨川が憩いの場で、卒業後は京都を中心としたまちづくりのNPOを共同で立ち上げ、「場」のもつ可能性を探求。縁あって、2010年7月より海士に移住し、現在は「海士の風」出版プロデューサーとして「本」のもつ可能性と「読者との場」を探求しつづけている。 

このテーマをもらったとき働き続けている理由は「働きやすさ」「働きがい」があるからだろうと、ありきたりなことをふと思った。あまり深く考えたことがなかった。

14年前にこの会社に正社員として入ったときは、たしか額面が13万円で手取りは10万程度だったと思う。そんなアルバイトのような給料から始まった正社員ではあるが、14年という年月を過ごさせてもらった。当時に比べるとずいぶんと改善された手取りではあるが、そもそもお金だけのために働き続けている訳ではない。では「なぜ働き続けているのか」、じっくり考えるにはいい頃合いだと思う。

自然の美しさを感じながら考えられるのも島のよさ


「なぜ私は風と土とで働き続けているのか」

浮かんできた一つの答えが
“地に足をつけながらも、変化を恐れずゆるやかに突き進む”ところが働きやすさと働き甲斐の両方を兼ね備えているからだった。「地に足がついている感覚」は人によって違うと思うけど、安定的に暮らせるというのが大事なのだと思う。お金が毎月ちゃんと入ってくることも大事だけど、それよりもちゃんと働き、ご飯を食べ、きちんと寝て、また仕事に精をだせるような。リズムがあって、気力、体力を保てる、例えば昔の農村的なイメージを私は抱いている。そこでいうと風と土とという会社が「海士(あま)町」という場所を拠点にしていることは大事な理由になる。

お祭りの餅投げの様子 老いも若きもエネルギッシュ

海士(あま)が地に足のついた感覚を抱かせてくれる

人口2300人の小さな離島の中で暮らす人たち。全員が顔見知りというわけではないが、商店にいけば顔なじみが2〜3人は買い物をしている。子どもの通う学校も小規模かつ島の特性もあって、家庭の事情まで知っていたりする。それを「煩わしさ」や「恐怖」と感じるのが都会の感覚かもしれないが、互いに知っているというのは案外ストレス少なめで生活できる大事なことだったりする。

例えば、私が子ども3人のシングルマザーで、風と土とという会社で働いているという情報は、同じクラスに通う子どもの保護者なら大半が知っているだろう。そんな事情を知っているからか、出版の著者や大事なお客さんが来島し、夜の会食が催される時には、ママ友に子どもを預けさせてもらう時がある。逆にママ友たちからもヘルプを受け取り、手助けできるところを出し合って子どもをみていく。そんな感覚が島にはあり、暮らしに温かさと安心感をもたらしてくれる。

英治出版の社長とお向かいさん家族も一緒に食事会


変化を恐れずゆるやかに突き進む会社

離島ベンチャーとして始まった会社は、10年間ずっと自転車操業で、無借金を保ちながらも一進一退を繰り返し続いてきた。それでも徐々に進歩の兆しがみえたのは、2018年の社名変更の頃だった。これを契機にメディア・WEB事業を止め、さらに長く続けてきたお米の定期便などの物販事業も閉鎖した。正解がない中でどういう事業をしていくと良いのか、社員も役員も暗中模索が続いていた。

ご縁や関係性の中から新たに立ち上がった出版事業や、SHIMA-NAGASHIという研修プログラムも開発し、島外との仕事も増えると同時に可能性も広がっていった。
この悩みながらも変化を恐れずに前に進んでいくところが、会社の魅力であり、日々私の好奇心が満たされて働き甲斐に通じているところだ。

私の担当する出版事業は、可能性に満ちていると感じる。どんな本をつくるかもゼロから企画をつくるので、本ごとに毎回違った面白さがあり、『スローフード宣言』という翻訳本では発売1周年を記念して、カリフォルニアから著者のアリス・ウォータース(79)に来日いただいた。日本各地の美しい食のつながりを見てもらい、その様子を収めたドキュメンタリー映画を製作することとなった。

来日ツアーやドキュメンタリー映画を通じて、本当にたくさんの方との出会いがあった。食をテーマにしている本なので、農家さんをはじめ、生産者さん、料理人の方、スポンサーの企業の方々、さらに全国各地で上映会を開催してくれる熱狂的な実践者たち。彼らとのつながりに勇気をもらい、本づくりの枠にとどまらず、色々なことに挑戦し彼らを応援できる力をつけたいと思う。

ときに「いったい何屋なんだろう?」と考えることがある。そんな問いかけに可笑しく思うこともあるけど、可能性の種をみつけたら関係性やご縁を生かしながら恐れずに挑戦する。出版事業に限らず、これからもそんな仕事ができる会社であって欲しいと願っている。

海士にも来島した著者アリス・ウォータースと社員


生き生きと生きる(ALIVEアライブ)につながる

私が心に留めていることにALIVE(アライブ:生き生きと生きること)という言葉がある。地に足をつけながらも、変化を恐れずゆるやかに突き進むことは、私が大切にしているこのALIVE(アライブ:生き生きと生きること)につながっている。

サバイブとアライブの両方を感じられるキャンプ

比較としてSURVIVE(サバイブ:生き残る)という別の生き方を示す言葉がある。世の中が殺伐としていたり、競争があったり、スピードについていけなかったりと、サバイブしなければならない環境と風潮を感じる。サバイブすることは大切だけど、ずっと続くと「必死に生き残らないと」という焦燥感にかられ苦しくなる。だから私はALIVE(生き生きと生きること)を心に留めて、日々暮しのリズムを感じながら、いつまでも好奇心を失わず自分自身もゆるやかに変化し続けていきたいと思って、この会社で働き続けている。

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