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創作は恥をしのぶ連続

久々に創作活動の話をしよう。

自己紹介文にもある通り、私は今創作活動のリハビリ期間にいる。学生時代は小説も詩も絵本も絵も造形も、創作することを楽しんでいたのに、現在出来なくなってしまったのはなぜか。

私のように、学業として文学や芸術に触れてきてしまった人間はもちろん、創作活動を続けていくには確固たる自信か、よほどの精神力が必要だと思う。

この原因は何かを考えたとき、3つの要因が浮かび上がった。

1つ目は間違いなく理想と現実とに隔たりを感じるからであろう。どのような作品が名作で、どのようなものが駄作かと刷り込まれ、多少の好き嫌いが加わり、自分の中の理想が確固たるものとなる。その逆もあり、駄作と思われる要素が作られ、その要素が孕んでいないかと、自分自信の作品を批判する目で見ることになるからだ。「遊び」や「味」に挑戦ができない。

2つ目は、評価への恐怖心だ。
作品は必ず評価される。声になってもならずとも、作品は見た人に上手い下手と評価されるものだと思っている。いや、実際にはそうじゃないこともあるが、これまで授業でも私生活でも上手い下手の基準で見る機会が多かったせいか、"作品は評価されるもの"という意識が強い。単純に楽しむということがもはやファンタジーに思えてくる。

3つ目は、他人からの添削を繰り返し、書きたいものを見失ったことだ。学生時代は描きたい世界はいくらでもあった。それを形にしては課題として提出することを繰り返すと、評価とともに「ここはこうしたほうがいい」「この表現は変えるべき」という直しが入る。もちろん納得いうものもあれば、意に沿わないものもある。それを繰り返す中で、創作への意欲を見失ったように思う。

×××

ここまで完全に「創作をしない言い訳」を述べてきたが、冒頭でも述べたように私は"リハビリ中"なわけで、創作活動を再開したいと思っている。

まだ、これらの3つの原因が学校ではなく、自分自身にあることも重々承知している。それは、いつも一篇の詩が私に教えてくれていた。学生時代も私を支えてくれた、茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』だ。

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
/
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
/
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
/
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
/
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
/
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

×××

私は少しずつ創作活動を再開することを決めた。おそらく亀の歩みほどのスピードだろうが、これまで創ろうと思って取りかかっても、結局途中で放棄してきてしまったので、今は1つ作品を完成させることが目標だ。

こんな気持ちになったのは、親しくしている友人の創作活動を精力的に行っている様子を見ていることや、noteで書く楽しさを再確認できたことがきっかけだったと思う。

そして、後押ししてくれたのは朝井まかてさんの『眩(くらら)』の中の葛飾北斎だ。娘である葛飾応為が納得いかない作品を納品することになった時の言葉である。

「たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる間があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ。」

そもそも私は三流の素人なので、同じに考えることも痴がましい話であり、そもそも納期がないのだが、満足するしないとか納得できるできないなどは関係ない。まずは仕上げる。恥ずかしいと思うものでも、今の私は完成させることが大切なんだろうと。

また自信がないことも一概に悪いこととは言い切れない。

北斎は晩年、90歳になってもあと5年あれば、俺は本当の画工になれると言っていたらしい。また、北斎のもとで修行をしていた弟子が自信をなくしていた時、娘の応為が「おやじなんて子供の時から80幾つになるまで毎日描いているけれど、この前なんか腕組みしたかと思うと、猫一匹すら描けねえと、涙ながして嘆いてるんだ。何事も自分が及ばないと自棄になる時が上達する時なんだ。」と言うと、そばで聞いていた北斎は「まったくその通り、まったくその通り」と賛同したという。

あの葛飾北斎でも…と思うとゾッとするが、今私は上達する時なのではないかと思えた。

今日は引用ばかりになってしまったが、明日からはまた書く楽しさを味わいつつ、他愛のない日記を書いていこう。そして、来年は創作の楽しさを味わう1年にしていきたい。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。