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父の背中

先週、実家の近くに住んでいる妹から連絡があった。「父親の持病が悪化して手術を受けるかもしれない。」との事だった。すぐ母親に連絡を取ったが、返信がない。私に心配をかけたくないのだろう。祖母が亡くなった時も事後報告だった。海外に住んでいるとこうやって家族を少しずつ失っていく

父親は現在82歳で、仕事を引退してからはずっと家にいる。これといった趣味もなく、友達もいないので 朝、庭の植木の手入れをするともうする事がなくなり、一日中家でテレビを見ている。

父はお酒を飲んで話をするのが好きだが、今はその相手がいない。以前はよく話しをしていた親戚の人々も今ではもうあまり父に話しかけない。古い話を何度も繰り返す父に辟易したようだった。
以前、父は家族の会話に入ろうとしていたが、最近は話に入れないと分かると、1人自分の部屋に上がっていってしまう。

50年以上も真面目に働いて、ようやく自分の時間が出来たと思ったら、毎日、する事も、楽しい事もないというのは寂しい。父親だってこんな老後を予想していなかっただろう。

前回実家に帰った時、窓越しに見えた父の小さな背中が「友達や家族を大切にしろ、 毎日を楽しめ。」と言っているように見えた。そんな事について考えた事はあまりなかったが、多分それは大切な事だろう。

コロナの影響でもう2年近くも日本に帰っていない。今年のクリスマスには実家に帰って父の話を聞こうと思った。父と話す最後のチャンスになるかもしれない。


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