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シンガポールのベンチャー、代替たんぱく質業界への投資拡大

シンガポールのベンチャーキャピタル企業、グッド・スタートアップ(Good Startup)は2023年、代替たんぱく質の領域で最大1,000万シンガポールドルを投じる。

新種の代替たんぱく質に注目する同社では2023年には、最大10社に対し50万~100万シンガポールドル規模で投資を行う予定だ。同社のマネージングパートナーであるゴータム・ゴドワニ(Gautam Godhwani)氏がDealStreetAsiaのインタビューに答えた。

「我々は、市場ニーズに合った素晴らしい製品を作る情熱的で意欲的な起業家を探している。そして社会にインパクトを与え、持続可能な食糧システムの構築を目指す起業家を求めている。」

代替たんぱく質は、動物以外から得られたタンパク質と定義される。植物や制御された条件下で育てられた培養細胞ベースの肉などが一例だ。

代替たんぱく質業界には、2020年、2021年と大量の資金が流入した。グッド・フード・インスティテュート・アジア・パシフィック(Good Food Institute APAC)のレポートによると、アジア太平洋地域における代替たんぱく質の新興企業への投資は、2021年に前年比で92%増加し、総額約3億1200万ドル(2020年の1億6500万ドルのほぼ2倍)となった。

しかし、2022年には資金の流入が鈍化し、業界は前年同期比で50%減となっているという。「こうした資金調達環境においては、起業家はさらなる資金獲得のために、より慎重で無駄のない方策を模索する。」とゴドワニ氏は言う。

グッド・スタートアップ社は2021年に設立されたが、2022年、初めて代替タンパク質ファンドとして約3400万ドルを調達した。これまでに24件の投資を実行しているが、投資先の約4割は主として米国企業だ。同社のポートフォリオには、米国の植物性食肉会社のインポッシブル・フーズ社(Impossible Foods)や卵の代替品メーカーのイート・ジャスト社(Eat Just)、イスラエルの培養乳メーカーであるリミルク社(Remilk)、シンガポールのバイオテクノロジー企業のタートルツリー・ラボ社(TurtleTree Labs)などが含まれる。

現在、代替タンパク質食品業界をリードしているのは米国だ。2021年はこの分野で世界の資金調達額の約3分の2が米国企業によるものだった。

ゴドワニ氏は「当社の資金調達活動は世界的なトレンドを追っている。ポートフォリオの約60%が米国発の企業だ」という。「しかし、我々が実際に注目しているのは、世界中で適用可能なソリューションを持つ技術を持つ企業だ。その点では、アジアのポテンシャルが非常に高いと感じている。」

ゴドワニ氏は、グッド・スタートアップ社のポートフォリオはますますグローバルに多様化していくと見通す。

代替肉の分野でも、米国はどこよりも成熟した市場だ。消費者の意識も高く、幅広い種類の代替たんぱく質製品を入手することができる。「そのため、大規模な生産設備を持つ企業が多く、消費者にも低価格で提供可能だ」と、ゴドワニ氏は語る。

一方、アジアはまだ代替たんぱく質の開発・普及においては初期段階にある。消費者の認知度は依然低いままだ。「消費者にとって魅力的な価格で製品を提供することが難しく、たとえ小さくても市場シェアの獲得には、より多くの努力が必要だ」とゴドワニ氏は言う。

とはいえ、アジアはすぐに追いつけるポテンシャルがある。「専門家の予測では、アジアは2025年には代替たんぱく質の最大市場の一つとなるといわれている。アジアは消費者の嗜好が多様であり、これは興味深いことだ」と彼は言う。

「また時を経れば、より専門化が進むだろう。例えば、イスラエルは養殖肉のハブになったし、今後、ある地域が代替シーフードのハブになるのを見る日が来るかもしれない。シンガポール市場は、規制環境において明らかに優位だ。」

シンガポールは2020年12月、イート・ジャスト社に対して、実験室で育てた肉の一般販売を承認した。培養肉の販売を承認した世界初の国なのだ。

ゴドワニ氏は、シンガポールが代替たんぱく質産業において地域のリーダー的ポジションを確立するのに、この判断は非常に大きかったと考える。「この産業の成長とともに、シンガポールでは人材を獲得し、そのポジションを維持し続けなければならない。そのための1つの方法が、多くの製造施設や研究開発センターを建設し、新興企業にインセンティブを与えることだ。」と彼は言う。

シンガポールには、グッド・スタートアップ社以外にもベター・バイト・ベンチャー社(Better Bite Ventures)ビッグ・アイデア・ベンチャーズ社(Big Idea Ventures)といった代替たんぱく質系のベンチャーキャピタルがある。2022年2月に1億シンガポールドルを調達したネクスト・ジェネレーション・フーズ社(Next Gen Foods)をはじめとして、この分野でのスタートアップがシンガポールでいくつか誕生している。

ゴドワニ氏は、代替たんぱく質業界は2023年も、流入資金が少なかろうがイノベーションは続くと確信する。グッド・スタートアップ社では、初回に調達した資金の大半を投資しており、今後数ヶ月で第2ラウンドの資金調達を開始する予定だという。

「次のファンドは、これら企業が必要とする資金量を考慮し、より大きな規模になる予定だ。その規模は、私たちがともに仕事をしたいと思うベンチャー企業の数と、それぞれの企業に対して展開したい平均的な投下資本額による。まさにこれからが私たちのスタートだ。」と語った。

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