見出し画像

【連続小説チャレンジ】 不思議なノート#11 最終話

【サティロスとの別れ】
一夫と良子は、まだベッドの中

ヨシ:カズッチ、長いことゴメンね。大きな問題にし過ぎてた。
カズッチ:そうか、気付いたか
ヨシ:カズッチのこと、本当に愛してるって、わかったから、セックスに拘ることないって、わかった。ありがと
カズッチ:そうか、でも、昨日の晩みたいなこと必要だろ? 時々、頼みます、良子殿。お前は、今でも可愛いヨシのままだ。

優しく良子を抱く一夫

月光の声:父さん、母さん!! 僕もう行くから、行ってきまーす
一夫:現実にフィードバックしますか、俺ももう行かなきゃ。再就職先の面接があったんだ。良子:え?そんなの聞いてない
一夫:言いそびれた。詳しいことは帰ってから…

支度を素早く済ませて、出て行く一夫

良子:あれ、サティ君から、メール来てたんだ。

   うさぎ茶屋に、明日10時
   会いたいです。とても

良子:10時、よし、間に合う

  遅くなったけど、OK
  ・・・・返信・・・・・

うさぎ茶屋に良子が、走って中に入ると、サティロスは、いつものテーブルに爽やかな笑顔を一段と輝かせて座っていた。

サティ:良子さん、今日は、突然すいません。どうしても、お会いしたくて…
良子:私も、お会いしたかったの。なんだか、サティ君に出会って、自分が自分らしくいられるようになった気がしてね、今日は、特にお礼を言いたい日でしたから、丁度よかった。
サティ:良子さんを、ある所へお連れしたいんですが、今日、少しお時間を僕に貰えませんか?
良子:ええ、もちろん

サティは、良子の隣に座ると、両手で優しく良子に目隠しをした。そして 耳元で 囁いた。

サティ:「篭目、篭目、籠の中の鳥は、いついつ出やる~、夜明けの晩に鶴と亀が滑った、後ろの正面だーあれ~」

サティが、良子の顔から手を外す

良子:サティ君、可愛いんだか…ら、え? 何処よ、ここ

良子は、森の中に立っていた

「あそぼ、チッタ。」そう、木陰から話し掛けてきたのは、サティロスだった。だが、その姿は、下半身が、馬のような4本足の動物になっていた。

良子:あなた、夢に出てきてた、あの光の玉まで連れて行ってくれた…
サティロス:そうです、僕です。チッタ、思い出してください。森の中で、あなたが、僕たちの仲間を助けてくれたこと
チッタ:え?
サティロス:長い間、心の風邪で、言葉を失っていたとき、私たちと話していたあの時を思い出してください。
チッタ:あぁあー、

良子は、そのときの記憶が自分を襲ってきたので、一瞬叫んでしまった。良子が、以前、一夫の実家に世話になっていたとき、毎日浴びせられる不平と嫌味と悪態に、耐え切れず、鬱状態に陥ったことがあった。口を開けば、それを言いがかりに自分が責められたため、次第に、すべてが自分のせいだと思うようになり、話すことにも怯え、どもり始めた。そして、仕舞には、言葉が出なくなってしまった。月光を、良子の実家に預け、朝日を、一夫の実家で見てもらい、良子は、しばらく療養所で過ごしていた、あの時を思い出したのだ。

サティロス:あなたにお礼を言いたいものたちが、ここに居ます。

彼の後ろから現われたのは、牡鹿と、リスたち、そして、狐たちだった。

チッタ:あのときの鹿…

夫の実家の周りに仕掛けられた罠を自然の動物たちのために、一つ一つ壊していったことがあった。自分の可愛がっていた猫のフラココが、罠に嵌って、死んでしまったからだった。

チッタ:そういえば、あの日から、少しずつ言葉を失っていったんだったわ。
サティロス:僕たちとこうやって、テレパシーを交信し合えるためには、言葉を亡くすのが近道だったんです。
チッタ:え?わざと、そういうことをあなたが計画したみたいな言い方するのね。
サティロス:いいえ、僕じゃなくて、チッタ、あなたが望んでたことだったのです。その力を息子さんに、月光君にあなたは、与えたかったんです。僕たちの心を見るように月光君を見ていたでしょう?
チッタ:月光のあの力は、私があげたってこと?
サティロス:あなたの中の多くの遺伝子がそうしたがっていただけです。あなたは、素直に行動したのです。もういいでしょ、謎解きは、さあ、遊びましょう。だって僕、花いちもんめ、チッタとやりに来たんだから。
チッタ:花いちもんめ?
サティロスと動物たち:どの子が欲しい~、この子が欲しい、輪になって決めよ~ジャンケンポン
サティロス:良子さんが欲しい。貰うらった! チッタ、これからは、ただのチッタだ。良子さんは、僕が貰っていく。だから、ゲームは終わりです。必死に何かを求め、何かになろうとしなくても、もういいよ。永遠に本当の自分でいられるチッタになったから、後は、猫が教えてくれるますよ、じゃあ、さよならチッタ、チッタトッテチッテタ
チッタ:そんなあっさり、行かないでよ。サティ君、もうちょっと遊ぼうよ!!!折角、イケメンに出会ったっていうのに、もう ちょっとドキドキ… でもないな。何だろ、この充実感。


「だーれだ!」の声と同時に、突然、後ろから目隠しされるチッタ

チッタ:サティ君… じゃないな、だれ?
:「わかんないかな…」

目隠しされたまま、キスされる良子

良子:…カズッチ
一夫:当たり!独り? 久し振りに、うさぎ茶屋に入ったら、ヨシが、ボーっとして座ってたから、驚いたよ。それも、なんか今日は、可愛いって感じだったけどな。
良子:そう?そうっか、ありがとう。で、早かったね。面接
一夫:おお、昔の知り合いだしな、あの劇団。結構でかくなっててさ。
良子:劇団に入るの? 役者…とか じゃないし、また、裏方? 怪我して懲り懲りだって…
一夫 : 脚本、書き溜めてたの持って行った。
良子:書いてたんだ、カズッチ
一夫:いつか、こんな日が来るかもな、なんて、ちょっと夢見てた。
良子:… 来たね
一夫:ああ
良子:舞台美術募集してない? そこの劇団
一夫:年齢制限あるかもよ
良子:なに、それ、ちょっと、やけ食いしちゃお。きつね狸ダブル掛けそば、カズッチ頼んできて!

うさぎ茶屋で、二人は、そのあと何時間も過ごした。デートをしていたときの二人に戻ったかのように… ちょっと違っていたのは、「愛してる?」と聞かなくてもいい、しっかりした安心感だけだった。
                                                                                   おわり

   あとがき
不思議なノート#1〜11まで、読んで頂きありがとうございました。この作品は2006年に海外で生活を始め新しい環境に馴染めず精神的に不安定な状態になり、その時に起きた不思議な事を小説に書き溜めた作品の一つです。お蔭様で家族の助けもあり4年程で落ち着きました。天真爛漫に生きていた私にはその経験が、今となっては宝です。物の見方をファンタジーに置き換える、たったそれだけで、全てが上手く行く、怖いものもなくなる、そう信じています。人は想像という武器を持ってこの世に遊びに来たのかもしれません。このお話を通して皆様が少しでも心豊かになって頂ける事を切に願っております。感謝


この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,537件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?