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スポーツの進化を支える、サステナブルな高機能素材(スポーツとDSM 2)

前回の記事では、DSMとプロ自転車競技チーム「Team DSM」とのコラボレーション、特に「個別化栄養」などライフサイエンス分野の話題をご紹介しました。

今回は機能材料分野のコラボについて。現代スポーツでは、ウェアやシューズなど用具の進化が成績に直結します。私たちDSMも、最先端技術を使ったサステナブルかつ高機能な素材で、Team DSMをサポートしています。

とにかく薄く軽く、運動機能を追及?それでOK?

激しい動きとスピードが求められる競技では、ウェアにも薄さと軽さ、さらに伸縮性が追及されます。長時間にわたる競技では通気性や速乾性も重要です。従来、自転車ロードレースのウェアにおいても、これら運動性能の向上が追及されてきました。

一方、今回私たちDSMがTeam DSMとのコラボレーションでこだわったのは、安全性、すなわちアクシデントの際にライダーを保護する機能

自転車ロードレースの醍醐味は、そのスピードと迫力です。レースをご覧になった方はお分かりになるかと思いますが、下り坂では時速80kmにもなるスピードで密集しながら、それも生身で走るのですから、転倒・落車によるケガも絶えません。

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Team DSM Twitterより

落車などのアクシデントの際にライダーを護り、ケガによるダメージを回避したい。もちろん、高い運動性能は維持したままで。そこでTeam DSMのユニフォームに採用されたのが、DSMの誇る「世界最強の繊維」Dyneema®(ダイニーマ)でした

「世界最強の繊維」ダイニーマ®

ダイニーマ®は、超高分子量ポリエチレン繊維で、耐衝撃性や耐引裂強度に優れています。強靭性だけでなく防水性にも優れ、また非常に軽い。鉄の15倍の強度を持ち、水に浮くほど軽いその特徴から、軍や警察の防弾ベスト、耐刃性手袋、医療用縫合糸、工業用・船舶用ロープ、クレーン作業用スリング、漁業・水産養殖用ネットなど幅広い分野で採用いただいています。

Team DSMのユニフォームには、そのダイニーマ®がふんだんに使われています。エアロダイナミクス(空力性能を向上させる表面処理)を施し、ロードレースで求められる様々な機能を向上する一方、ライダーの保護性能を飛躍的に向上させています。今シーズンはビブショーツやベースレイヤー、ジャージなどに使われています。

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8月19日に開催されたブエルタ・ア・エスパーニャ(毎年8-9月にスペインを舞台にして行われるプロ自転車ロードレース)第5戦では、ゴールまで残り12kmの地点で大落車が発生し、Team DSMのエース、ロマン・バルデ選手も巻き込まれてしまいました。

下はレース後のベルデ選手の様子です。ジャージ背面の状態からは落車のダメージが相当大きかったことがうかがわれますが、ダイニーマを使ったビブショーツにはほとんど損傷が見られません。この後、Team DSMのユニフォームの高い保護性能について、他チームのライダーやファンの間でも大きな話題となりました。

この落車によるケガの影響を心配する声もありましたが、ベルデ選手は翌第6ステージからレースに復帰、第14ステージでの優勝もあり、最終的には全21ステージを完走、2021ブエルタ総合20位という成績を残しました。(ちなみにTeam DSMとしては、2021ブエルタで、3つの金、1つの銀、4つの銅メダルを獲得し、好成績で今シーズンの幕を閉じました)

環境負荷が低くリサイクル可能な、防水透湿素材 

また、今年のツールド・フランスから採用されたレインジャケットには、DSMが供給するArnitel(アーニテル)VT が使われています。わずか数ミクロンの薄さで防水性と高い透湿性を発揮する、アウトドア用品などにも使用される高機能素材。

現在ほとんどの防水透湿素材は、製造時の環境負荷が高くリサイクルも困難なフッ素系樹脂を使用していますが、アーニテル VTはフッ素不使用でリサイクル可能という利点があります。

高機能とサステナビリティの両立に挑戦

ここまでご覧になった方は「でもこれ、合成繊維でしょ?サステナブルじゃないよね?DSMっぽくないんじゃない?」と思われたかもしれません。

DSMでは、炭素負荷低減を目的に、石油の代わりにバイオマスやリサイクル材を原料としてこれらの高機能材料を生産する技術を開発、2020年からバイオベースのダイニーマ、アーニテルの商業生産を開始しました。2030年までには弊社の全ての機能材料についてバイオ又はリサイクル由来の製品を供給する予定です。

また、ダイニーマについては、使用後の製品を回収し、新たなダイニーマとして再生するためのアライアンス「サーキュラリチーム」を立上げ、素材リサイクルの仕組みを構築する取り組みも行っています。

機能素材事業のサステナビリティに関する話題は、また別の機会にご紹介したいと思います。

相互受益型、新しい形のパートナーシップ

これまでご紹介したように、Team DSMへのサポートでは、DSMのもつ最先端のサイエンス、製品や素材をフル活用しています。栄養から用具までの幅広い領域、「inside-and-out」のサポートは、DSMならではのユニークな点であり、チームにとっても有意義であると思います。またDSMにとっては、世界で最も要求の厳しい顧客とも言えるトップアスリートから、製品やサービスに対する直接的な洞察とフィードバックを得られる大変貴重な機会でもあります。このパートナーシップを通じて、将来的にはより高機能かつサステナブルなソリューションを生み出していくことを目指しています。

さて、今回でTeam DSMとのコラボレーションのお話は一休み。次回からは、いよいよ間近に迫った国連食料システムサミット、12月の東京栄養サミット等に向けて、また栄養、食料システム、サステナビリティ等の話題をお送りできればとおもいます。


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