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どう在りたいのか、わからなくなった時の為に

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自分がどう在りたいのか、わからなくなったとき。読むと「何か」変わるかもしれない作品を選びました。
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#教養のエチュード賞

拝啓 20年前の私へ

「20年前のちーちゃんから30歳の千裕さんに手紙が届きましたよ」

母からの連絡には、フェルトペンで書かれたのであろう拙い子供の書く漢字で私の実家の住所と宛名が記された茶封筒の写真が添付されていた。何をそんなアンジェラ・アキみたいな話……と首を傾げかけたところで、ばちんとその記憶は蘇ってきた。小学4年生、ちょうど20年前、国語の授業で「20年後の自分に宛てて手紙を書く」という時間があったこと。あの

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自分をまるごと「受け入れる」ことは、言うほど簡単じゃない半世紀だった。

自分をまるごと「受け入れる」ことは、言うほど簡単じゃない半世紀だった。

 アラフォーの頃の私は本当に「残念な、とちくるった」人間だった。

 何かを成さねば人として未熟だと思っていた。自分は。

 他人には「そのままで充分素敵だし、他の人がもってないものを既に沢山持ってる」と言って、なんだったらひとつひとつ指摘してその凄さを伝えてたのに、自分に向かっては「お前は全くだめだ」と言っていた。他人を妬むことは幸い全くなかったが、代わりに自分をいじめ抜いた。

 何者かになろ

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創作者は皆、チェス盤の前に座している:『猫を抱いて象と泳ぐ』感想文

創作者は皆、チェス盤の前に座している:『猫を抱いて象と泳ぐ』感想文

小説、音楽、漫画、映画、アート全般。最初に出会ったときにはただ、あぁいいなぁと思った作品が、ひょんなタイミングで示唆に富んだ物語として目の前にふたたび現れることがある。

2011年に発行された文庫版の小説『猫を抱いて象と泳ぐ』。書店に並んだばかりのその本を、小川洋子さんファンの私は迷わず手に取りレジへと持っていった。

今年の4月に嶋津亮太さんがはじめられた「知性の交換」。本を贈り合う試みで、私

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