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【連続小説チャレンジ】 不思議なノート#9

…    良子の夢の中 …

大人たちと子供たちが一緒になって影踏みして遊んでいる

子供たち:ヨッちゃんの影踏んだから、ヨッちゃんが鬼だよ

誰かの声がして、私が、みんなの影を踏もうと走り回っている

良子:ほら、踏んだよ、月光
月光:母さんそれ僕の古い影だ。だから、母さんの鬼だよ
良子:ほら、影踏んだ。朝日
朝日:母さん残念、私の影もう消えて無くなったところ、だから、母さんが鬼
良子:誰だこの影、よいしょ よいしょ

何度も踏み直す良子

一つだった影が、ゆっくり、二つになっていく

影の主を見上げると、二人の人が重なっていた。それは、一夫と一夫の母だった

一夫:良子、それは僕の影だよ、母と重なって見ているけど。ほら、本当の僕は、ここなんだ。変らず君を愛してる僕はこっちだよ。
一夫の母:良子さん、早く私の影を踏み潰してしまいなさい。そんな影いつできたのかしら、醜いわ
良子:お母さん私には、この影消せません。これはお母さん、あなたの影だから、あなたが、お日様の真下に行かない限りは消えません、ごめんなさい。
一夫の母:お日様の真下。私もいつかは行かなくてはと思っています
………………………………………………………

:ヨッシー!!着いたよ!!

スッピン山の声に目が覚める良子。良子と山が、旅館だと思っていたところは、お寺だった

スッピン山:嘘、サティちゃんここに泊まるの私たち??嘘、嘘でしょ
サティ:驚かないでください。お泊りは、あちらです

サティがお寺の向かい側を指差して言う

良子と山:ワーオ、御殿だ、お城だ

彼女たちが見たものは、竜宮城とでもいえるほどの豪華な建物だった

サティ:先ずは、お部屋に荷物を置かれてから、ゆっくりなさってください。温泉もございます。この辺りの森林には、中々よい散歩道がございます。僕がご案内します。

山:ヨッシー、ありがとう、誘ってくれてありがとう…(涙する山)
良子:誘ってって、強制的だったけどね。あれ?もういないし

さっさと先に進む山

部屋の中もこれまた豪華、すべてが、金で統一されていた

スッピン山:ヨッシー、あたし、ひと風呂浴びてくる。ヨッシーは?
良子:うん、ちょっと散歩してから行くわ
:オッケー!

良子、外を独りで散歩する。お寺とこの建物だけしか見当たらない、遠くに吊り橋の架かっている川が見える。独りで散歩するには、ちょっと怖い気がしてきた。

:「どうされましたか?僕が一緒についていきましょう」

その声の方に身体を向き直すと、サティが木の陰から姿を見せた。

良子:あら、そこに居たんですか?
サティ:はい、僕はいつでもお近くに居ますから
良子:サティ君は、本当にいい子だわ…、あ、ごめんなさい男の人に向かって、失礼よね

二人は、肩を並べて散歩し始めた

サティ:良子さんは、僕の友達を助けてくれたの覚えていますか?
良子:誰をですか?

サティが、良子の後ろに立ち、両手で良子の目を覆った

良子:え?
サティ:だーれだ
良子:ふざけてます?もしかして

目を覆っていた手が消えて、良子は後ろを振り返った。

良子:あれ? サティ君? かくれんぼ? 何処に居るんですか?

そのとき、木の陰から、今度は、リスが出てきた。そして、うさぎや、イタチも顔を出しては引っ込めた。

サティ:僕の友達です

いつの間にか、良子の傍に立ってるサティ

良子:驚かさないでくださいよ
サティ:楽しいと思ったのに
良子:ちょっとね
サティ:(無邪気に微笑む)こっちに来て下さい。

小さな滝と小さな滝つぼが見えた

良子:あれ?また消えた。サティ君?どこですか?かくれんぼ?
サティ:良子さんここです!!

滝つぼの中で泳いでるサティ

良子:若いなー、冷たくないんですか?
サティ:良子さんも入ってください
良子:遠慮して置きます。水着ないし

そのとき、良子は、サティが身に何もつけていないことに気付いて驚く

良子:刺激強すぎる… やばいな。 サティ君、ホテルに戻ります!
サティ:良子さん、ここからが、本当の旅ですから、

そう言い終ると、サティは、ひょいと水の中に潜ってしまった

良子:サティ君?

なかなか姿を見せないサティが心配になり、滝つぼに近づこうとしたとき、足を滑らせ良子は、滝つぼに滑り落ちた

    ドッボーン

【サティとの旅】
滝つぼの中、らせん状の渦に巻き込まれる良子。いつの間にか、サティがしっかり、良子の身体を支えていた。良子は、呼吸ができないことにパニックになった。すると、サティが、大きな泡を掴み自分の口に含めると、口移しに良子の身体に空気を注ぎ入れた。何度か、口移しをして貰ううちに、呼吸が楽になり、良子は、サティの顔をしっかり見ることが出来た。そして、周りを包む泡たちにも… 『私は、何処に行っているのだろう』心の中で、そう呟きながら、渦の中に身を任せる良子。しばらくすると良子は、自分が水の中ではなく空中に浮かんでいることに気付いた。


サティ:良子さん、楽しんでください。

そうサティが言うと、優しく口付けをくれた。それは空気を口移すそれとは、まったく違ったものだった。私は、気を失っているのか、それとも死んでしまったのか、そんなことはどうでもよかった。身体も心も私のすべてが、暖かいものでいっぱいになっていたから。

『さあ、僕の背中に乗って!』サティが、そう良子に言うや否や、良子の腕をぐっと引き上げたかと思うと、自分の背中に乗せた。良子は、驚いた、サティの下半身が馬のような姿に変化していたからだ

サティ:良子さん、いや、あなたの名は、チッタ、これからはそう呼びます。チッタ、しっかり掴まっていて下さい。これからフォントスピードで、走ります
良子:は、はい

私は、サティの上半身にしっかりしがみついた。私の身体にたくさんの穴が開いていて、空気がそこをすごいスピードで、通り抜けていく感覚だ。そう私は、風そのものになった。
快感だ、私は大声で笑っていた。笑いが止まらなかった。

どのくらい時間が経ったのだろう。もう時間の感覚がなくなっていた。


サティ:あの光の玉で少し休みましょう
チッタ:… 光の玉

チッタの前に、サーカスで見たことのある玉乗りサイズの球体が見えた。サティが、後ろ足をその玉に着地した途端、玉は、光り輝き始めた。

サティ:大丈夫ですか?

サティが、チッタの腕を自分の身体から外すと、そっと優しく下に下ろした。

チッタ:ここは?
サティ:いつかは誰もが通る場所です。僕はよく遊びに来るところですけど。

私は辺りの様子に目を向けてみた。たくさんの光る玉が見えた。宇宙なのだろうか

サティ:そろそろ来る頃です。
チッタ:え?

私たちが来た方向をじっと見つめるサティ。彼の瞳に光が当たリ始め、その輝きがどんどん強くなっていく。彼の視線の先に私も目をやると、そこには、無数の輝く泡たちが、こちらに向かってやってきていた。

サティ:あれは、さっき、僕たちを包んでいた泡たちです。チッタ、僕は、ここまでしか、ご一緒できません、この先は、あの泡たちが案内してくれます。

そう言い終わると、彼は私の身体をポンと押し、光る玉から突き落とした。

チッタ:ヒィエッー
サティ:楽しんで!

宙に浮いた私の身体をたくさんの光る泡がさらっていった。チッタは、泡の一粒となって輝きながら、どこかに向かっていた。それもすごい速さで

チッタ:何処に行くの?、ねえ、みんな何処に行くの?
泡たち:トッテチッテタ、トッテチッテタ、トッテチッテタ、チッタチッタチッタチッタ・・・チッタの中さチッタの中さ・・・トッテチッテタトッテチッテタ・・

そう泡たちは歌い出した。そして、泡たちは、色んな形を創り出し、まるで、万華鏡を見てるかのようだ

チッタ:ねえ、私も入れて!

チッタは、そう言ってみんなの中に入った。チッタが仲間になると巨大な蝶の形に変化して、羽ばたいた。そして、また万華鏡の遊びが始まった。万華鏡の遊びは楽しかった。そして、私たちは、長蛇の虹色の帯になり、連なりながら、方向転換して、来た方向へと戻リはじめた。

チッタ:何処行くの?
泡たち:おうち、お家に帰るんだ
チッタ:お家?

虹色の帯は、青い球体に向かって行った。青い球体に、どんどん接近して行くと「ただいまーただいまー」と、泡たちの声があちこちから聞こえてきた。チッタも、つい『ただいまー』と、言ってしまった。

 

【帰宅】
:『もう大丈夫です。呼吸も正常ですし』

何処からか、誰かの声が聞こえた。目を開けてみると、知らない人が、傍にいた

:気がつかれましたね、気分は如何ですか?
良子:どなたですか?
:ここのホテルの者です。お客様は滝で溺れかかっておられたのですよ。この方の人工呼吸の応急処置で、命拾いなさいました。
サティ:よかったです。戻られて。
良子:サティ君、私、夢見てたんですか? 
サティ:どんな夢を?
良子:いい夢、楽しかった、いっぱい遊んで …
サティ:それはよかった
ホテルの者:お連れ様も、もう大丈夫だそうです。

横を見ると、となりにもう一つ、ベッドがあり、そこになんと、スッピン山が寝ていた。

良子:スッピン山…?
:あ、ヨッシー、なんで?私たちここに?
サティ:山口さん、いや 沙耶さんは、何でも、サウナに長く入りすぎて失神されてたそうです。
山と良子:そうなんですかぁ
:で、ヨッシーは?どうしてここに?
良子:溺れた、滝に落ちて
サティ:僕が、付いていながら、申し訳ありませんでした、お二人とも。
:もう一泊 おまけ してもらえないかな
サティ:(にっこり笑って)無理です

翌日、私たちは、予定通り帰ることになった。なんだか期待はずれのような一泊二日の旅行、帰りの車の中で、山ちゃんは、お土産に買ったはずの、「山の香り」という山菜で作られたクッキーを一箱たいらげて、サティ君に新しい旅行のアイデアを無理やり聞かせていた。私の頭の中は、溺れかけたときに見ていた夢を思い返し、そのあまりにもリアルな体験に、どうしてあんな夢見たのか自分なりに理由を探していた。山ちゃんを車から先に下ろして、サティ君と私は、二人きりになっていた。

サティ:良子さん、チッタって、どんな意味かご存知ですか?
助手席に移った良子:チッタ? いいえ、あ!それ、夢の中で私の新しい名前だって
サティ:そうですか、そんな夢を… 実は、チッタは、「心」という意味なんです。お渡しした心の断食ノートの説明のところにも載っていますが、僕は、このチッタっていう響きが凄く好きなんです。ちょっと元気になるような軽やかな音だと思いませんか?
良子:そうですね、そう言えば
サティ:(可愛く歌い出す)ソソラソラソラうさぎのダンス、タラッタラッタラッタラッタラッタラッタラー、足でけりけりぴょんこぴょんこはねる、耳に鉢巻き、ラッタラッタラッタラー なんだかこんな感じなんです。心が…
良子:そうかぁ、ソ ソラソラ ソラ ソラ うさぎのダンス-、タラッタ ラッタ ラッタ ラッタ ラッタ…

二人は、身体を弾ませながら歌った。無性に、ただ、楽しかった

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不思議なノート#10
https://note.com/kaya_yan/n/nb90acc663c7a

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