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泣きたい時に読む小説「CALAMITY」vol.13 最終話

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前回のお話 ↓


その夜、雪奈の部屋からは泣き声が途切れることがなかった。

母親は何度もドアを叩いたが、中から応答はなかった。

「雪奈、大丈夫か?」

俺も同じ言葉を何度も繰り返したが、結局その夜、雪奈の部屋の扉が開くことはなかった。

翌朝。朝食の支度をしていた母親のもとに、目を腫らしてた雪奈が現れた。

「おはよう。食事、用意しておいたの。一緒に食べる?」

母親はいつも通りに微笑みかける。雪奈は無言で頷いた。

3人で食卓についたものの、雪奈からは言葉が出ず、ただテーブルの上を見つめるのであった。

その沈黙を破り、俺が言い放った。

「俺たちは、父さんの分まで生きなくちゃいけないんだ」

「これから長い苦しい人生が待ってるかもしれない」

「それでも、父さんがあの世で笑えるように」

そこまで言った俺の目頭が熱くなる。

「父さん..」

母親も口に手を当て涙を流す。かろうじてその声を押し殺していた。

雪奈が顔を上げ母親と俺の顔を見る。

母は頷いた。俺も頷く。

「ん...お父さんが繋いでくれた命...大切に使う...」

「いっぱい笑って、いっぱい泣いて...天国のお父さんを笑わせてあげる」



街の一角にあるひとつのクリーニング店。


その日の朝、鳴き声と笑い声が響いていた。




父の葬儀を済ませた後、それでもしばらくの間は、家族3人悲しみに暮れていた。

雪奈は学校に復帰し、少しずつ笑顔を取り戻していく。

そんなある日のことだった。

「お店、再開するんだけど、大丈夫かな」

母親がそう言うと、雪奈は喜びを含んだ目で答えた。

「うん!私だって手伝うから。3人で頑張ろうよ!」

翌週、久しぶりに店のシャッターが上がった。

開店初日、母親はカウンターで笑顔を見せ、雪奈は掃除をしていた。

俺は店内を見回し、少しだけほっとしていた。

これから先、大変だろうけど、なんとかしていけると確信したのだった。

店の再開後、最初のうちは客足も伸び悩んでいたが、徐々に以前の姿を取り戻していった。

忙しい中、俺はアルバイトを掛け持ちしていた。

そんな俺を見て、雪奈も学業に励む。



ある日の夕食後、雪奈がつぶやいた。

「お父さんに会いたい...」

その言葉に、母親はふと寂しげな表情になった。

「そうね...」



「じゃあ」

そう俺が切り出すと、2人は不思議そうな目でこちらを見た。


「次の休み、お墓参りへ行こう。そろそろ一周忌だろ?」


そして、父の一周忌を前に、3人で墓参りに訪れた。

新しい墓石の前で、雪奈が水を注ぎ、母親が花を手向けた。

そして俺が合掌し、一同で頭を下げる。

その後、墓前でしばらく黙祷を続けた。

過ぎ去った日々や大切な思い出を振り返りながら。

「お父さん、私達大丈夫だから。これからも幸せでいるからね」

雪奈の祈りの言葉に、母親は嬉しそうに頷いた。

帰り道、3人は手をつないで歩いた。

これから先、決して忘れることのない大切な約束がそこにはあった。



後日談ではあるが、なぜ古文書の一部が箪笥にしまってあったのか。

父親も俺と同じことを考え、図書館で書物を漁り、あの古文書を発見していたのだ。

そして、一番大切な部分だけをこっそりちぎり取り、持ち帰った。

母親と相談し、雪奈が18の誕生日を迎える前に、儀式を執り行おうとしていたらしい。

父親は最初からそのつもりだったのだ。


おしまい。




あとがき


こんかぜー😊

今回の小説いかがでしたか?正直泣けるのは最後の方だけですね…。そして泣けるのもわたしだけかもしれない。

読み返すと、感情移入するのにはちょっと早い展開だったかなとも思います。もっと色々なエピソードを書けばよかったなんて思うけど、これを書いた時点でのわたしの実力。というか、昔のわたしを取り戻していない。

昔も物書きしていた時期がありました。そのころは、これよりずっと長い小説を書いていたと思います。これは短編より短い、ショートストーリーです。

それでも、精一杯の今わたしが持てる力で書き上げました。

もし、少しでも感動、涙してくれたら嬉しいです。


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