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【連続小説チャレンジ】 不思議なノート#8

【家族】
夕方、月光も帰ってきて、ゆっくり、3人で食事をする。


良子:月光、きょう会ってきたわよ、星の子村の村長さんに。
月光:で?
一夫:月光、父さんの目を見ろ
月光:なんだよ。…
一夫:・・・・・・・・・
月光:なんだよ、変だよ、父さん
一夫:… 通じないか
月光:何のこと?
一夫:いやなんでもない。お前、神通力って知ってるか?
月光:なんとなく
一夫:うん、神通力ってのはな、何でも六つあって…
良子:月光、村長さんが、あなたに住み込みで、村長さんのアシスタントやってみないかって。母さんたちは、あなたの将来のことあなたが決めるのが一番と思ってるけど、先のためじゃなくても、色んな体験してみるのもいいと思うんだけど
月光:僕は、あそこが大好きだし、僕のやるべきことの一つだとも思ってる。将来のことは、まったく考えられないけど、あそこにいると優しくなれるんだ。アシスタントできるかどうかは、分からないけど、
一夫:住み込みってどう思うか?母さんたちから離れて暮らすことになるが
月光:うん、父さんたちが良ければ
一夫:そうか、どうする、母さん。
良子:ま、今決めなくても、ゆっくり考えてから…ね、あなた

 ベッドに横になってる一夫と良子

良子:月光、「僕のやるべきことの一つ」って言ってたわね。私のやるべきことって何かしら
一夫:若いときは、一杯あったような気がするな、俺にも。
良子:カズッチ、覚えてる?朝日が産れたときのこと。小さかったよね。壊れそうに小さくてさ~。初めてお乳飲ませたとき、私言ったんだ。私が「絶対、守ってあげるからね」って。
小さな手で、はじめて私の人差し指ギューって強く握ったときも、うれしかった。あなたも私も、毎日、朝日の笑い顔見たくて、あやしてたわよね、初めて笑ったのいつだったかしら…
カズッチ:そうだな、産まれて2週間後じゃなかったか?
ヨシ:そうだったっけ…
カズッチ:なんでも赤ん坊って、産まれてすぐは、まだ色んな機能が未発達のままで、目に映る映像も逆さまに見えてるらしいよ。
ヨシ:なるほどね、じゃあ、私たちが笑いかけてる顔も逆さだと、怒ってる顔に見えていたんだ。あの子が、笑ってくれたとき、あの瞬間、何かが通じ合ったって感じしたな~。
カズッチ:そうだな、魂が宿る瞬間だったかもな。
ヨシ:あの頃って、あの子笑わかせるのに、ほんと、一生懸命だったよねカズッチ:あいつ本当にラオス行く気なのか? 結婚も決めるの早すぎやしないか?
ヨシ:ま、行っちゃうんだろうな、行動が先なところ、私に似たみたいね
カズッチ:子供って、俺たちが思ってたより、自分でちゃんと生きて行くもんなんだな
ヨシ:親が頼りない分しっかりするのかもよ。月光にも朝日にも、私のいいところも悪いところも全部さらけ出してきたから
カズッチ:聖徳太子がいい事と言ってたな、「われ必ず聖なるにあらず。彼必ず愚かなるにあらず。共にこれ凡夫のみ」
ヨシ:なにそれ、薀蓄(うんちく)?
カズッチ:つまり、自分は聖人でもないし、他人は愚か者ではない。供に欠点のの多い凡人に過ぎないってことよ
ヨシ:そっか、親といってもただの欠点だらけの人間だもんね。ま、それが、あの子達に判っただけでもいいか
カズッチ:ヨシ、俺たち、結構、いい家族かもな
ヨシ:うん、そうかもね

一夫が、良子の傍による、優しく抱いてキスをする。二人は熱く抱擁し合う

カズッチ:いいか?ヨシ
ヨシ:うん、

互いに興奮が、頂点になり始めたとき

ヨシ:ごめん、やっぱり駄目だ…
カズッチ:どうして、どうしてだよ、俺は、お前を抱きたい
ヨシ:・・・・・
カズッチ:分かった、気にするな、寝よう

一夫は、優しく手をとり、眠りに入いる。ヨシは、夫の横顔を見て、『ごめん』と繰り返した。一夫が、寝入ったのを確かめて、ヨシはそっとベッドを抜け出し、独り居間に戻った。

【眠れない夜】
ヨシ居間のソファに腰を下ろし、ノートを開く


X月0日
カズッチに、抱かれたかった。でも、期待に応えなきゃと思った瞬間、冷てしまう。悲しい
自分の感情を殺し過ぎたあの2年間のことは、もうとっくに回復したと思っているけど、こうやって、時々、それも肝心なときに、出てしまう。これは、鬱の後遺症なのだろうか… 参ったなぁ

キッチンで、ココアを入れて戻ってくる良子。ノートに何が出てきたか見てみる。『あなたの影を消しても、あなたは消えない。』の文字がノートに浮かんでいた

良子:どういうこと?私の影?

ふと思いついて、携帯を開く良子

良子:スッピン山にメールでも出すか、日曜日の旅行の「口裏合わせ」お願いしなきゃ。   

メールを打つ

『もう寝てると思うけど、明日、お願い事、聞いてもらえるかな。うさぎ茶屋に10時くらい。どう?』    
      送信
・・・・・・・・・・・・・・・
   ティッティッティー
      着信
山からの返信『起きてたよ~~なんだろう、お願い事って、いま話してよ~、気になって寝れない。』

ヨシ:なんだ起きてたか。ふむ、電話で話すか

山に電話を掛ける

ヨッシー:『もしもし、山ちゃん。ごめんね、遅くに。今度の土日にね、ちょっと一泊旅行に行くことになってさ、家族には山ちゃんと行くって言ってあるんだけど、何とか、口裏合わせてくれないかな』
:「誰と一泊するのか教えてくれたら、考えてもいい」
ヨッシー:『それは、極秘。何とかお願い』
:「浮気するんだ」
ヨッシー:『何言ってんのよ、そんなことやれるわけないじゃん、私が』
:「でも、それに近いんでしょ、家族にナイショってことは、言っちゃえ、言っちゃえ、口硬いよ私」
ヨッシー:『仕方ない。例のさ、古本の回収で、クーポン券が貯まってさ、それで、行くわけよ。一泊』
:「ほー、何処行くのよ」
ヨッシー:『それが、お楽しみらしい』
:「怪しい、怪し過ぎ、それ、イケメン付きでしょ」
ヨッシー:『引率、引率にね、付くわけよ。きっと おばさん連中で旗の後ろ付いて行くあれよ、きっと』
:「チケットもう一枚何とかなんない?」
ヨッシー:『なんない』
:「あっさり返事するし」
ヨッシー:『わかった、聞くだけ聞いてみる…』

電話を終える

ヨッシー:人選、間違えたな

ベッドに戻る良子

【旅行】
次の朝、カズッチは、いつもと変わりなかった。少しほっとはするが、すっきりはしない。息子を見送った後、旅行の打ち合わせと言って家を出る。山にも電話して会う約束をした


  …… うさぎ茶屋にて ……

ヨッシー:きのうはゴメン、夜遅くに
スッピン山;で、私のチケット
ヨッシー:うん、断ろうかと思って、旅行
スッピン山:なんで?、じゃあヨッシーの分、私に回してもらうかな
ヨッシー:えっ?なんか勿体無いな、やっぱり、行こうかな
スッピン山:どっちでもいいよ、私が行ければ
ヨッシー:山ちゃんってさ、自己中
スッピン山:そう、だからずっと独り
ヨッシー:(ため息)
スッピン山:ヨッシーさ、自分を試そうってしなくなって、詰まんないかも、やっぱ、子ども持つと守りに入るんだね
ヨッシー:そりゃそうでしょ、家族があるんだから、
スッピン山:それって、当て付け?
ヨッシー:そんな小細工しない
スッピン山:家族大切なの分かるけどさ、ヨッシーがやりたいことやるのが家族も喜ぶんじゃない?家族のために我慢してますって顔、重すぎ
ヨッシー:重いか…
スッピン山:一泊旅行に行ったくらいで、がたつく家族なら本物じゃないね。あ、浮気しに行くならちょっと違うか …
ヨッシー:じゃないってば、団体旅行に決まってんじゃん
スッピン山:行くの?行かないの? 行きたい行きたくない行きたい行きたくない行きたい行きたくない
ヨッシー:行く!!!

早速、サティ君にメールする良子

    うさぎ茶屋 できれば今
        送信
・・・・・・・・・・・・・・・・
        着信
       今行きます 

ヨッシー:来るって
スッピン山:私トイレ行って、化粧直してくる
ヨッシー:山ちゃん化粧してないし
スッピン山:一度言ってみたかったセリフ

しばらくして、サティ君が、息を切らせて入ってくる

イケメン・サティ:どうされましたか? 心配して走ってきました
ヨッシー:すいません、そんなに急がせてしまって、急用でもなくてすいません
サティ:(万遍に笑顔を浮かべ)よかった。
ヨッシー:あのう、旅行のことなんですが、どうしても私の付き添いとして一人連れて行きたい人がいるんですが、無理でしょうか、無理ですよねぇ、そんなの無理、でしょ?
スッピン山:その頼み方、嘘っぽいな

トイレから出てきた山が、良子の背中越しに言う

ヨッシー:はっ、スッピン山、あっ、く、口紅してるし
スッピン山:ヨッシーがね、どうしても一人じゃ行けないから、私に付いて来て欲しいって泣いて頼むものだから、私も、友達として、断れなくて、…どなたかキャンセルなさった方のチケットなんかないものか、どうでしょうかね?(色っぽくく)
サティ:はぁ、分かりました。ちょっと調べてみます。

その様子を頬杖ついて見つめる口紅をした山、それを横目で見ているヨッシー

サティ:他の方のクーポンを使うのはやはり難しいので、良子さんのクーポン券をファミリーチケットに切り替えて、家族という形でご参加できますが、それで如何でしょう。
スッピン山:なんだそんな簡単なやり方があるんじゃない、よかった。じゃあ決まり! で、宿泊は、やっぱり、温泉ですよね
サティ:そうします。これが旅行の日程表です。待ち合わせ場所、時間など全部書いてあります。ただ、目的地での詳しいことは、今はお知らせできないことになっています。
ヨッシー:「お楽しみ」ですよね
サティ:はい。そうなんです。それで、本日、また、古本回収に伺いますが、いらっしゃいますか?
ヨッシー:ええ
サティ:では、その時、山さんの分のチケットお持ちします。では、後ほど、良子さん
スッピン山:私は、沙耶ですから、山口沙耶、沙耶って呼んでください
サティ:は、はい、では、沙耶さん。当日お待ちしています。

そして、当日が来た

スッピン山:ヨッシー、用意できてる?
一夫:山ちゃん、思ったより元気そうでよかった。この旅行でスカッとしてくるといいよ。でも、旨くくじ引き当たって、ラッキーだったな
:はあ?…?
良子:お待たせー、じゃあ行って来まーす!!!
:くじ引きって、何それ…

スッピン山の手を、無理やり引っ張って、出て行く良子

待ち合わせ場所の駅で待ってる二人、そこにサティが、車を運転してやってくる

サティ:どうぞ、お乗りになってください。

スッピン山、助手席に座る。良子は仕方なく後部座席に座る

サティ:現地までは、2時間ほど掛かりますが、途中休憩されたかったら、遠慮なくおっしゃってください。
良子:あのう、他にどなたか乗って来られる方は?
サティ:いいえ
:ホテルで、きっと一緒になるんでしょ
サティ:お楽しみです

2時間の移動中は、山ちゃんオンパレード、可成り盛り上がっていた。後部座席ということもあってか、私は、うとうとしてしまった。そして夢を見ていた

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不思議なノート#9
https://note.com/kaya_yan/n/n4fa7557747bb

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